いわゆる「地頭の良さ」のコンセプチュアルスキル
転職の際にアピールできるビジネススキルとはなんでしょうか?
たとえばワードやパワーポイントを使って資料作成ができたり、プログラミングができるなどといった実務スキルや、簿記などの資格が「スキル」としてパッと思いつきそうですが、実はスキルとはそのようなものだけではありません。
近年、企業の人材採用では多様性が重視されている傾向にあり、特定の業界・職種だけで通用するスキルだけが求められているわけではありません。幅広い人材活用のために、論理的思考力やホスピタリティといったものもまた重視されています。そのひとつが「コンセプチュアルスキル」というものです。
ビジネススキルについて、ハーバード大学の経営学者ロバート・カッツが「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つに分類しました。これらは特に管理職に求められる能力とされ、「コンセプチュアルスキル」は経営の舵取りなどのリーダー的ポジションの人材には特に必要とされるとカッツは言及しました。
出典元『日本の人事部』マネジメント・管理職に求められるスキル
コンセプチュアルスキルは先天的な影響も大きく、育成が難しいという特徴があります。だからこそ採用面接ではアピールポイントにもなり、特に事業成長を目指す会社から高い評価を受ける傾向にあります。
コンセプチュアルスキルとはどんな能力?
コンセプチュアルスキルは、ひとことでいえば「本質を見抜く能力」です。コンセプチュアルスキルは以下にあげる能力により構成されています。
- ロジカルシンキング(論理的思考)
物事を理論的に整理したり説明したりする能力 - ラテラルシンキング(水平思考)
既成概念にとらわれることなく、自由に発想できる能力 - クリティカルシンキング(批判的思考)
物事を分析的に捉え、思考する能力 - 多面的視野
課題に対して複数のアプローチを行える能力 - 柔軟性
トラブルに対しても臨機応変に対応できる能力 - 受容性
自分とは異なる価値観を受け入れられる能力 - 知的好奇心
未知のものに対して興味を示し、自ら取り入れることができる能力 - 探究心
物事に対して深い興味を示し、問題の深部まで潜り込める能力 - 応用力
ひとつの知識・技術を他の問題にも適用できる能力 - 洞察力
物事の本質を正しく見極める能力 - 直感力
物事を感覚的に捉え、瞬時に反応する能力 - チャレンジ精神
困難な課題や未経験分野においても、果敢に挑戦し、行動を起こせる能力 - 俯瞰力
物事の全体像を正確に把握する能力 - 先見性
まだわからないことに対して、早い段階から結果を予測できる能力
コンセプチュアルスキルを向上させる方法とは?
コンセプチュアルスキルを向上させる方法には以下の2つがあります。
- 研修を受ける
- 日常的に意識する
「研修を受ける」という方法についてですが、勤め先の企業が外部講師を呼んで行ったり、あるいは研修会社が行っているセミナーに参加するなどしてこうした研修を受けることができます。
特定のキーワードやトピックに対して発想を出し論理的につなげ、それを他者と議論する「マインドマップトレーニング」や「プレゼンブレインストーミング」などがあります。そもそもコンセプチュアルスキルは短期的に伸ばせるものではないということや、研修を受けるにはお金と時間が必要でハードルが高いなどの問題があります。
重要になるのが後者の「日常的に意識する」ということです。
物事を論理的に考えたり、多角的に検討することが自然にできるようになるためには、習慣をつけなければなりません。まずは日常で起こる物事に対して「なぜだろう?」と疑問を持つことが大切です。大切になるのが以下の3つの思考です。
- 概念化
起こっている現象や事象を絞り込んだ1点でなく、それを取り巻くすべてのものを含めて全体的に見ること - 構造化
ものごとを成り立たせている要素を見出し、分解・組み立てを行うこと - 体系化
構造化されたひとつひとつの要素に関連性を見出し、広がりを持たせること
日常で起こる疑問に対し、この3つの思考を行う癖をつけてみましょう。
コンセプチュアルスキルについての注意点
コンセプチュアルスキルは先天的な影響が大きいスキルで、短期的に伸ばすことが難しいという特徴があります。
時間をかけて伸びてくるスキルだからこそ、研修などに頼る考えはまずは置いておいて、日常的な意識を持ち続けることで少しずつ伸ばしていく忍耐が大切です。「継続は力なり」です。
「地頭はどうにもならない」と諦める必要はありません!
コンセプチュアルスキルをつけるのは「ヒューマンスキル」や「テクニカルスキル」と比べると、時間もかかる難しいスキルではあります。しかしコンセプチュアルスキルを持つ人材は、ブレイクスルーとなる発想を生み出し事業を成長させることができる可能性を秘めています。目には見えない能力ですが、重宝している企業というのはたくさんあります。
転職を考えている、あるいは将来事業を任されたいなどを思い描いているのであれば、今からでもこの記事で紹介したような日常的な意識を持ってみてはいかがでしょうか?
まずは自分の強みや弱みを理解するところからはじめ「企業から求められる人材」を目指しましょう。