キャリアドリフトとは?変化の激しい時代に自分の将来を考えるために

今までの主流は「キャリアデザイン」

自身の職業人生やキャリアについて、自らが主体となって構想し、実現していくことを「キャリアデザイン」といいます。

「キャリア」とは単なる職歴ではなく「今後の生き方や働き方」という意味合いが強く、「デザイン」は「自らの手で主体的に構想・設計すること」を意味します。

自分の経験やスキル、性格、ライフスタイルなどを考慮し、実際の労働市場の状況なども踏まえて、仕事を通じて実現したい将来像やそれに近づくプロセスを明確にしていくのがキャリアデザインです。

キャリアデザインは、1年後、3年後、10年後という形で期限を明確にする場合もあります。自分自身の将来のライフコース(結婚、妊娠・出産、介護など)を想像しながら設定すると、いつまでにどのような働き方をするのか、どのようなキャリアを達成したらよいか、ライフワークバランスを考えるきっかけにもなります。

変化の激しい今だから活きる「キャリアドリフト」

終身雇用や年功序列などの制度が基盤となってきた日本では、企業はもちろん、教育の場でも「キャリアは決めておく」ということが重視されてきました。入社時の研修で「1年後の自分」「3年後の自分」「10年後の自分」といった具合に、短期・中期・長期でのキャリアプランを作るといったプログラムが実施されることはよく聞きます。日本の組織では、自分がこれから歩む道筋を明確に設定しておき、それにそって進んでいくことが正攻法と考える傾向があるようです。

IT化が進んだ近年、さまざまな仕事が機械や人工知能などに置き換わるなど、社会が目まぐるしい速さで変化しています。市場の変化も非常に激しいため、「将来のビジョンが見えない」「市場の流れが読めない」などの理由から、自身のキャリアプランを作ることができず、悩みを抱える人もいます。変化の激しい現代では、自分のキャリアプランを必死に固めて社会に出ても、環境の変化であっさりと崩れてしまう可能性があります。

そういった時代だからこそ、求められるのは「変化に柔軟に対応すること」です。変化に柔軟に対応するための考え方として「キャリアドリフト」という考え方があります。

今回は、将来が読めない現代に必要な考え方、「キャリアドリフト」について説明します。

キャリアドリフトとは

キャリアドリフトとは、自分のキャリアについて事前に事細かに決めることはせずに大きな方向性だけを決めておき、偶然の出会いや予期せぬ出来事を柔軟に受け止めながら、あえて流れに身を任せるようにキャリアを積んでいく考え方をいいます。

重要な決断を迫られるような人生の節目というのは、誰にでも数年おきに訪れます。それまでは流れに身を任せ、人生の節目がくれば、自分のキャリアについて考え、方向修正をします。

変化が激しい現代では、10年、20年後のキャリア設計をいくらきちんとしようとしても、実際は不可能に近いものでしょう。あえて自分の未来の設計図を詳しく描かず方向性だけを決め、節目を迎えるたびに立ち止まり、次のステップをしっかりとデザインする。それが「キャリアドリフト」の考え方です。

なぜ「キャリアドリフト」なのか?

スタンフォード大学のジョン・クランボルツ名誉教授は、「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」で、「個人のキャリアの80%は予想できない偶発的な出来事によって成り立っている。その偶然を計画的に設計し、自分のキャリアを創造していくことが重要だ」としています。

この方法として提示されているのが、「キャリアドリフト」という考え方です。日本では、神戸大学の金井壽宏教授がキャリアドリフトの先駆者と言われています。

大きな変化をともなう節目は誰の人生にも数年ごとに訪れ、決断を迫ります。節目に直面した時にこそ、自身が本当にやりたいこと、好きなことは何なのか、じっくりと考え、自分の中長期的なキャリアを主体的にデザインしていくという考えがキャリアドリフトです。

しかしキャリアドリフトでは、単に節目におけるキャリアデザインだけを重要としているわけではなく、「キャリアをあえてデザインしない」ことも重要だとしています。

節目以外の日常は、小さな変化こそあれ一つの方向に向かって進んでいます。将来やキャリアに対する心配を忘れ、前に進みながらも漂流(ドリフト)するように、流れに身を任せます。流れに身を任せるというのは、日常に起きる小さな変化にはうろたえず、業務や作業に邁進するということです。

「漂流する」ことで余裕を持ち、狭い視野でいると逃してしまうような偶然をチャンスに変えることができるのです。

キャリアドリフトで重要なこと

キャリアドリフトでは、節目におけるキャリアデザインだけでなく「あえてデザインしないこと」も重要視しています。

日常的にキャリアについて考え続けていると、詳細な計画に動きが封じられ、また、計画にとらわれ視野が狭くなることがあります。計画にとらわれることなく変化の波に漂うこと、偶然やってきた機会を活かし、全ての環境の変化に柔軟に対応できるように専念すること、そのことが「あえてデザインしない」という意味なのです。

キャリアドリフトにおいて「あえてデザインしない」ことは「ただ漂う」こととは違うため、注意が必要です。夢や目標、節目での方向修正を、自身の判断によって方向づけができて初めて、流れつく先が決められます。目標なく組織や周囲、環境にただ流されるのではなく「自己決定する」ことが大切なのです。

節目以外では目の前のことにだけ集中し、全力で取り組むことも重要です。自己決定を信じ、一定の時間と労力を投じることで、偶然のチャンスを手繰り寄せることができます。

  • 環境の変化に柔軟に対応できるように専念する
  • 自分の信念や直感に基づいて判断し、方向修正する
  • 自己決定を信じ、目の前のことに全力で取り組む

キャリアデザインではなく、今こそキャリアドリフト

キャリアデザインは、自分のキャリアや職業人生について、経験やスキルなどを頼りに自らが主体的に構想し、実現していくことを指します。しかし、変化が激しい現代では、10年、20年後のキャリア設計をいくらきちんとしようとしても、実際は不可能に近いと感じることもあるでしょう。

詳細な計画にそって物事を決めるのではなく、偶然や環境の変化に柔軟に対応するキャリアドリフトの考え方も必要です。やはり人生の目的や目指す方向は「自己決定する」ことが重要です。

Appleの創設者スティーヴ・ジョブス氏は、スタンフォード大学の卒業生向けに以下の言葉を残しました。

「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。運命、カルマ…、何にせよ我々は何かを信じないとやっていけないのです。私はこのやり方で後悔したことはありません。むしろ、今になって大きな差をもたらしてくれたと思います。」

先が見えない現代では、今、目の前の物事が将来にどのようにつながっていくかは、まったく想像できないものでしょう。しかし、全ての経験は「点」となり、必ずつながっていくものです。そしてつながりは、つながった後にしかわからないのです。大きな方向性の中で自分で選択した決定を信じ、「点」となる経験を積むことに全力をそそぐことが大切です。

キャリアドリフトでは、あえて流れに身を任せることを是とします。「流される」ことをポジティブに言い換えると、「偶然も味方につけながら、流れの勢いに乗る」という意味です。

偶然やってくる変化に柔軟に対応するために、「点」となる経験をたくさん積んでおく。それが、先の見えない現代を生きるために必要なことなのかもしれません。

キャリアドリフトにする注意点

キャリアドリフトは、大きな方向性だけを決めておき、偶然の出会いや予期せぬ出来事を柔軟に受け止めながら、あえて流れに身を任せるようにキャリアを積んでいく考え方のことです。

しかし、単に環境に流されるだけでは成り立ちません。節目に自己決定としての方向修正を行って、はじめて機能すると考えられています。では、重要な節目とは、いったい何を指すのでしょうか。

キャリアドリフトの先駆者である金井教授は、節目に気付かせてくれるものとして4つのサインを挙げています。

 危機の感覚

「このままでいいのだろうか」という焦りや、「このままではダメだ」という感覚は、実際には岐路に立っているからこそ感じる感覚です。焦燥感に惑わされることなく、節目と捉え立ち止まり、じっくりと考えるチャンスです。

内省を繰り返すことで、変化のスタート地点に立っていることに気付くでしょう。

メンターの声

同じキャリアを歩んできた先輩や、信頼している人と話しているときに、相談しているわけでもないのにアドバイスをもらうことがあるでしょう。

「欲しいと思ってもいないアドバイスだ」と煙たがる前に、話の内容や自身の言葉の中に「焦燥感」や「危機感」を示すサインはなかったのか、振り返ることが大切です。

ゆとりや楽しさ

「自分がやっていることがとても楽しくて仕方ない」と毎日イキイキとしているときや、「本当はイヤな仕事だったのに、いつのまにか苦ではなくなっていた」と気付いて驚いたときなどは、節目の可能性があります。

「楽しさ」や「ゆとり」を感じたとき、なぜそう感じているのかを振り返ることで「飛躍」のチャンスを見つけることができるでしょう。

 年齢的な目印

いわゆる大台に乗ったという感覚や、昇進や異動など仕事上の明確な変化は、疑うところのない節目でしょう。就職や転職、あるいは、妊娠、出産、育児、そして介護、また、病気による休業なども含みます。

明らかな節目でも、方向修正が欠けてしまうと、ただ組織や周囲に流されるだけの状態となります。そのような状況だと、思わぬチャンスや偶然の出会いを活かして大きく飛躍することは難しいでしょう。

夢や目標という大まかな方向性の中で、節目を見つけ、自身の判断によって方向修正する。つまり「自己決定する」ことが必要なのです。

キャリアドリフトを活用しよう!

変化の激しい現代では、明確にキャリアをデザインできないことは当たり前のことかもしれません。「将来のビジョンが見えない」「市場の流れが読めない」という理由で不安を持っているのであれば、キャリアドリフトの考えを活用することで不安は解消されることでしょう。

ただ流れに身を任せ、周囲に流されるだけではキャリアドリフトとは言えません。大きな方向性を決めたのなら、その自己決定を信じ、目の前のことに全力で取り組みましょう。その経験が「点」となり、偶然やってくる変化に柔軟に対応することができるようになるのです。

その結果、効率的なキャリアを積み重ねることが可能になるのです。

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