採用基準として適性検査の結果を活用している企業は少ない。
採用活動では、エントリーシートや履歴書の提出、面接など様々な方法で見極めが行われています。適性検査も人材の見極めを目的として実施されるプロセスです。
リクルートキャリアの調査によると、採用時に適性検査・筆記試験を実施している企業は91.8%と、多くの企業で実施されています。
出典元
『リクルートキャリア』就職白書2019
アイデムの調査によると「SPI等適性検査の結果」を採用で重視しているのは15%弱の企業しかおらず、8割もの企業が「選考には利用しない」と回答しています。適性検査の一種である「性格検査の結果」についても、活用している企業は20%弱であり、75%もの企業が「選考に利用しない」と回答しています。
回答企業のうち、「適性検査を実施していない」企業が含まれていると考えられますが、9割もの企業が実施しているのに関わらず、過半数以上の企業が選考には利用していない状況と、採用選考の実施と運用で大きな乖離があります。
出典元
『株式会社アイデム 人と仕事研究所』2018年卒新卒採用に関する企業調査
適性検査は経歴などではない、目に見えない「能力」や「性格」「ストレス耐性」などを測るのに使われています。今回は適性検査でどのような項目が見極められているのかについて説明します。
中途採用での評価項目や評価基準とは?
人事ポータルサイトのHRproが行った「中途採用に関するアンケート調査」によると、新卒採用の採用基準は人間力、ポテンシャル、コミュニケーション能力など判然としないが、中途採用のモノサシは明確でわかりやすいことが分かります。最も重視されるのは「職務経歴」と「スキル」、そして「人柄」と「熱意」です。付け加えれば「仕事の成果」と「志望動機」です。これらの項目はどの業種、どの企業規模でも同じ順位で並んでいます。
出典元
『HR Pro』「中途採用に関するアンケート調査」結果報告
転職時における適性検査は、新卒の就職活動時と比べると、企業の検査を行う意図や意味などが違ってきます。それぞれの立場での企業側のスタンスを比較してみましょう。
適性検査で見極められる項目とは
作業効率や時間配分の仕方、長時間経過後の集中力や正確性など、潜在的な側面でも見極められています。隠れた性格を把握できるということは、候補者がもつ危険因子を把握することも可能だと言えます。
選択式の性格検査のいくつかは関連して回答されるべきものがあり、これが矛盾した回答であった場合には、候補者が適当に回答している可能性があります。面接審査で人当たりがよい好印象な人材も、いざデスクワークに近い環境で作業をさせてみたらこうしたマイナス要因が明らかになったということもよくあることです。
能力検査では基礎学力があるか、一般常識が備わっているか、効率的に回答を行えるかが見極められます。「能力検査」とは、簡単に言うと「働く上で必要な基礎能力」のことです。具体的には、出された問題に対して何を問われているのかを理解し、どういう考え方で答えを導き出すのかを効率的に考え処理する能力を検査します。この能力検査では、企業側が求める能力の基準を満たしているかを見られるので、必ずしも高得点だけが求められるということはありません。
性格検査では会社に入ってから、コミュニケーションを円滑に進められるか、ストレス耐性があるか、向上心があるかなどが診断されます。「性格検査」は、「その人の人となり」を知るための検査です。学生の考え方、日頃の行動などの質問によって、具体的な人物像を知り、どのような仕事に向いているのかを把握します。
中途採用の適性検査で見極められるところは、「社会人としての基本的な知識があるか」「自社にマッチする人材なのか」です。
中途採用であれば、新卒と違い他社で社会人としてのマナーなどは前職で身に付けておき、採用時には即戦力として働けることを期待されています。社会人として基本的な知識が身に付いていることは非常に重要であり、適性検査で調査する必要があると言えるでしょう。
中途採用でせっかく費用をかけたのにすぐに退職されてしまうと企業にとっては大きな痛手となります。そういうわけで適性検査で自社にマッチする人材なのか調査する必要があります。
企業は適性検査の結果をどのように活用しているのか
適性検査は、一般的に母集団の多い新卒採用の一次選考などにおいて広く実施されていますが、近年では中途採用でも需要が高まっています。中途採用は、あらかじめ求める人物像、職種やポジション、求められるスキルが細かく決まっているケースが多いという特徴があるため、新卒採用よりも人選における検査結果の重要度は高いとも言われています。中途採用において適性検査は以下のような目的で実施されています。
社会人としてのスキルや知識の確認
一つ目の目的は、社会人として最低限のスキルや知識(基礎学力など)を持っているかを確認するためです。
新卒採用の場合、自社で実施する新人研修などによってある程度の社会人基礎力を学ばせたり、個人のスキルを把握しておく事が可能です。
中途採用の場合は未知数であり、書類選考や面接においても見えづらい部分です。適性検査を利用して、これまでの経歴の中で社会人としてのスキルや知識をどの程度身につけられているのかを確認します。
雇用のミスマッチの防止
雇用のミスマッチとは、求職者と企業側の雇用におけるニーズが一致せず、そもそも人材が集まらなかったり、採用できても早期離職に繋がる事を言います。
中途採用において適性検査が実施されるのは、雇用のミスマッチの防止を念頭に、まず自社が求めている人材がどうかを客観的に見極めるという目的があります。
主に性格検査などで、受検者の思考や特性を把握し、自社の社風に合っているのかどうか、所属する部署において、与えられたポジションで能力を発揮できるかどうかを客観的に判断します。
求める能力基準の統一
中途採用は企業の必要性に応じて断続的に採用するため、採用における能力基準を統一しておくことも重要です。
能力基準の統一に適性検査を活用することで、担当者によるばらつきをなして客観的で明確な採用判断が可能になります。予め適性検査と面接それぞれで見極める能力を整理しておくと、効率化や中途採用業務の改善に役立つでしょう。
中途採用でもマッチングをメインに適性検査が使われる
新卒採用・中途採用ともに多くの企業で適性検査が活用されていますが、適性検査の種類によって出てくる結果も違えば、採用などでの活用方法や判断基準は企業それぞれで異なります。
多くの企業では「自社が求める人物像」であるかなどの視点で活用されており、採用目標人数に対して候補者が多い人気企業では、足切りなどの目的で使われることもあります。