心の豊かさと仕事のやりがいが重視されている
やりがい搾取という言葉が流行したように、仕事のやりがいは個人差がある一方で、私達の生活において非常に重要です。大学卒業後、フルタイムで60歳まで働いた場合には、生涯の労働時間は10万時間を超えます。残業時間や定年年齢が65歳などに引き上がっていることを考えると、労働に従事する時間は予想以上に多いです。
内閣府が公表している「国民生活に関する世論調査」の結果では、これから「心の豊かさ」と「物の豊かさ」のどちらに重きを置きたいかという調査において、昭和47年時点ではほぼ同程度だったのに対し、現在では「心の豊かさ」が「物の豊かさ」の約2倍程度となっているのです。
仕事の満足度は低下し続けている傾向にあります。仕事のやりがいが満たされている人は、1978年の30%に比べて、2005年では16.6%と半減しています。心の豊かさを重視する一方で、仕事のやりがいがないと感じている人が多くいます。
もちろんバリバリ働いてお金を稼ぎ、物の豊かさを重視する人もいます。しかし、ライフワークバランスなど、物の豊かさよりも仕事とプライベートの両立を重視する動向が起きており、長時間労働を是正してプライベートの時間を増やすだけでなく、充実した仕事生活を送ることも大切です。
モチベーション理論の一つである二要因理論では「仕事上どのようなことを幸福・満足に感じるか」と「どのようなことが不幸や不満に感じたか」という二つの要因について明らかにされています。
今回はハーズバーグの二要因理論から、やりがいにつながる「仕事で幸福・満足を感じられる」要因について説明いたします。
「不満」の反対は「満足」ではない!
二要因理論とは臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱した、仕事の満足・不満足の要因に関する理論です。ハーズバーグの理論によると不満を無くしても満足する訳ではないとされています。
ハーズバーグの二要因理論では、仕事に満足するためには「動機づけ要因」が必要だといわれています。これは「やりがい」とも言えるものです。
仕事には「満足」するための要因がある
具体的に仕事の満足に関わる要因は、「達成すること」「承認されること」「仕事そのものへの興味」「責任と権限」「昇進や成長」です。これらが満たされると満足感を覚えるのです。
動機づけ要因は、マズローの欲求段階説でいうと上位にある欲求の「自己実現欲求」「尊厳欲求」さらに「社会的欲求」の一部に当てはまる要素です。
衛生要因は、下位を支える「生理的欲求」「安全定欲求」と「社会的欲求」の一部の欲求を満たすものと言えます。
仕事にやりがいを感じ、満足する5つの例
仕事でやりがいを感じる要因の5つ「達成すること」「承認されること」「仕事そのものへの興味」「責任と権限」「昇進や成長」について、それぞれ説明いたします。
達成すること
仕事の達成感です。具体的な数字を追う仕事では達成感が得やすいといわれます。きついノルマを押し付けられるような目標ではやらされ感が出てしまいます。
会社の目標に共感でき、スキルに対して少し高めの目標であると達成したときの満足度は高くなります。
承認されること
周囲からの承認や会社からの承認です。
会社での報奨制度や役職も承認欲求を満たすため、満足度が上がります。
仕事そのものへの興味
自分が興味を持てることが仕事と結びついているほど、自主性が上がります。
自らすすんで仕事に取り組むほど成果も上がりやすく、また、満足感は保たれます。
責任と権限
上司から任される仕事の重要度が増し、権限が増えていくほどやりがいは増します。
スキルや自己肯定感とのバランスによってはストレスが上がりますが、裁量権が増える事はやりがいにつながると言えます。
昇進や成長
仕事を通じた成長が感じられることは、職務への満足度へと直結します。成長できている実感を得るためにも、周囲からのフィードバックが必要です。
昇進や社内認定制度など、表彰制度を活用することで満足度を上げることができます。
現状把握も自己理解の一つ!
ハーズバーグの二要因理論では、不満を解消することがやりがいを感じることではなく、仕事でやりがいを感じる要因は別にあるという事が分かります。
仕事でやりがいを感じることは自己成長や労働生産性の向上につながります。今どのような要因が満たされていて、何が満たされていないのかを把握することが、何に仕事のやりがいを感じているのかの自己理解につながるのです。
一方で衛生要因は離職の理由にもつながっています。職場で何が不満なのか、それはいずれ改善されそうな要因なのかどうか。現在自分が身を置いている環境を考えるためにも参考になる理論です。