転職のミスマッチを防ぐ〜中途採用におけるカルチャーフィットの可視化〜

転職者層の早期退職理由は社風のミスマッチ

中途採用の早期離職はコストが高く、売り手市場の現状では中途採用に苦戦する人事担当者も多いはずです。即戦力も大事ですが、カルチャーフィットを考慮した中途採用で、より働きやすい環境を提供できます。

採用面接時にカルチャーフィットを可視化しておくことで、重要なキャリアの価値観について納得した上での採用判断ができます。転職者にとって特に重要な価値観を確認しておくことで、入社後の「こんなはずじゃなかった」を事前に防ぎ、定着率の高い採用に繋げられます。

増加傾向にある転職市場

日本の近年の傾向を見ると、求人数、転職希望者数が共に増加傾向にあります。

DODA転職希望者比率出典元『DODA』転職求人倍率レポート(2017年6月)

転職市場が盛り上がりを見せる中、中途採用の難しさに悩まされている採用担当者も多いのではないでしょうか。新卒採用者に比べて、中途採用者の早期離職率はやや低いものの、3年以内の離職率は30%を超えています。

出典元『中小企業庁』中小企業白書 2015年版

米国でHRテックサービスが生まれたのも、中途採用のコストの高さが背景にあります。人材の流動が激しいシリコンバレーでは、定着率の高い転職者を見極めるために、属人的な勘に頼る採用から、データを使う採用方法へシフトしていきました。
(HRテックの詳しい背景については、「HRテクノロジーの意味や定義とは?〜HR technology入門編〜」をご覧ください)ピープルアナリティクスの技術は当初、定着率の高い転職者を予測するために応用されていたのです。

日本でも、求める人物像のスキルなどが高すぎて良い人材が採用できない・できてもすぐに離職されてしまうことに問題を感じている人事担当者は多いのではないでしょうか。定着率や転職後の働きやすさを考えた施策は急務といえます。

本記事では、人事担当者に向けた、転職におけるミスマッチを防ぐための施策や注意点を紹介していきます。

即戦力も大事だが、早期離職はコスト大

即戦力が前提の中途採用ですが、そのぶん早期離職によるコストも高いことが難点です。

中途採用者の給与水準や、求人広告にかかるコストは高いので、早期退職によって失う損失は、新卒採用者のそれと同等かそれ以上に登ると推測できます。また、売り手市場における日本の現状では、採用競争が激化し、求めるスキルが高すぎたり、それに見合う転職者を見つけるのも簡単ではないでしょう。

つまり中途採用においても、社員の定着率は新卒採用者と同様の重要な条件となります。

自分に合う環境を求める転職者

早期退職の主な理由は、新卒、中途に関わらず「人間関係への不満」だと言うことがわかっています。つまり、カルチャーフィットは新卒、中途に関わらず非常に重要な要素であることがわかります。

仕事をやめた理由出典元『中小企業庁』中小企業白書 2015年版

転職者は普通、更なるキャリアアップを求めて次の職場を探すため、給与に関する情報や雇用条件の情報は、十分に加味した上で入社を検討されることが多いでしょう。

一方で、人間関係の良し悪しや組織文化のマッチは、採用選考時では十分に語られる場合が少ないので、入社後の「こんなはずじゃなかった」を引き起こします。「人間関係への不満」は一部、社風のミスマッチと解釈できるのではないでしょうか。

社会的な傾向は、言い換えれば、約三人に一人の転職者は「社風の合う企業」を求めて転職活動をしている、と言えます。よって、求職者と採用側が積極的に、人間関係や組織文化のマッチ度を検討することで、定着率の高い中途採用が可能になるでしょう。

カルチャーフィットを可視化する

人間関係や組織文化のマッチが軽視されてきた理由の一つに、事前に可視化することの難しさが上げられると思います。

職務経験のある転職希望者は、採用側もスキルがある前提で採用を検討します。また中途採用では、ある程度明確な役職や配属などを前提にオファーをするので、雇用条件については比較的、事前に可視化しやすいと言えます。

しかし、人間関係や組織文化の可視化はそう簡単にはいきません。人間関係についての判断は、個人の好き嫌いを反映しやすく、客観的に比較するのが困難です。では、どのようにして、組織文化のフィットを事前に可視化すれば良いのでしょうか?

HRテクノロジーを使って「こんなはずじゃなかった」を防ぐ

人間関係や組織文化のフィットを測定するには、適性検査とHRテクノロジーが役立ちます。

例えば、ミツカリを使えば、求職者と社員の組織文化のマッチ度が可視化されます。

ミツカリは社風を可視化する適性検査です。ミツカリの導入事例のうち、採用面接と併用する方法があります。ミツカリの分析結果を面接の前に用意しておき、面接でその結果を共有することで、お互いの価値観の深い擦り合わせに役立ちます。

ミツカリを使用していただいている某社の人事担当者によると、ミスマッチ自体が問題なのではなく「ミスマッチも納得すればミスマッチではなくなる(アンマッチ)」と言います。ミツカリは、比較対象同士の結果を元に自動的にマッチ度を算出しますが、そのマッチ度を共有することが大事です。

たとえマッチ度が低くても、重要な項目でのズレが小さかったり、「ここはズレていても気にならない」など、それぞれの項目ごとの差を認識して判断を下すことで、一歩進んだ意思決定ができます。ミスマッチがあったとしても、その差に納得した上での入社ならば、多様性も確保できる利点があります。

入社後の「こんなはずじゃなかった」は、ミスマッチ自体が問題なのではなく、事前に可視化して確認できていなかったことの方が問題であると捉えることができます。

キャリアに対する価値観を確認しよう

中途採用において、キャリアについての価値観の可視化は特に重要です。

理由は、転職者のキャリアの価値観は、人生のフェーズや過去の職務経験などにより変化する可能性があり、新卒採用者の価値観と比べてより複雑で、転職の大きなモチベーションになる可能性が高いからです。

例えば、起こりうる変化の例として以下のような場合が挙げられます。

  • 働きやすさを求めていた若い頃に比べ、近い将来結婚を考えているので、現実的に考えても給与が最も重要な項目だ。
  • 昔は挑戦志向だったが、子供ができた今は安定志向だ。
  • 以前は専門的なスキルに誇りを持っていたが、変化の激しい今の時代には柔軟性も必要だと考えている。今は、食わず嫌いしないで色々やってみたいと思っている。
  • 金銭的なインセンティブにはだいぶ満たされたので、これからは社会理念の強い事業に関わりたい。
  • 今までは経験を積むためにプライベートを犠牲にしても仕事を優先させてきたが、今はプライベートも人生の一部だと考えるようになった。

このような価値観の変化は、新卒採用者には見られない、転職者特有のものではないでしょうか。

しかし、このような価値観も事前に可視化して確認をしなければ、入社後の「こんなはずじゃなかった」に繋がります。このような価値観の変化をサポートする環境が整っているのか、同じような価値観の同僚が多いのかどうかなど、事前に擦り合わせて確認すると効果があります。

中途採用では価値観の部分での擦り合わせをしよう!

日本の転職希望者は年々増加傾向にあります。

しかし、中途採用においても早期離職は30%を超え、離職コストの大きさは中途採用をより難しくさせています。売り手市場の現状では、期待した通りの即戦力の人材の確保も難しく、中途採用においても働きやすさを考慮した採用も大切でしょう。

早期退職理由や転職理由を考慮すると、中途採用においても人間関係などのカルチャーフィットを考慮した採用基準は有効であると言えます。入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐためには、HRテクノロジーを使って価値観のズレをまずは可視化することが重要です。

可視化した結果を、採用面接で細かく擦り合わせることによって、一番重要な項目でのミスマッチを防ぐことができます。転職者はより明確なキャリアの価値観を持っている場合が考えられるので、価値観の部分での擦り合わせは、定着率を決める決定的な要素になります。

社風と求職者の価値観のフィットを考慮すれば、スムーズな転職が期待できます。

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