「こんなはずじゃなかった…」就職後に起こるミスマッチの原因と解決策とは

就職後のミスマッチによる損失とは?

就職後のミスマッチが起こる場面と原因は様々ですが、ミスマッチによって起こる早期離職の被害は深刻です。

ミスマッチを防ぐためには「労働条件」「人間関係」「仕事内容」についての情報を事前に公開し、共通理解を促す方法があります。透明性の高い情報公開は、内定承諾率や応募者数が減る可能性もありますが、結果的にはカルチャーフィットを重視した採用ができ、入社後のミスマッチを減らすメリットがあります。

就職時のミスマッチが問題になる背景について

就職時のミスマッチは、早期離職の主要な原因だと言われています。

初期離職の経験のある社会人1万人以上を対象とした調査によると、離職理由の7割以上を占めるのが「ミスマッチ」による理由だという事がわかります。

初職を辞めた理由
出典元『独立行政法人 労働政策研究・研修機構』資料シリーズNo.171

そして早期離職による企業への被害は甚大です。2016年のマイナビ企業新卒内定状況調査によると、一人が入社するまでに企業がかける採用費は平均して約45万になります。

1人あたりの採用費
出典元:マイナビキャリアサポート『2016年卒マイナビ企業新卒内定状況調査 』

入社後の新卒採用者に対する教育・研修費のコストを考えると、月収を最低20万だと見積もったとして、年間240万x3年=720万です。つまり、3年以内の早期離職が発生すると、相当少なく見積もっても、一人あたり760万相当の投資がリターンを満足に得られないまま損失する可能性があります。

さらに、早期離職に伴う風評被害の可能性もあります。就活生は、3年以内の離職率が30%以上の企業をブラック企業と捉えている傾向があります。そのため、早期離職率の高い企業には応募者が集まらなくなる危険性があります。

ブラック企業になると思う目安
出典元『株式会社DISCO』就活生・採用担当者に聞いた「就活ブラック企業」

たとえ無理して偽りの情報を事前に与えて入社してもらっても、3年以内の離職率が高ければ本末転倒です。

ミスマッチによって起こる早期離職は、新卒・中途採用問わず約25年もの間(もしくはもっと昔から)、3割程度の発生率をキープしており、かなり根深い問題です。

早期離職率の推移
出典元『厚生労働省』学歴別卒業後3年以内離職率の推移 

深刻な早期離職の問題ですが、原因は意外にもはっきりしています。早期離職の主な原因がミスマッチであるならば、どうにかしてミスマッチを失くす方法はないでしょうか?

そこで本記事では、ミスマッチの原因を考察し、解決策について紹介していきます。

就職後のミスマッチはどこで起こるのか?

ミスマッチとは「従業員が期待していた内容と組織が期待する内容に誤差がある状態」だと定義できます。

労働政策研究・研修機構の調査によると、理由のトップ3は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「人間関係がよくなかった」「仕事が自分に合わない」となり、女性の回答で上位にあるのが「ノルマや責任が重すぎた」となっています。


性別ごとの離職の理由
出典元『独立行政法人 労働政策研究・研修機構』資料シリーズNo.171

つまり、早期離職に繋がるミスマッチは「労働条件」「人間関係」「仕事内容」で起こると言えます。

ミスマッチはなぜ起こるのか?「賃金の条件」神話の嘘

労働政策研究・研修機構の調査をじっくり眺めていると、興味深いことが見えてきます。

「賃金の条件がよくなかった」という離職理由が、意外にも「労働条件」「人間関係」「仕事内容」のミスマッチよりも下位にある場合が多いのです。

1年目に辞めてしまう人の離職理由を見てみると違いはより顕著で、「賃金の条件」はさほど問題ではないことが分かります。つまり「給与体制を見直せば辞められない」と言う神話は誤りであることが分かります。

なぜ「賃金の条件」がミスマッチにならないのかについて、2つのことが推測できます。

一つは、基本給はあらかじめ開示している場合が多く、応募者も納得の上で選考に臨むということです。

もう一つは、入社して3年以内の給料アップは現実的ではないため、従業員側と採用側に暗黙の了解が生まれやすいことです。

2つの理由が「賃金の条件」が早期離職にはあまり関係がない理由ではないでしょうか。言い換えれば「賃金の条件」に関して言えば「こんなはずじゃなかった」が起こりにくいと言えます。

裏を返せば「労働条件」「人間関係」「仕事内容」は採用時点で曖昧なことが多いのではないでしょうか。

入社するまで語られない要素だからこそ「こんなはずじゃなかった」が起こりやすく、ギャップを感じやすいと推測できます。

「給与体制を見直せば辞められない」と言う神話のせいで見落とされがちであった要素ですが、実は給与体制を変更するよりも、「労働条件」「人間関係」「仕事内容」を見直す方が施策としてのコストは低いのではないでしょうか。

ミスマッチはなぜ離職に繋がるのか?

ミスマッチはストレスに繋がります。労働政策研究・研修機構の調査結果は、欧米の産業・組織心理学の研究による知見とほぼ一致しています。

著名な産業・組織心理学の教科書によると、従業員は以下の理由で心的ストレスを感じます。

  • 「対人関係の衝突」ー 職場の人との関心や性格のミスマッチ
  • 「役割超過」ー 単純に仕事の量というよりも、与えられた役割の多さのこと(例えば営業社員として入社した(またはそうだと期待していた)のに、いつの間にか広報のような仕事もさせれているようなケース)
  • 「役割のミスマッチ」ー 自分の与えられた役職と自分の知識や経験がマッチしていないとき
  • 「役割の曖昧さ」ー 自分の与えられた役割において何をすべきなのか、何を求められているのかが曖昧なとき

日本における早期離職の理由「労働条件」「人間関係」「仕事内容」も欧米のストレス研究と類似しています。従業員は、「こんなはずじゃなかった」による心的ストレスを感じるために、離職に踏み切るケースが多いと推測できます。

ミスマッチの解決策について

「賃金の条件」によるミスマッチが少ないのは、事前に共通理解があるからだと推測できます。同様に「労働条件」「人間関係」「仕事内容」についても、なるべく事前に情報を共有して、共通理解を得た状態で入社してもらうのが理想です。

可視化しにくい「人間関係」のミスマッチを防ぐには

人間関係のミスマッチは、カルチャーフィットに重点を置いた採用方法で防ぐことができます。

人間関係のミスマッチは、能力・スキルによるミスマッチと言うより、性格特性、価値観、ビジョンのミスマッチです。より深いレベルでの共通理解を目指すために、心理的要素を測る適性検査を面接と併用するのが良いでしょう。

人間関係のミスマッチの難しい点は、目では確認しにくいところです。なるべくカルチャーフィットを可視化できる適性検査を使いましょう。

「労働条件」「仕事内容」のミスマッチを防ぐには

「労働条件」「仕事内容」のミスマッチは、採用選考時や会社のホームページで明示することが可能です。このような情報は「人間関係」よりも遥かに客観性があり、はっきりと可視化することができます。

しかし「全てをさらけ出して、本当に自社のことを気に入ってくれる候補者なんているのだろうか?」と疑問に思う人もいるでしょう。「労働条件」「仕事内容」をさらけ出すことは、不都合な事実を開示することになるため、「内定承諾率低下や応募者数低下などのリスク」と「ミスマッチの低下による利益」を天秤にかけることになります。どちらを優先した方が良いのでしょうか?

これについては、1998年のフィリップスによるメタ分析が暫定的な答えを出してくれます。

彼の分析によると、採用段階で「現実的な社内情報(Realistic Job Previews)」を共有していた会社の方が、従業員の入社後の離職率が低く、パフォーマンスも高く、業務満足度も高いことがわかりました。現実的な社内情報とは、都合の悪い情報、デメリットを含む情報のことです。

この分析による予測の効果量は高くはないものの、都合の悪い情報を共有することはほぼ無害であるか、わずかながらも良い効果を与えるようです。おそらく、企業側がメリット・デメリットを隔てなく提示することによって、候補者の信頼感が増すことによる利益が大きいのではないかと推測できます。

「労働条件」「仕事内容」のミスマッチを防ぐために、自社の不都合な事実さえも事前に提示することは、結局は「ミスマッチの低下による利益」に繋がります。

仮に事前に嘘の情報を与えて、多くの応募者を引き付けたとしても、入社後にミスマッチを引き起こして早期離職をされてしまう場合もあります。この場合の風評被害を考えると、応募者数のさらなる低下に繋がります。

「労働条件」「人間関係」「仕事内容」を明示する

就職後に起こりやすいミスマッチは「労働条件」「人間関係」「仕事内容」についてのミスマッチです。

ミスマッチは、心理的なストレスを与えます。ミスマッチによって起こる早期離職の被害は甚大です。ミスマッチを防ぐためには、なるべく多くの情報を事前に公開し、入社前に共通理解を得ることが直接的な解決に繋がります。

人間関係のミスマッチは、カルチャーフィットに重視した適性検査と面接の併用によって実現できます。「労働条件」や「仕事内容」についての情報公開は、内定承諾率や応募者数が減る懸念がありますが、入社後のパフォーマンスの向上や離職率を減らすなどのメリットがあります。

早期離職によるコストを考えれば、事前にミスマッチを防ぐ施策は十分に試してみる価値がありそうです。

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