コンピテンシーの意味や定義、使い方とは?人事業務での活用方法

採用や研修など企業活動で活用される「コンピテンシー」

「コンピテンシー(competency)」という言葉は、ビジネスの現場では数年以上前から耳にする機会が増えました。

「コンピテンシー」は、その企業に適した形で活用することで、採用や研修(人材開発)などに影響を与え、企業の生産性を高める切り口とした重要なキーワードになっていると言われています。最近では、採用時の「コンピテンシー面接」、研修・教育面での「能力開発」、人事制度における「人事評価基準」など、企業活動の人事面での新たなツールとして注目されています。

高度成長期以降の日本では、多くの企業が年功序列による評価制度を採用し、年齢や勤続年数などによって待遇を決定する仕組みが確立されました。しかし一転、90年代のバブル崩壊以降は、評価制度の見直しが多くの企業で行われ、「成果主義」や「能力主義」を新しい成果主義として導入しました。

社員の意欲を引き出し、企業の生産性向上に貢献することを期待されたこの評価制度は、「本人のスキルや能力と業績の関連性を明確にできない」「ヒトが判断する点で確実な測定が困難」と指摘されるようになっていきます。

こういった流れを受けて、次なる評価基準として注目されている“概念”が「コンピテンシー」です。

コンピテンシーの意味や定義を考える

コンピテンシーの言葉の意味・定義について

「コンピテンシー(competency)」とは、「成果につながる行動特性」のことで、主に、人事評価や人材育成などに活用されている概念と言われています。組織で高い成果を出す人材の共通した行動特性を把握して評価していくことを指します。つまり、「高い成果を出す行動特性を評価しましょう」ということです。

重要なポイントは、「コンピテンシー」の概念を活用する目的が「評価のため」ではないということです。評価はあくまでも手段で、本来の目的は「組織全体のパフォーマンスを向上させること」にあります。

ある特定の業務において、高い業績や成果を出している人がいるとします。その場合、その人材には何か、業績や成果を出す理由があると考えられます。理由に当たる部分が、行動特性でありコンピテンシー、というわけです。コンピテンシーを簡単に言いかえれば、成功している人物のやり方をまねよう、ということになるでしょう。

コンピテンシーの概念図
出典元『RESILIENT MEDICAL』コンピテンシーとは~意味と例をわかりやすく解説

コンピテンシーですが、もともとは米国・ハーバード大学の心理学者である、D.C.マクレランド教授を中心としたグループが、「学歴や知能レベルが同等の外交官が、開発途上国駐在期間に業績格差が出るのはなぜか?」という内容の調査・研究を行い、「学歴や知能は業績の高さとさほど相関はなく、高業績者にはいくつか共通の行動特性がある」と結論づけた事象が始まりとされています。

コンピテンシーは米国を中心に、企業の人事システム構築のための一つのツールとして発展していきました。コンピテンシーの定義は、学術的には確定したものはないと言われており、一部の学者やコンサルティング系の企業がそれぞれの考え方をまとめて定義づけています。

コンピテンシーの用途について

コンピテンシーモデルは、主に「採用面接」「人材育成」「人事評価」に活用することができます。

採用面接(新卒採用、既卒者採用ともに)

学生時代や前職で成果を出した活動や実績を確認し、「その状況でなぜそのような行動を取ったのか」を掘り下げます。やり取りの中で具体的な数値や結果などを確認しながら、「自社への適性」や「能力レベル」、そして「行動特性」を引き出します。

人材育成

「コンピテンシーモデル」にならった行動が取れるよう目標を設定し、積極的・自発的な行動を促します。また、その行動の基礎となるための能力やスキルを獲得することで、柔軟な行動を生み出す発想や判断力を磨く能力開発へとつながります。

人事評価

目標で設定した行動が実践できたか、その行動のために必要な能力を身につけることができたかを評価します。

個人がある状況で成果を上げた行動を、新たな「コンピテンシー」のモデルとして評価することで、自社にとっての新しいコンピテンシーモデルを積極的に作り出していきます。

「コンピテンシー」が注目されている理由とは

面接段階で優秀な人材なのかが判断できる

たとえば「自社のサービス説明が明確でわかりやすい」というコンピテンシーがあった場合、採用面接時に説明能力をチェックすることができれば、優秀な人材を見つけやすくなります。

コンピテンシーに基いて採用活動を行うことを、一般的に「コンピテンシー採用」と言われています。

個人を客観的に評価することが容易

コンピテンシーを項目立てて明文化できれば、客観的な評価指標として活用することが可能なため、仮に人事担当に変動があっても優秀な人材を客観的に評価することができます。

キャリア開発などの人材育成に有効

人材育成におけるのカリキュラムに導入することで、客観的分析に基づいた優秀な人材育成を高確率で実践できます。

自社のコンピテンシーの一つに「課題解決力が高い」を挙げた場合、育成カリキュラムに反映すれば、コンピテンシーに倣った人材を育成しやすくなるでしょう。

役職ごとのコンピテンシーを各段階の育成カリキュラムに加えることで、キャリアプランのマネジメントがしやすいというメリットもあります。昇格評価基準に、部長クラスのコンピテンシーを盛り込むなどで、条件を満たした人材のみを昇格させることが可能になります。

コンピテンシー導入の最大の目的は、社員の”行動”を、目に見える形で飛躍的に変革させることです。なお、人事面におけるコンピテンシーの考え方と従来の人事の考え方は、その対象が異なります。

従来は「標準の数値の人材」が対象ですが、コンピテンシーでの考え方は「仕事のできる優秀な人材」が対象となります。

コンピテンシーの意義やその効果を、自社の組織力向上につなげていくことが今、求められています。

コンピテンシーを活用することで得られる効果

全社員の行動の質を高めることが、自社の行動基準や指導基準となります。就業規則だけでなく、組織風土の醸成にも影響を与えます。

ノウハウやコツの共有化を図ることで、ナレッジマネジメントを実践できます。市場のグローバル化やロボった人工知能などの発展により、市場競争が激化するなかでは、目先の業務を成功させることよりも、自社ならではの価値を提供しながら成長し続けるための行動指針であるナレッジをマネジメントすることがより重要になります。
能力評価基準の明確化を図ることで、能力評価のための具体的な指針としても利用できます。自社で何をすれば評価されるのかわからないと行った、評価項目や評価基準が不明瞭であると、従業員の不満はたまる一方です。具体的な行動指針として、この行動がどこまでできたかといった評価項目・評価基準が明確になれば、従業員もその指針に従って行動することができます。

「コンピテンシー」についての理解を深める

面接や評価、育成などに使われている「コンピテンシー」について、まずは基本を理解して頂けたでしょうか?企業にとって重要な面接や評価などについては、今後の記事で掘り下げていきますので、そちらもぜひ、あわせてご参照ください。

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