面接の評価基準を具体化する重要性とは
自社に合う人材を採用するためには、求める人物像を明確にし、評価項目を定めることが必要です。しかし、それだけでは不完全です。個々の面接官が主観で面接を評価している現状を自覚して脱却し、複数の面接官が同じ目線で採用合否を判断できる状態を構築できて初めて、組織としての面接・採用力強化を図れるからです。
「人間関係をうまくやってくれる人材」であれば、どんな要素を評価すべきなのか、評価項目が不明確です。「結果で評価されたい」人とうまくやってくれる人は「結果で評価されたい」と考える人ですし、「過程も評価してほしい」人とうまくやってくれる人は「過程も評価してほしい」と考える人です。
「コミュニケーションスキルが高い人材」であっても、どのようにしてコミュニケーションスキルを測るのか、評価基準を明確にする必要があります。採用担当者は「コミュニケーションスキルが求められるレベルに達している」と考えても、経営者が「コミュニケーションスキルが求められるレベルに達していない」となってしまうと、どちらの評価が正確なのかを議論する必要が生まれます。採用担当者も経営者も人であり、間違いは起きるため、どちらかが妥協しても間違った選択をしてしまうと、ミスマッチが生まれてしまいます。
本当に自社にマッチする人材を採用するためには、面接の評価項目や評価基準を具体化・客観化し、正確に評価することが重要なのです。
多様性を活かせる企業が勝ち残る
日本の労働力人口が減少の一途を辿るなか、2016年には女性活躍推進法が施行され、日本で働く外国人労働者数は初めて100万人を突破しました。多様性を活かす力が、企業の競争力を向上するために必要不可欠な時代です。
経済産業省では「企業は、多様化する顧客のニーズを的確にとらえ、新たな市場を取り込むためのイノベーションを生み出し、リスクに対応することが求められる」として、競争戦略としてのダイバーシティ経営を呼びかけています。
参考URL『厚生労働省』女性活躍推進法が成立しました!
参考URL『日本経済新聞』外国人労働者100万人超え 受け入れ政策急務
参考URL『経済産業省』ダイバーシティ経営が企業の競争力を高める
社会人基礎力の高い人材を企業は求めている
経済産業省では2006年から「社会人基礎力」の向上を提唱してきました。「基礎学力」「専門知識」に加えて、「多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な能力=社会人基礎力」を、企業が求めていることを前提とした考え方です。
面接の評価基準を策定する際、この「社会人基礎力」を参考にすることは非常に有用です。3つの能力、12の能力要素として分類されている「社会人基礎力」のなかでも、どういう能力の高い人物がより自社にマッチする人材かを精査し、どのような人物ならば能力が高いと判定するのかを議論することで、面接評価基準の具体化、客観化を図ることができます。
採用合否を客観的に判断する面接評価基準の策定を
評価基準を作成するためには「重要な評価項目が何かを決める」「各項目において、評価基準を決める」「客観的に評価できるか、社内で擦り合わせる」の3ステップが必要です。それぞれのステップについて説明します。
1.求める人物像にマッチする項目を面接の重要評価項目とする
面接の評価項目がまだ決まっていない場合には「社会人基礎力」を参考にして、面接評価項目を複数定めると良いでしょう。すでに決まっている場合にも、戦略的なダイバーシティ経営という観点から面接評価項目を再度見直してみるのがおすすめです。
「社会人基礎力」は、以下の3つの能力に区分されています。
- 前に踏み出す力(アクション)
一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力 - 考え抜く力(シンキング)
疑問を持ち、考え抜く力 - チームで働く力(チームワーク)
多様な人々とともに、目標に向けて協力する力
それぞれの能力を構成する要素として、12の能力要素が定められています。自社の業務ではどの能力が重要なのか、優先順位をつけることが大切です。
- 主体性
- 働きかけ力
- 実行力
- 課題発見力
- 計画力
- 想像力
- 発信力
- 傾聴力
- 柔軟性
- 情況把握力
- 規律性
- ストレスコントロール力
2.評価項目ごとに評価基準の定義を具体化する
注視すべき能力を定めたら、あるいは選定を進めるのと並行して「どのような状態ならば能力が高いと判定するのか」を具体的な尺度を設けていきます。尺度が明確になることで、評価基準が主観から客観に変わっていくのです。
「課題発見力」が高い人物を採用したい場合、課題発見力が高いと言ってもどういう行動特性があれば課題発見力が高い人物だとみなすのか、評価基準は人それぞれです。
現状を把握・分析して数学的に説明できることを指すのか、現場の声をしっかりヒアリングし定性データの収集まで行った上で現状を分析し課題と特定する能力を指すのか、目的に対する課題設定のスピードが速いことが大切なのか、などです。どういうケースなら課題発見力がどれくらい高いと判定するのか、評価尺度をより具体的に定めていくのです。
尺度が具体化されることで、面接を評価する際の客観性が高まります。合否判定の意見が食い違ったときにも「最低限求めている、数学的な現状分析はできているしスピードも速いけれど、定性データの活用ができていないし必要性を理解できていない。だから課題発見力の点数は、やはり満点の4点ではなくて1点マイナスの3点だね」など、ロジカルな報告や議論が成立するようになるのです。
評価基準の客観性が保たれるようになると、複数の面接官で意見が食い違ったときに現場の声ばかりが偏重されたり、経営層の経験値によって合否が覆ったりなど、面接評価の際によく起こりがちな問題は随分緩和されるはずです。新米の面接官も自信を持って発言や報告をできるようになるでしょう。結果として、組織として一枚岩となった採用活動が可能となり、面接採用力が向上するのです。
3.社内グループワークなどを行って、目線を擦り合せる
面接の評価基準と尺度は、自社の人材要件を最も精緻に把握している人事部門が素案を策定します。採用のミスマッチが顕在化している場合には、求める人物像の見直しから着手し、評価項目と評価基準の見直しをするのが良いでしょう。
具体的な手法としては、自分以外で実際に面接官を担当した人に、評価項目と評価基準についてのヒアリングを行うのが一般的です。会議を設定して改めて意見を聞くのも良いですが、一番効果的なのは面接直後、面接官にヒアリングを重ねることです
既定の評価項目や評価基準に対して面接の担当者がリアルに違和感を持っているのは、面接の直後だからです。人事部門ではなくラインのメンバーが面接を担当している企業ではなおさらでしょう。
社内でグループワークを実施して、評価基準や評価尺度のすり合わせを行うとさらに精度が上がります。「この評価項目についてはみんなの評価基準は合致している」という思い込みをを発見できる可能性があります。また、「この前うちのメンバーがこういう局面でこんな風に動いてくれたんだ、あれはまさに情報判断力が高いと言えると思った」などのように、従業員の具体的な行動を共有することで、組織共通の尺度が生まれます。
主観での面接評価から脱却することが、面接成功の鍵なのです。
面接の評価基準を具体化・客観化し、組織としての採用力向上を
事業の拡大に伴って複数の面接官が必要になってくると、評価項目を絞ったとしても、評価基準がバラバラになりがちです。
評価基準を具体的に言語化することで、組織体として同一目線での採用活動が可能となるだけでなく、今後の採用戦略を立てる際のヒントも多く得られるのです。