ワークライフバランスの現状と企業にとってのメリット・デメリットとは?
ワークライフバランスとは、若者の経済的な自立や誰もが意欲と能力を発揮できる社会を目指して2007年に政府が策定した、仕事と生活の調和を意味する言葉です。
内閣府によるワークライフバランスの推進サイトの調査によると、男性よりも女性の方が「仕事と生活の両立が図れていると思う」と回答した割合が多い一方で、まだ半数程度しか実現できていないことがわかります。
出典元『「仕事と生活の調和」推進サイト』企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究報告書(平成31年3月)
ワークライフバランスの実現への取り組みは、人手不足や人材獲得難が続く現在の日本において、社員の定着率向上やエンゲージメント向上を図る上で非常に重要な課題です。
厚生労働省の調査によると、ワークライフバランスの実現に積極的な企業ほど売上が高く、離職率の低下や雇用の増加につながっている傾向があるという結果が出ています。
出典元『厚生労働省』労働生産性の向上とワーク・ライフ・バランスの実現に向けた企業の取組
ワークライフバランスは、社員の定着率向上だけでなく、事業の成長においても重要なのです。企業にとってメリットの多いワークライフバランスですが、ワークライフバランスの導入にはデメリットも存在するため、注意が必要です。
今回の記事では、ワークライフバランスの問題点についてご紹介します。
ワークライフバランスの問題点とは?
ワークライフバランスの問題点としては、ワークライフバランスの実現に向けた取り組みに対して、協力を得られない場合があるという点が挙げられます。
ワークライフバランスの実現に協力が得られないケースとしては、以下のような例が挙げられます。
- 長時間労働に対してネガティブなイメージを持っていない
- 現在の評価制度と合わない
- 会社の経営層の理解が得られない
1.長時間労働に対してネガティブなイメージを持っていない
ワークライフバランスの問題点として、ワークライフバランスの推進が必要な企業ほど、長時間労働に対してそもそもネガティブでないことが挙げられます。
内閣府の調査によると、同僚・上司にかかわらず、残業している人を「頑張っている人」と捉える人が多いという結果が出ています。
出典元『内閣府男女共同参画局』ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査報告書
内閣府の調査結果からは、労働時間が長い職場ほど、残業している人に対して「頑張っている人」「責任感が強い人」といったポジティブなイメージが強くなる傾向が読み取れます。逆に「仕事が遅い」「生活費のために残業している」といったネガティブなイメージを持つ人は少なくなる傾向から、労働時間が長くワークライフバランスの推進状況が悪い企業ほど、残業に対してポジティブなイメージが強い傾向があります。
残業を美徳とする組織風土の企業では、ワークライフバランスを推進しようとすると「労働時間を短くされた」とマイナスに受け取られ、不満を感じる社員が発生する可能性があるため注意が必要です。
2.現在の評価制度と合わない
ワークライフバランスの問題点として、前項の内容と一部重複しますが、現在の評価制度と合わないケースが挙げられます。
内閣府の調査によると、残業や休日出勤をせずに時間内に仕事を終えている人に対して、人事評価でマイナスに評価しているケースが一定の割合で存在するという結果が出ています。
出典元『内閣府男女共同参画局』ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査報告書
時間内に仕事を終える人をマイナスに評価する組織風土の企業では、テレワークやフレックスタイム制などを導入したとしても、公平な評価ができません。ワークライフバランスを推進するためには、労働時間ではなく業務の質や結果で評価する職務評価制度の導入が必要です。
職務評価制度の導入は、ワークライフバランスの推進だけでなく、同一労働同一賃金制度の観点からも効果的です。優秀な人材のモチベーション向上や配属の適材適所の実現にもつながるため、企業にとっては制度導入の手間以上のメリットが得られるでしょう。
3.会社の経営層の理解が得られない
ワークライフバランスの実現に取り組むためには、経営者や上層部の理解と協力が必要不可欠です。しかし、ワークライフバランスの推進にかかる工数やコストを嫌がり、ワークライフバランス導入への協力を得られない場合があります。
ワークライフバランスを実現するためには、ワークライフバランスがどういうものかという説明だけではなく、自社が抱える課題や課題解決で得られるメリットの提示など、具体的な数値を示して経営者や上層部の理解と協力を得るようにしましょう。
ワークライフバランスの問題点は社員や経営者の理解を得ることで解決できる!
ワークライフバランスとは、若者の経済的な自立や誰もが意欲と能力を発揮できる社会を目指して2007年に政府が策定した、仕事と生活の調和を意味する言葉です。
ワークライフバランスの問題点としては、ワークライフバランスの実現に向けた取り組みに対して、協力を得られない場合があるという点が挙げられます。ワークライフバランスを実現するためには、職務評価制度を導入したり経営者の理解を得たりする必要があります。
企業にとって様々なメリットが期待できるワークライフバランスの実現に向けて、社内のワークライフバランスに対する認知度向上や理解促進に取り組んでみてはいかがでしょうか。