テレワークが抱える課題に対する解決策とは?
テレワークとは、会社から離れたところで働くことを意味する言葉です。在宅勤務だけでなく、サテライトオフィスやモバイルワークなども含めてテレワークと呼びます。
テレワークの名前は様々なところで聞かれるようになり、厚生労働省がテレワーク導入マニュアルを公開したり、東京オリンピックが行われる2020年までの7月24日はテレワーク・デイとするなど、国や政府が積極的に活用を推進しています。
総務省のテレワーク・デイ実施結果報告によると、テレワークを実施した企業の従業員の90%以上がテレワークを継続実施したいと回答し、テレワークに対する従業員の期待が高まっています。
HRプロの調査ではテレワークを導入している企業は25%と、導入企業は1/4の企業に留まっています。テレワークを期待する従業員と導入する企業数にギャップが生じています。
出典元『HRプロ』HR総研:「多様な働き方」実施状況調査【1】全般、テレワーク
テレワークはフレックスタイムなどと違い、制度や勤務時間を変えるだけでなく、環境も構築しなければなりません。導入に時間や労力がかかることから、導入が進んでいない企業も多いようです。
今回はテレワークにおける課題や問題点と、課題に対する解決策についてご説明します。
テレワークの課題や問題点とは?
テレワークにおける課題や問題点として、代表的なものを5つ取り上げます。
- テレワークできる業務がない
- 環境の用意とセキュリティ対策が必要
- コミュニケーションが希薄になる
- 正確な勤務時間が把握しにくい
- 仕事における評価がしづらい
1.テレワークできる業務がない
テレワークできる業務がないという課題は、メーカーで多く聞かれた意見です。
大型機械の操作や完成した製品の確認など、物理的に作業の場を離れて仕事をすることができない職種もあり、社内で制度の不公平感が生まれて均衡が保てない恐れがあります。
2.環境の用意とセキュリティ対策が必要
テレワーク導入のためには、1人1台モバイルPCを付与したり、自宅にネット環境がない人のためにネットが使える施設を共有するなど、テレワーク利用者が仕事をする環境を整える必要があります。
社外で社内の情報を閲覧するため、セキュリティの担保と社内システムの情報通信技術化の取り組みも必要となります。セキュリティやシステム構築の負荷が、テレワーク導入の特に高いハードルとなっている部分です。
3.コミュニケーションが希薄になる
従業員同士が直接会うことが少なくなると、相談しようと思っていたことが後回しになったり共有する機会が減り、同僚がどんな仕事をしていてどんなことに悩んでいるのか見えなくなるのではという心配があります。
相談や共有の機会が減ることで、チーム力や労働生産性が低下してしまうのではないかという懸念もあります。
4.正確な勤務時間が把握しにくい
従業員の働きぶりを直接見られないので、何時から何時まで仕事をしているか正確に判断することが難しくなります。
生産性の低い従業員や休憩時間を多めにとって仕事をする従業員がいても、実際の総労働時間を把握するのが難しいという意見も多く聞かれます。
5.仕事における評価がしづらい
仕事や業務に対する評価が、結果でしか評価できなくなる点も課題として存在します。
仕事を自社で行えば勤務態度や勤怠、仕事ぶりなども加味して評価をすることができるのですが、在宅勤務者の評価は業務に対する結果でしか評価できません。
仕事の過程だけを重視すると、過程が見えづらいテレワークでは適正な評価が難しくなってしまいますが、成果のみによる評価は過剰な成果主義に繋がりかねず、逆に従業員のモチベーションを低下させてしまう恐れがあります。
テレワークの課題や問題に対する解決策について
テレワークの課題や問題について5つご紹介しましたが、それぞれの課題への解決策をご紹介します。
- テレワークできる業務を見付ける
- 環境の用意とセキュリティ対策は先行投資にもなる
- コミュニケーションツールの導入や出社日を作る
- 勤務時間を報告するシステムやツールを利用する
- プロセスと成果に対する適正な評価制度を作る
1.テレワークできる業務を見付ける
業務内容によっては、テレワークが難しい職種もありますが、全ての業務が出勤しなければ不可能ということはありません。まずは業務の棚卸しを実施してみましょう。
テレワークが難しい機械操作や製品確認などの業務の中でも、資料作成や日報入力の業務であれば、テレワークが可能です。
2.環境の用意とセキュリティ対策は先行投資になる
社内の情報通信技術化とセキュリティ対策は、時間と労力がかかってしまいますが、いつかは検討しなければいけない課題です。
システムや社内の情報が社外で見られないと、社員はずっと出勤しなければ仕事ができない環境になってしまい、働き方改革に限界が生じます。
現在は様々なIT企業から、リモートデスクトップや仮想デスクトップなどの、クラウドや仮想化を使った商品やサービスが誕生しています。セキュリティーも強化されたものになるので、テレワークをきっかけに導入を検討してみるのもよいでしょう。
3.コミュニケーションツールの導入や出社日を作る
テレワーク利用者は職場から離れている状況となりますが、仕事の共有管理ツールやWeb会議システムなどのコミュニケーションツールを導入すれば、オフィス勤務者と円滑に仕事ができる環境を作れます。
出社日や出社曜日を指定し、定期的に直接顔を合わせる機会を作ることも効果的です。
4.勤務時間を報告するシステムやツールを利用する
テレワーク利用者は職場から離れているので、正確な勤務時間の管理は困難です。
テレワークを導入している多くの企業では、従業員の勤務時間の管理方法として、始業・終業時にメールや電話などで上司へ報告させるという方法をとっています。報告の際に1日の業務報告を行い、相談点や共有事項のチームへの引き継ぎも同時に行っています。
パソコンのログ時間で業務時間を管理する会社や、システムのログイン時間を業務時間とする会社もあります。
5.プロセスと成果に対する適正な評価制度を作る
テレワーク利用者の業務を評価するには、プロセスと成果をバランスよく考慮した、新しい評価制度が必要になります。
新しい評価制度を作るには時間と労力がかかってしまいますが、プロセスと成果に対する適正な評価は、テレワーク利用者だけでなく従業員全体のモチベーション向上にもつながります。
プロセスをどう見るかについては、業務予定の報告や業務終了後の成果報告を、従業員に習慣づける仕組みを設けるとよいでしょう。
テレワークの効果をより良く発揮するには、従業員がテレワークに対してどのような不安や疑問を感じているのかしっかりと耳を傾け、企業と従業員の双方が納得できる人事評価制度や報酬制度を構築することが大切です。
テレワークの課題解決は生産性向上にもつながる!
テレワークには様々な課題や問題点があり、導入・運用へのハードルとなっています。課題の一つひとつは解決が可能で、課題解決のための方法も数多く存在します。テレワーク導入済みの企業のアンケート調査も、課題解決の大きな助けになります。
テレワークの課題や問題点のほとんどは、事前にどのようにすれば効果的にテレワーク制度を運用できるのかを考えておくことで、解決・対策できます。
テレワーク導入のための課題を解決することは、テレワーク以外の面でも、会社運営の様々な助けになります。テレワーク導入をきっかけとして社内のシステムや評価制度を見直し、会社全体の生産性向上につなげてみてはいかがでしょうか。