経営理念とは?意味や目的、メリットを理解して正しく活用しよう!

経営理念の重要性とその影響とは

多くの企業には、経営理念が存在します。労務行政研究所の調査結果によると、従業員1,000人以上の会社には100%経営理念があり、従業員規模が減ると経営理念の有無の比率も減少傾向にあります。全体では90.6%、300人未満の企業では87.1%の企業が経営理念があると回答しています。

経営理念の有無
出典元『日本の人事部』経営理念の策定・浸透に関するアンケート

経営理念を明文化しているかの調査では、従業員規模300人以上の企業は明文化していると回答しているものの、300人未満の企業の一部(3.7%)では明文化していないとの回答があります。中小企業などであればあるほど、そもそも経営理念がない・明文化していないなどの現状が明らかになります。

経営理念の明文化
出典元『日本の人事部』経営理念の策定・浸透に関するアンケート

宮田矢八郎著の「理念が独自性を生む」には、売上規模別・経常利益額別に見た「経営理念の有無」の調査結果が報告されています。従業員規模とも関係する要因とはなりますが、売上規模や経常利益額が高くなればなるほど、経営理念がある企業の割合が増加傾向にあります。経営理念を設ければ売上や経常利益額が上がるわけではありませんが、売上や経常利益額が高い企業になりたいのであれば、経営理念の有無は一つの要因であるという仮説が成り立ちます。

売上規模別・経常利益額別に見た「経営理念の有無」
出典元『幻冬舎 GOLD ONLINE』企業の「経営理念」は業績にどのような影響を与えるか?

経営理念を策定した目的として最も多く挙げられるのが「企業経営の方向性の明確化のため」でした。全産業・全従業員で見ても、91.3%の企業が明確化を図るために経営理念を策定しています。次点では「社員の目的意識を合わせるため」で48.8%と大きな開きがあります。どんなに優秀な人を集めたとしても、どのような目標を掲げ、どのような過程を経るのか、方向性を明示しておく必要があることが分かります。
「経営理念」等はどのような目的で策定されたものか
出典元『日本の人事部』経営理念の策定・浸透に関するアンケート

今回はそもそも経営理念とはなにか、どんな目的があるのか、明文化することのメリットやデメリットなどの全体像について説明します。

経営理念の定義と意味とは

経営理念という言葉は抽象的なものです。また企業ごとに異なる経営理念が掲げられているため、意味のイメージはできても正しく説明できる人は多くありません。まずは「経営理念」という言葉について紐解いて説明します。

「経営」とは、「事業目的を達成するために継続的かつ計画的に意思決定を行い、実行に移し、事業を管理・遂行すること」とされています。事業目的や事業計画などは企業によって異なりますので、抽象的な概念とも言えます。

「理念」とは、「ある物事についてこうあるべきという根本の考え、道理、筋」のことです。「理」は「筋やことわり」で、「念」は「今+心からなる、心中深く噛みしめる」という意味です。心中深く噛みしめるものは価値観などによって違いが生まれますが、「理念」とは、価値観に則った根本の考えや道理、筋と読み替えることができます。

「経営」と「理念」の意味から、「経営理念」とは「事業を管理・遂行する上でこうあるべきであるという根本の考えや道理、筋」であると読み取れます。

つまり創業者や経営者(社長)自身が会社を経営していく中での「考え方」「強い信念」「哲学」「倫理観」「価値観」「思い」「企業の存在意義」などが経営理念であると言えます。

経営理念を明文化する目的とは

経営理念を明文化する目的としては「事業を管理・遂行する上での根本の考えや道理、筋」を従業員や社外の人に伝えることが挙げられます。どのような経営者であっても必ずなにかしらの考え方や信念、哲学があります。当然のことながら、経営者地震が考えているだけでなく、行動に起こしたり伝えなければ、他者から見た経営理念は明確になりません。

経営理念を野球で例えると「私達は野球をする」「日本で一番強いチームになる」「どんなに負けていても試合終了のときまで勝利を信じて頑張る強い心を持つ」などといった目標・信念だと言えます。経営理念は進むべき方向をしめす「方位磁石」、「羅針盤」のようなものです。

もし目標や信念を明文化していなければ「野球はやりたくない、サッカーがいい」「スポーツは自分でやるより観戦派」「野球は好きだけど、遊び感覚、楽しくできればいい」などいろいろな価値観の人が集まるようになってしまい、チームとしての方向性が定まりません。「日本一のチームにしたい」「強くなりたい」と思っているモチベーションの高い人も、バラバラな価値観の人たちの中にいると、段々やる気もなくなってしまいます。

経営理念を明文化することで、その理念に合った同じような志の人(従業員)を集めることができます。

松下幸之助さんの言葉に「会社経営の成否の 50%は経営理念の浸透度で決まり、30%は社員のやる気を引き出す仕組み作りで決まる。戦略戦術は残りのわずか20%である。」というものがあります。日本航空名誉会長である稲盛和夫さんは「経営理念を守れないならば、会社を畳んだ方がまし。」という言葉を残しています。

経営理念を活用するためには「社内外の人にどれだけ浸透しているか」の観点が重要ですが、その第一歩として明文化が挙げられています。経営理念の浸透は、従業員の意識を統一し、能力を最大限発揮させるための環境づくりに必要です。

経営理念と企業理念の違いとは

経営理念とよく似た意味の言葉に「企業理念」があります。広い意味では同じですが微妙にニュアンスが違います。

企業理念とは、会社が大切にする考え方や価値観、存在意義などを言葉に表したもので、全従業員が共有し、会社における行動や意思決定の基準となるのものです。経営者が変わった場合には、経営理念(創業者の思い)は変わる可能性がありますが、会社は変わらないために企業理念は変化しにくいのが一般的です。

理念経営は創業者が持つ信念や考え、そして企業理念は「創業者の信念や考え」を継承しつつ、時代の変化やニーズなどに合わせて再設定されるものという点で違いを見出すことができます。

良い経営理念と良くない経営理念とは

経営理念を活用するためには明文化するだけでなく、社内外の人に共感してもらいながら、広く浸透させる必要があります。良い経営理念・良くない経営理念は「社内外の人に浸透できるか」といった観点でも判断が可能です。

良い経営理念とは

経営理念を浸透させ、従業員を成長させたり会社の業績をあげたりする場合には経営理念が良いものである必要があります。良い経営理念の条件には次のようなものが挙げられます。

  • 中身がしっかりしていること
  • 自社の状況に適合していること
  • 成長性を示唆していること
  • わかりやすいものであること
  • 理念から戦略のヒントがあること
  • 一貫性が保たれていること
  • 社会貢献するものであること

良くない経営理念とは

抽象的な経営理念など、見る人によって解釈が異なってしまうなどの場合には、経営理念の浸透は非常に難しく、良くない経営理念であると考えられます。理念に掲げていることと実際の行動が乖離している場合にも、共感を得ることが難しくなります。例えば「お客様第一」と経営理念を掲げているにもかかわらず、実際は自分の会社の都合ばかり考えて営業しているというような場合、従業員からの信頼を失ったり、クライアントからの不信感をもたれてしまったりするかもしれません。

  • 抽象的である
  • 理念と実際に運営に乖離が見られる
  • 売上や利益を上げることを経営理念にしてしまう

スティーブ・ジョブズの「お金が目的で会社をはじめて成功させた人をみたことがない」という言葉や、世界を代表する経営コンサルトの稲盛和夫氏による「経営の目的は全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献することである」という言葉からもわかるように、利益を得ることを経営理念にするのは良くありません。

社会貢献をすること、従業員を幸せにすること、といった事項を経営理念にし、結果として業績や利益の向上に繋がっていくのです。

経営理念を活用するメリットについて

経営理念を活用するメリットとしては以下のような事項が挙げられます。

自社の向かう方向性をはっきりさせる

経営理念を設定することで、所属する従業員の判断基準となります。企業が向かう方向性や、業務を行う上での判断基準になりうるのが経営理念です。

経営者や管理者だけではなく、現場の社員などすべての従業員が同じ方向に向かって進み、同じ判断基準で行動することができるようになるため、パフォーマンスの最大化にも繋がります。

従業員の意識、価値観などが統一されることで一体感が生じる

経営理念が浸透することで、存在意義(ミッション)、将来像(ビジョン)、判断基準・行動指針(ウェイ)、価値観(バリュー)などを共有することができます。

従業員の意識や価値観・判断基準などが統一・共有されることから、従業員同士で一体感が生まれまれ、結果として従業員のモチベーションも向上します。

自社に適した人材を採用することができる

経営理念を公開することで、その経営理念に賛同する同じ価値観の人材を集めることが可能となります。どんなに能力の高い優れた人材でも、自社の価値観や考えに賛同できないとモチベーションの低下や離職につながってしまいます。

自社に適した人材を採用し育てていくためには経営理念はとても重要です。

自社の存在意義を公言することで、企業の認知度を高めることができる

作成した企業理念を上手に活用することで、企業の認知度を飛躍的に高めることもできます。

大きく成長していく企業は、自らの「存在意義」が社内外に広まっています。経営理念をおおくの人達と共有し分かち合えるような企業は、社会貢献している企業として発展していくのです。

経営理念を活用するデメリットについて

良くない経営理念を掲げてしまうと、経営理念を活用しようとすること自体がデメリットになってしまう場合があります。

従業員の価値観がバラバラになる

経営理念を定めていない場合だけでなく浸透できない場合は、従業員の価値観や行動指針がバラバラになってしまいます。方向性が一つに定まっていない企業は、業績も伸びまえんし従業員のモチベーション低下にも繋がります。

強い企業づくりには経営理念は欠かせないものです。

経営者の思いを言葉にする作業は簡単ではない

経営理念を作ろうと思っても、実際に言葉にしていく作業というのは容易ではありません。会社全体の方向性や価値観を決めるものですので、設定するまでに時間を要します。

リラックスできる雰囲気の中で、自分自身を振り返り理念や思いを問いかけながら作成していきましょう。

経営理念における課題

経営理念は掲げていても、従業員間に浸透していなければ意味がありません。ただ「知っている」というレベルではなく社内における日常生活の行動レベルまで落とし込むために継続的な取り組みが必要になります。

海外へ事業展開している企業においては、価値観など考え方が異なる海外の従業員にも経営理念を理解してもらい浸透させていかなければいけません。

浸透させることで意味を成す経営理念

経営理念がない企業も未だ存在してはいますが、経営理念と売上には相関関係があると考えられ、企業活動における重要性も非常に高いと言えます。

経営理念を掲げさえすれば、売上が上がるなどと言った単純な話でなく、経営理念を従業員に浸透させることが重要です。その上で外部に向けて公表していくことが重要です。

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