スキルマップとは?人材の能力を見える化しよう!
現在、多くの企業が人材不足に悩まされています。リーマンショック以降、求人倍率は増加の一途を辿り、今では求職者数よりも求人件数の方が多くなっています。企業間の人材獲得競争が激化し、事業規模を縮小せざるをえない企業も増えています。
労働政策研究・研修機構の『人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査結果』によると「現在どのようなことが経営上の課題となっているか」という質問に対して、1位が「人手が足りない」、2位が「必要な技術・技能を持った人が足りない」、3位が「営業力・販売促進ノウハウの不足」という結果が出ています。
出典元『労働政策研究・研修機構』人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査結果
2位と3位の技術やノウハウの不足という回答は、どちらも人材不足が原因で生じている課題とも考えられます。人材不足は単に労働力不足だけでなく、人材育成にも悪影響を及ぼしている可能性を示唆しているのです。
帝国データバンクの調査によると、企業の人手不足はここ10年ほどの間で加速度的に進み、2018年頃から正社員不足を感じている企業が過半数を超えていることが分かります。
出典元『帝国データバンク』人手不足に対する企業の動向調査(2019年1月)
人手不足による売り手市場が続く中で、経験や技術が豊富な人材は引く手あまたなため、自社特有の強みや転職者のステップアップに繋がる要素がなければ、優秀な人材の獲得は非常に困難です。
外部からの人材獲得が難しい環境では、自社の「スキルマップ制作」が重要になります。スキルマップを制作すれば、在籍中の社員たちがそれぞれ何が得意で何が苦手かを可視化でき、最適な人材配置や人材育成を行えるようになります。
今回の記事では、スキルマップの意味や目的、メリット・デメリットについてご紹介します。
スキルマップとは?意味や目的、メリット・デメリットとは?
スキルマップについてご紹介する前に、そもそも会社経営における「スキル」とは何かを具体的に定義しておきます。
会社経営における「スキル」が「仕事を行う能力」を意味するのはもちろんですが、仕事には業界・業種・業務など様々な分類要素があるため、普遍的で分かりやすい基準としては「資格」が一つの例となるでしょう。
資格とは、運転免許や弁護士資格など、専門的な技術・知識を所持していることを公的に認められた証であることから、スキルとは「専門的な業務を行える能力」と言い換えることができます。
当記事における「スキル」という言葉は「専門的な業務を行える能力」を意味すると定義したところで、改めてスキルマップについてご紹介していきます。
スキルマップの意味と目的とは?
スキルマップとは、在籍中の社員それぞれのスキルを可視化した、人材の能力表です。
スキルマップは「目に見えないスキルの有無が可視化される」ことが特徴です。どのような業務が得意・不得意なのかが読み取れるだけでなく、教育研修の計画を立てる上での習得すべきスキルの明確化、スキルの有無による人材評価の公平性を担保するなど、採用だけでなく人材育成や人事評価にも活用できます。
スキルマップに定形はありませんが、以下のようなフォーマットで使われます。
スキルマップは、従業員とスキルからなる表であり、社員ひとりひとりのスキルの習熟度や有無を記入します。スキルセットが同一になりやすい、営業部などの同一部署や同一チームごとに作られることが多いです。
会社全体で必要なスキルがあれば、会社全体でスキルマップを作ることも有効です。また管理職に求められるマネジメントスキルやリーダーシップなど、役職などの階層ごとにスキルマップを作る方法もあります。
スキルマップのメリットとは?
スキルマップのメリットは、単に組織内のスキルが可視化できるだけではありません。可視化した後に、採用や人材育成業務に活用できることがメリットです。
組織内人材のスキルが可視化されることで、自社全体を通して不足しているスキルが一目で分かり、強化しなければならないスキルに注力できるため、効果的な人材育成ができるメリットがあります。不足しているスキルを持つ人材を育成できれば、生産性の向上はもちろん、重要なスキルを持つ人が休職・退職して仕事が回らなくなるなどの事態を防ぐ、リスクマネジメントとしてのメリットも生まれます。
スキルマップを社員に公開すれば、社員が自身のスキルを客観的に把握できるメリットもあります。社員が自身のスキルを把握することで、社員同士の健全な競争関係や明確な成長目標が生まれ、社員のモチベーションアップにつながります。
人事評価制度への活用方法として、どのスキルを向上させる・身につけたら昇格・昇進できるのかを可視化する方法もあります。多くの労働者が、自社の人事評価制度への「客観性がない」「公平性がない」と不満を持っているため、目標が明確になることで、客観性・公平性を担保した人事評価制度を運用することができます。
スキルマップのデメリットとは?
スキルマップは、使い方を誤るとデメリットが発生する可能性があるため、注意が必要です。
スキルマップのデメリットとして挙げられるのは、評価項目となるスキルの設定に手間と時間がかかる点です。スキルは資格により分かりやすく定義されたものだけでなく、自社独自の業務やビジネスマナーなどの数値化が難しいものもあるため、評価項目の数や評価基準の設定にはある程度の手間と時間を要します。
スキルマップを社員に公開する場合は、スキルの評価基準を公平かつ明確にしておかなければならないことに注意が必要です。マネジメントスキルの有無など、人によって評価が変わるような基準では、評価される側に理不尽さを感じさせ、社員のモチベーションの低下につながる危険があります。誰もが客観的に判断できる基準を設けることが、公平性を保つために必要です。マネジメントスキルなどの抽象的な概念については、課題分析力、課題解決力などのスキルを細分化することで、自社で計測できるスキルまで分解していくことが大切です。
スキルマップを人事業務に活用する方法とは?
スキルマップは、人事業務では主に組織体制の分析材料として重宝します。
スキルマップは、可視化されたスキルの習熟度合いを見ることで、教育研修が当初の目的通り機能しているかの確認に利用できます。
スキルマップは人材育成の参考にできるだけでなく、人材採用において自社の求める人物像を明確化する際にも役立ちます。中途採用において、自社が最も必要(大切)とするスキルは何か、どの程度身につけているのかが明確になることで、採用選考での見極め方(面接で質問をする、グループワークを実施する)にも客観性・公平性が生まれ、入社する人材の質を向上させることができます。
スキルマップは様々な人事業務に活用できる!
スキルマップとは、在籍中の社員それぞれのスキルを可視化した、人材の能力表です。
スキルマップは、社員一人ひとりのスキルの習熟度を数字として表すことで、組織全体としての技術的な強みと弱みを可視化できます。スキルマップは作成するためにある程度の手間と時間がかかりますが、教育研修だけでなく人事評価やマネジメント、人材採用などの様々な人事業務に活用できます。
外部からの人材獲得が難しい現在の労働力不足を生き抜くためには、在籍中の社員たちがそれぞれ何が得意で何が苦手かを可視化し、最適な人材配置や人材育成を行えるようになるスキルマップが有効な一手になるでしょう。