ポータブルスキル(持ち出し可能な能力)とは?適応能力を見極める

会社への適応能力を示す「ポータブルスキル」

退職にともなう欠員補充や、新規事業を立ち上げるにあたっての増員、会社の若返り、教育制度の強化など、多種多様な課題の解決として採用は大切なお仕事です。特に中途採用になると求職者のバックグラウンドは十人十色で、それぞれ固有のキャリアを歩んでいます。

「どんな人材を採用すべきか」ということでお悩みの人事採用担当者はたくさんいらっしゃいますが、採用にあたって評価項目を明確化することが重要です。企業ごとにさまざまな評価基準があるなか、一般的な方法として求職者のスペック・スキルを「テクニカルスキル」「ポータブルスキル」「スタンス」の3つに分けるというものがあります。

スキルピラミッド
出典元『DIAMOND online』自己PR&志望動機が書けない就活生必読!採用の神さまが教える「自分の強み」と「やりたいこと」の見つけ方

「スタンス」は企業と価値観を共有できるかという点の精査で役にたち、「テクニカルスキル」は専門性の高さを見るもので、特に中途採用で重要な項目として挙げられます。

厚生労働省は「ポータブルスキル(持ち出し可能能力)」というものを提唱しています。ポータブルスキルが具体的にどのようなスキルなのかを説明いたします。

「ポータブルスキル」とは

厚生労働省によると、「ポータブルスキル」とは「業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能な能力」と定義されています。特定の企業だけで有効なノウハウでない、どんな仕事を行う場合でも重要な能力を意味します。

特定領域における専門性だけでなく、「仕事のしかた」や「人との関わり方」といった職場環境への適応力や業務を円滑に行う上でのホスピタリティに注目しているというのが、「ポータブルスキル」の大切なポイントです。

ポータブルスキルは、ホワイトカラーのミドル層(35歳〜55歳)の労働移動の円滑化を目的として厚生労働省が定義しています。ミドル層は、スペシャリストとしての活躍だけでなく、職場環境の改善や若手教育といった能力も期待されています。ミドル層の採用は、職場に新しい風を吹かせる存在となります。「ポータブルスキル」を見極めることで、職場への適応能力やマネジメントスキルの程度を見抜くことができます。

ポータブルスキルはミドル層以外にとっても重要な概念と言えます。特にミドル層の手前(35歳未満)であっても、将来的に必要とされるスキルであるため、研修や教育、評価制度などを用いて伸ばすスキルとしても適切です。特に流行の変化やグローバル化などで、市場の激しい変化についていくためには、専門分野に特化したスキルだけでなく、変化に対して柔軟に適応できるポータブルスキルが重要になります。

ポータブルスキルにはどんな項目があるのか

「ポータブルスキル」は専門知識・技術だけでなくホスピタリティにも焦点を当てたスキルで、大きく分けて「仕事のしかた」と「人との関わり方」の2つがあります。

それぞれに具体的にどんな項目があるのかを見てみましょう。
(各スキルの詳細は「ポータブルスキルの種類や一覧とは?採用選考で見極めよう!」にて説明いたします。当記事では概要をお伝えします。)

仕事のしかた

  • 課題を明らかにする
  • 計画を立てる
  • 実行する

「仕事のしかた」はいわゆる「PDCAサイクル」をきちんと回してプロジェクトを完遂することができるか、というスキルに該当します。

人との関わり方

  • 社内適応力
  • 社外適応力
  • 部下マネジメント

「人との関わり方」はコミュニケーションや教育に関するスキルです。

会社での仕事はあらゆる場面でチームワークが必要とされ、チーム全員が気持ちよく働ける環境ならば生産性も向上し、若手社員にも自発的な成長を促すことができます。また、クライアントや共同開発先、販売代理店などの社外の方とも良い関係性をつくることも立派な「スキル」です。

つまり自分だけでなく、周囲にも良い影響をもたらす振る舞いができるかという「あたりまえ」をスキルとして見直した「社会人基礎力」に該当します。

ポータブルスキルを重視した採用のメリット・デメリットとは

「ポータブルスキル」を採用基準として盛り込んだ際にはどんなメリットがあるのでしょうか。

最も重要なメリットが「業務経験や職歴などを活かして自社でも活躍できるのかという可能性を探れる」ということです。

採用の現場、特に中途採用となると「テクニカルスキル(専門性)」が重視される傾向にあります。しかし、採用の難しさは「専門性の高い人材が必ずしも良い人材であるとは限らない」という点にあります。

求人募集は企業がそれぞれに抱える課題を解決するための方法のひとつであり、「専門性の高い人材をひとり採用することで、他の社員の成長や職場改善を促したい」と考える人事採用担当者も多くいらっしゃいます。そうした意図があるケースでは、求職者のビジョンとポータブルスキルを重視することで、どんなポジションとして採用するかなど、要件を具体化した求人募集が可能になります。

ポータブルスキルを基準として「社内でどのようなポジションを用意するか」を具体化することで、前職の専門性にとらわれない幅広い採用ができ、そして採用後のミスマッチも防げるという事例もあります。

デメリットとして挙げられるのが「ポータブルスキルは履歴書や職務経歴書に記述できるスキルではない」ということです。求職者のポータブルスキルを把握するためには、面接官のヒアリングスキルが求められ、時間や人的コストが必要になります。

採用では「現状のスキル」だけでなく「将来性」も大切

ポータブルスキルとは、日本語で「持ち出し可能能力」とも言われ、「他社へ行っても通用する能力」のことです。専門性以外にも業務上のホスピタリティも含んでいます。そしてこの能力は高い専門性を持つ35歳〜55歳のミドル層を採用する際に特に重要で、ポータブルスキルが高いほど専門スキルの輸入や若手教育などの効果も大きくなることが期待されます。

もちろん、34歳以下の若手人材の採用においてもポータブルスキルは重要です。しかし、会社への影響力という意味では経験豊かなミドル層に比べると重要度はやや低いと言えます。採用ではスキルの有無よりも伸びしろを確認し、教育研修や評価制度に活用すべきでしょう。

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