組織風土改革の成功事例・失敗事例とは?成功・失敗要因を探る

組織風土改革の成功のカギとは

組織風土の改革には、必ず明確な目的が必要です。「業績を上げる」「離職率を下げる」など企業ごとに課題は様々ありますが、成功させるためには、ぶれない目的が必要です。

組織風土の改革は容易にはいきません。組織風土が自然発生し、外部からの影響を受けにくいため、組織風土を変えるのは時間も労力も非常にかかります。

施策として「業績を上げる」「離職率を下げる」ではなく、組織風土を改革する理由として「根本となる問題を解決したい」ことが挙げられます。単なる施策では改善できないほど「根付いてしまった問題」を解決するために、組織風土の改革が検討されます。

組織風土の改革を行おうと、多くの企業が試みをしています。成功した企業はもちろんながら、失敗してしまった企業も多くあります。

組織風土の改革の企業事例から、成功する要因や失敗する要因を、過去の事例から読み取っていきます。

組織風土改革の成功事例

従業員数の多い会社ほど、組織風土改革が難しくなります。今回は従業員数が多い企業に絞って、組織風土改革に成功した事例を紹介します。

オリンパス株式会社の事例

施策の目的は、株主ら支援者からの信頼回復です。損失計上先送りによる負債の粉飾決算によって、株価が急落し、特設注意市場銘柄として、上場廃止の可能性もあった2011年の出来事がありました。

施策の内容として、コーポレートガバナンスの強化、内部統制システムの整備、コンプライアンスの徹底にむけた内部通報制度などが挙げられます。

成功した要因として、そもそもこの事件が「ごく一部の人間しか知らず、従業員全てが知っていた」わけでないこと、「新しい経営陣が積極的に変化を生み出し、従業員も共通意識をもって、一体となって組織風土改革に取り組んだこと」が挙げられます。

1919年創業の古い企業であるため、従業員も会社に愛着があり、この現状を何とかしたいと本気で考えて取り組んだことが最も大きな要因でしょう。

テルモ株式会社の事例

施策の目的は、5つの壁を前に行き詰ったことです。「①売上1000億円の壁」「②製品開発の壁」「③財務の壁」「④海外展開の壁」「⑤企業体質の壁」のうち、「⑤企業体質の壁(組織風土)」を解決しない限りは前に進めないとの判断です。

施策の内容として、社員を「アソシエイト」と呼び主体性を求める、信賞必罰、異分野を知る、個人からチーム力へ、経営幹部のアンケートを社内に公開などが挙げられます。

1995年から取り組みをはじめ、2017年3月期の売上は5,142億円、海外での生産拠点を22もつ、壁を越えたことが数字からも分かります。
(参考URL:http://www.terumo.co.jp/company/about/profile.html

成功した要因として「経営幹部全員が変わったことが従業員にも伝わった」ことが挙げられます。「一人一人が自発的にチャレンジする仕組み」を整え、浸透していったことで、従業員一人一人が主体性をもって行動するようになりました。施策を行ってから20年たった今でも、改革をし続けています。

富士ゼロックス株式会社の事例

施策の目的は、「強い会社」にしていくためです。1992年に当時の小林陽太郎会長が打ち出した「よい会社」の構想の一つ「やさしい」が、本来意図していた「環境への配慮や地域貢献」から「社員に対してやさしい」と解釈されていたことが挙げられます。そのために「変化と成長に挑む社員」を増やそうと考えました。

施策の内容は、雇用労働環境の改善、多様性の需要、ワークライフバランスの実現、Virtual Hollywood® Platform(バーチャルハリウッド・プラットフォーム)』という企業風土変革プログラムが挙げられます。

成功した要因として、昇進や給与などの仕組みづくりを行ったことが挙げられます。富士ゼロックスでの課長への平均昇進年齢は45歳と高く、もっと早くしたいという思いから「降格ありの任用レビュー制度」や「業績(役割)に応じた給与制度」による年功序列制度からの脱却、「後進育成制度」による57歳でポジションから外れることによる管理職枠の拡大など、「やればやっただけ評価させる」ことが上司・部下含め、従業員全体に浸透したことが挙げられます。

シャープ株式会社の事例

施策の目的は、経営再建のために課題となった風通しの悪さの改善です。トップダウンの雰囲気が蔓延しボトムアップの提案がしづらいこと、部門間にコミュニケーションが行いにくい環境であったこと、縦階層が多く、経営陣と社員や管理職と若手社員などのコミュニケーションが行われにくい環境を改善することにあります。

施策の内容として、社内SNSの導入が挙げられます。利用するルールにも注意し、ルールが厳しすぎると書き込みがなくなり使われなくなるため、ルールを緩くすることを基本的な考えとしています。業務時間外であれば、趣味などの業務外のことも書き込んでよい、ようなルールです。

成功した要因としては、経営幹部との距離が近くなったこと、趣味の話題から部門間のコミュニケーションが生まれたことが挙げられます。経営幹部自信が、堅苦しい文章でなく、ざっくばらんに書き込んでいることで、それを読んだ社員が、経営幹部をより身近に感じられたとの効果があります。

また、SNS上で共通の趣味の話題を行うことで、今まで接することのなかった他部門の人材とのコミュニケーションが生まれています。社内SNSへの参加は自由参加ではあるものの、毎月登録者数が増え続けていることが、成功していることを裏付けていることでもあります。

日本航空株式会社の事例

施策の目的は、リーマンショックに耐えられなかった脆弱な企業体質を変えることです。以前は大型航空機の需要がありましたが、様々な地方空港が建設され、需要が変化していくことに対応できていなかったり、労働組合が複数存在するなどから、企業再生支援のもと、経営破綻後に再生の道を歩くこととなっています。

施策の内容として、経営陣の一新、意識改革推進準備室の設置、経営理念の変更、基本教育研修体系である「モチベーション&コミュニケーション研修」の実施などが挙げられます。

成功の要因として、一新された経営陣が過去の企業体質に切り込んでいったこと、研修によって自己効力感を高め、社員全員が共通の意識をもって働けるようになったことが挙げられます。今まで労働組合の影響からできなかったリストラや給与の削減だったが、支援機構からの交渉力や、組合も自社の将来に不安を抱いていたことから実現しました。

特に「お客様が絶対である」という教えを従業員も理解はしていたが、会社として「社員が幸せにいきいき働けないのに、お客様を幸せにすることはできない」と、物心両面の幸福を追求する経営理念を掲げ、それに対する行動を行ったことが非常に大きいです。

組織風土改革の失敗事例

続いては失敗例についてですが、まずはいろいろな企業で失敗してしまう事柄についてご紹介したいと思います。

目的が見えない組織風土改革

施策の目的は「社内コミュニケーションの活性化」することです。

施策内容としては、運動会や飲み会の開催、社内表彰イベントの開催などが挙げられます。

失敗した要因としては「何のための施策なのかが伝わらなかった」ことが挙げられます。仮に目的を伝えたとしても、従業員一人一人が共感していなければ意味がありません。「楽しいイベントが増えた」といった一時的な盛り上がりや、「強制だから、いやいや参加する」などであれば、コミュニケーションの活性化はもちろんのこと、業績向上などにもつながりません。

成功させるためには、「どんな企業にしたいのか」といった目的や理念と従業員と共有し、従業員一人一人の思いに向き合う必要があります。「社内イベント」をやるだけでは、従業員一人一人に真の目的は伝わりません。

主体性を失う施策

施策の目的は「長時間労働の是正」や「ワークバランスの調和」です。

施策の内容としては、定時日を設定して強制的に残業をさせない、仕事が定時内に終わるように業務遂行の管理をするなどが挙げられます。

失敗した要因としては、これらの施策は「社員の自立」を阻害し、自分の意思で考えて行動する能力を弱めていることです。そのため組織風土の悪化に繋がります。一方的な強制でなく、自らが主体的に行動し、仕事もプライベートも充実させることが重要です。長時間労働を改善したい場合は、そもそもの業務量の見直しはもちろんのこと、仕事の進め方についてアドバイスをするなどが良いでしょう。

従業員にもメリットのある活動にしなければいけない

施策の目的は「従業員にチャレンジ意識を持ってもらう」ことです。

施策の内容としては、「チャレンジ」や「挑戦」などを組み込んだ経営方針の変更です。

失敗した要因としては、掲げた方針と実際の組織が乖離していたことが挙げられます。方針や戦略が浸透していない状態で組織風土改革を推し進めようとしたため、社員に浸透しませんでした。上司に「前例がない」などとせっかく提案しても否定されてしまうため、そもそもアイディアなどの提案をしても無駄であるとなってしまい、考えることをしなくなります。またはアイディアを提案して検討してくれる・受け入れてくれる会社を求めて退職してしまうことも起こりました。

大手自動車工業の事例

施策の目的は、リコール隠し事件などによって失った消費者の信頼を取り戻すためです。

施策内容としては、外部有識者による「企業論理委員会」の設置でした。

失敗した要因として、上層部が変わらなかったことが挙げられます。元々上層部の高圧的な言動により、従業員が意見できない風土が醸成されており、人事も硬直化していて適材適所が実現していませんでした。また、閉鎖的な社会の中で仕事が行われ、ルールを知らない上層部が現場任せにしており、責任の所在が不明確になったため、信賞必罰が徹底できていませんでした。上層部が変わらなかったため、企業論理委員会設置後も、組織の閉鎖性や責任の所在の曖昧さを生み出す体質が変わりませんでした。

製造業の事例

施策の目的は、加点主義によって失敗や損失に対して寛大すぎて、収益を圧迫してしまったことを是正することです。

施策内容としては、人事制度を「会社に対する損失」や「社内に対する悪影響」に厳しい減点主義体制に変更したことです。

失敗した要因として、成功に対する評価が非常に低かったことが挙げられます。新商品を企画して製品化されたとしても評価されなくなってしまったため「自分の足元にある業務だけに専念すればよい」という意識に変わってしまいました。甘くなっていた無駄に対する意識が変わったため、短期的には営業収益が改善されましたが、中長期的に成長し売上拡大を目指す組織風土にはなりませんでした。減点だけでなく「失敗を恐れない」加点も等しくすることが改善要因として挙げられます。

成功した要因に共通するもの、失敗した要因に共通するもの

組織風土の改革に成功する要因・失敗する要因には、次のような共通点があります。

  • 経営者、管理者の改革に対する本気度が感じられるか感じられないか
  • 上層部からの一方的な押し付けや強要ではなく従業員が自ら変わっていくやり方が必要
  • 短期的な結果だけを求めるのではなく、粘り強く継続的に取り組むことが成功のカギ
  • 改革の際はハード要素とソフト要素をバランスよく行うことが大切
  • 組織風土を変革することが最終目的だと思っていると成功しない

組織風土の改革を成功させるために

組織風土の改革を成功させるためには、多くの時間と労力がかかります。また、経営層の本気度が従業員に伝わるか、改革をすることが目的ではなく、改革は問題解決の手段であることを間違えないなど、注意点も多くあります。成功要因を含めたから必ず成功するわけでも、失敗要因があるから必ず失敗するわけでもありません。改善には長期的な視線でとらえ、必要であれば都度方向修正を行うことが大切です。

組織風土の改革では、どんな問題を解決したいのかを明確にして、経営層も含めた全従業員が一体となって改革に取り組むことが必要です。そのための手助けとして、仕組み化などの施策を利用するようにしましょう。

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