組織風土を分析すると?組織風土と業績は事業戦略との整合性がカギ!

組織風土の分析データから見えることとは?

組織風土そのものが抽象的な概念です。自然発生し、外部からの影響を受けにくいため、ほとんどの企業で組織風土はあるものの、組織風土を有効に活用しようと思うと、具体的にどうすべきか分からないという悩みに直面します。

経営層が「組織風土はこうあるべき」という理想を掲げたとしても、主観に依存した理想像だった場合は、業績のアップなどに繋がらないばかりか、既存社員とのミスマッチを生んでしまい、離職につながってしまう可能性すらあります。

いくら組織風土を変えようと思っても、目指すべき理想の姿が正しいものでなければ意味がありません。その上で、既存社員とのミスマッチを生まないように、長い目で見た、徐々に変化・浸透させていく姿勢が必要です。

今回は「どのような組織風土が理想像と言えるのか」を、業績での観点から説明します。もちろん離職・定着の観点からだと異なった姿が理想像になる可能性が高いですので、「組織風土を改善するのであれば、どのような目的を持っているのか」を明確にして、参考程度にご覧ください。

組織風土と業績の関係性に関する調査

リクルートが、組織風土に応じた業績を高める組織マネジメント施策の調査を行っています。この論文では、組織風土とマネジメント施策や特徴が、どのように業績に影響を与える可能性があるのか、どのような組み合わせが良いのかについて記載されています。この論文の内容を要約する形で、組織風土と業績の関係性を探ってみたいと思います。

参考URL:組織風土に応じた業績を高める組織マネジメント施策とは

1.組織風土や企業の強みを12尺度で測定

リクルートが152社に行なったアンケートに基づいて分析したものです。

各企業の従業員に対し、160のキーワードについて、その特徴が自社に当てはまるかどうかのチェックをしてもらいました。例えば「ポジティブな」「堅実な」「保守的な」などといったキーワードや形容詞・フレーズなどです。

これらのキーワードの特徴を基にして、12尺度で組織風土や企業の強みを分析しています。

2.組織風土を4タイプに分類

各企業における12尺度の得点を用いてクラスタリング(分類)したところ、5つの組織風土が出来上がりました。しかし、うち1つはすべての尺度における得点が低い(際立った特徴がない)ことから、得点が低い分類を除外した4つの組織風土が用いられています。

  1. パイオニア風土
    …風通しがよく、型にはまらない創造的な組織風土
  2. チャレンジャー風土
    …スピード感があり、競争的な組織風土
  3. オフィサー風土
    …堅実さと真面目さを兼ね備えた組織風土
  4. コーディネーター風土
    …なごやかな組織風土

パイオニア風土の特徴

開放的でコミュニケーション力があり、ポジティブな気持ちで変化を生み出していく風土です。意思や理想をもち、情熱的に新たな市場を開拓していくイメージの風土です。環境の変化に対する柔軟性が高い一方で、堅実に課題をすすめる特徴は弱いものでした。

特徴的なワード:「熱い」「情熱的な」「思い切りのよい」「ポジティブな」「エネルギッシュな」「モチベーションの高い」「スピード感にあふれる」

チャレンジャー風土

厳しい競争環境のなかで互いに切磋琢磨しながら、環境の変化に合わせスピーディーに決断していく傾向がみられる風土です。競争に挑み、より高い目標をハングリーに追い求めていくことができる一方で、協調や親和性が弱いという特徴がありました。

パイオニア風土と同じく、着実に課題をすすめる力が弱いところから、確実に物事を進めるよりも目標に向かってひたすらに努力する風土だといえます。

特徴的なワード:「熱い」「情熱的な」「決断の速い」「攻める」「エネルギッシュな」「がむしゃらな」「刺激しあう」「ハードな」

オフィサー風土

どの特徴もバランスよく一定レベルを有しているのがオフィサー風土です。まじめで誠実さがあり、物事の筋道を大切にしながら堅実に課題に取り組みます。社会のルールに従いつつ事業を進めていくようなイメージがあります。安定感がある一方で、事業のスピード感や変革性はあまり感じられません。

特徴的なワード:「石橋を叩いて渡る」「用意周到な」「堅実な」「真面目な」「論理的な」「秩序だった」「懐が深い」

コーディネーター風土

温かくアットホームな雰囲気のなかで、現状を維持していこうとする風土です。お互いを尊重しながら仕事を進めていく家族的なイメージがあります。組織の調和を大事にする気持ちがつよいため、競争や変化に対して柔軟に対応することができず、ゆったりとしている風土です。

特徴的なワード:「寛容な」「のんびりとした」「あたたかい」「やさしい」「フランクな」「居心地のいい」「和気あいあいとした」「なごやかな」「保守的な」

3.各タイプに応じた業績との関係

成長性が最も高かったのが「チャレンジャー風土」、収益性が最も高かったのは「パイオニア風土」となりました。逆に成長性も収益性も最も低いとされたのが「コーディネーター風土」となりました。

パイオニア風土

市場において業界のリーダー的な企業が多く、成長性、収益性とも高い水準を維持している企業が多くあります。オープンなコミュニケーションで自由と個性を尊重する、市場の変化に柔軟な対応ができる特徴がありますが、「着実に課題を進める」特徴が弱いため、ルーチンワークのような、安定した業務は他の風土と比べて苦手であると言えます。

チャレンジャー風土

市場のシェアを伸ばしていこうとする積極的な姿勢が見られました。比較的若い企業が多く、成長性は4タイプのなかで一番高かったのですが、収益性については年度ごとの変動が大きく、平均するとパイオニア風土よりも若干劣る結果となりました。

オフィサー風土

歴史のある業界でのトップ企業が多くみられました。パイオニア風土と比べると率としてはやや低めですが、安定した成長性、収益性を示していました。

コーディネーター風土

歴史のある、業界における2番手3番手の企業が多く、成長性、収益性ともに他のタイプと比べて低い水準にありました。

4.調査の結論

分析結果では4つに分類した組織風土ごとに、収益性や成長性など業績にも違いがあることがわかりました。しかし「組織風土」自体には優劣はなく、「組織風土と事業戦略との整合性」が重要であると述べられています。

業績の収益性・成長性だけを見れば「パイオニア風土」が最も良い、となりますが「オープンなコミュニケーション」な「柔軟な変化」が求められるため、従業員はもちろんのこと、経営者も意識の変革が必要になります。

工場などの「他社の製品となる部品を納品するメーカー」などであれば「パイオニア風土」は逆に適さないでしょう。マニュアル化された業務を好む「オフィサー風土」や「コーディネーター風土」等の方が適していると考えられます。そのため、自社の業界に応じて「どの組織風土が適しているべきか」を考える必要もあります。

この論文の目的である「組織風土に応じたマネジメント施策」についても合う・合わないがあると説明されています。堅実で手堅く合理的な組織風土において求められるのは「評価の納得性」であり「個人の希望を重視した人事異動」は業績向上にはつながらないとされています。

企業がよかれと思って導入した施策や、他社で成功した施策を転用した場合でも必ず成功するとは限らないわけです。新たな施策を導入する際には自社の組織風土を把握して、適した施策を行うことが重要だと言えます。

組織風土を改善する前に、事業戦略との整合性や施策の見直しを

「組織風土」によって業績との関係があると分かりましたが、重要なのは「組織風土と事業戦略との整合性」と「組織風土に合った施策を行っているかどうか」です。

良かれと思って導入した、他社が成功した施策だから、と施策を行っても「自社の組織風土と施策」が合わなければ業績の向上にはつながりません。その場合は「自社の組織風土と合う」施策を行う必要があります。

自社の組織風土を分析すれば「業績を改善する施策を見直すべきなのか」「組織風土を改善すべき」なのかが見えてきます。組織風土の改善は非常に時間も労力もかかるため、実施している施策が自社の組織風土に合っているのか、合った施策で実施していないものは他にないのかを検討する方が低コストとも言えます。

自社がどんな組織風土のある会社なのか、目標とする事業戦略や経営戦略と実際の組織風土がちぐはぐになっていないか、などを測る上で、自社の組織風土を分析することは非常に有用です。

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