採用マーケティングの手法とは?採用プロセスごとの改善方法について

注目を集めている採用マーケティング

人材の採用において売り手市場がますます激しくなっていくことにより優秀な人材の獲得が難しくなりつつある近年、従来の採用手法にマーケティングの視点を取り入れた採用マーケティングが注目され始めています。

帝国データバンクの調査によると、正社員が不足していると感じている企業の割合は増加傾向にあり、2018年1月時点で過半数の企業が正社員が足りないと実感しているとのことです。少子化に伴う労働力減少により、この傾向は今後もしばらく続くと予想されます。

従業員の過不足感
出典元『帝国データバンク』特別企画 : 人手不足に対する企業の動向調査(2018 年 1 月)

しかし、中途採用バブルは収束の気配を見せ始めており、社内でしか通用しないスキルだけで中途採用で採りたい人が育っていないために、数から質にシフトしているとリクナビNEXT編集長の藤井薫氏は指摘しています。

参考URL『日本経済新聞』「採りたい人がいない」人手不足・新次元(ルポ迫真)

採用マーケティングでは、自社の求める人材を定義して採用選考で見極める従来の採用手法に加え、労働市場や自社の分析を行うことで、求める人材を採用するためにどのようにアプローチしたら効率的なのか、具体的にどのようにアプローチをかけるべきかを明確にして実践するアプローチとなります。従来の手法よりもターゲットやアプローチ方法がより明確になるため、量よりも質を重視した採用手法とも言えます。

労働市場や自社の強み・弱みを知っていることで、入社前・入社後のミスマッチを防ぐ効果も期待できます。採用マーケティングを進めていく上で、採用担当者が考える現場と実際の現場の認識のズレが解消されるためです。

本記事では、採用マーケティングについての理解を深めていただくために、実際の採用プロセスをたどりながら、実際にどんなデータが使われているのか、集めたデータに対してどのような分析が行われているのかについて概説していきます。

採用マーケティングの採用プロセスとは?

採用マーケティングでは、戦略的な設計と継続的な改善が求められます。採用マーケティングにおける採用プロセスごとに、ポイントを確認しましょう。

  1. 求める人物像の明確化
  2. 自社の強みの明確化
  3. 母集団形成のためのコンテンツ作り
  4. 採用基準の明確化
  5. 振り返りと改善

求める人物像の明確化

採用マーケティングにおいて、一番最初にやるべきは、「求める人材の明確化」です。自社に対する深い理解が何よりもまず求められます。

自社の現状と将来的な企業活動の展望を踏まえ、必要なものを明確にしましょう。例えば業務の拡大や縮小の時期においては、人材の質だけでなく、量も考慮する必要があります。自社で業績をあげる人材を採用したいのであれば、既にいる社員のトップパフォーマーについてコンピテンシーなどを分析する、自社の価値観やスキルデータを使うなどして、採用対象となるターゲットの明確化に努めましょう。

採用選考において、面接官の感覚で合否を決めるのではなく、会社としてどういった人材を採用すべきなのかを、既にいる社員の特徴を元に要件をしっかりと定義していくことが重要です。

求める人物像の要件は、明確かつ具体的であればあるほどその後のプロセスが踏みやすくなるので、時間をかけ、丁寧に組み立てていきましょう。

自社の強みの明確化

求める人物像を明確化したあとは、「自社の強みやアピールポイントの明確化」しましょう。どんな会社にも強みや弱みがありますが、自社の魅力を訴えるにあたっては、強みにフォーカスすることが効果的です。

漠然と考えていくのではなく、マーケティング分野で使われるフレームワークで分析するといいでしょう。例えば、3C分析を行い競合他社と異なる強みを明確にする、4C分析で市場ニーズに合致しているかを調べるなど、ターゲットとなる人材に効果的に訴えうる自社の魅力を明確にしましょう。

母集団形成のためのコンテンツ作り

実際に採用プロセスを進めるにあたって採用候補者となる人材の母集団を形成するための「コンテンツ作り」を行います。「求める人物像」に「自社の魅力」を伝える方法を議論していきます。

理想的な母集団を形成するためにはどのような媒体を用いてどのような内容のコンテンツを作ればいいのか、デザインや構成にも気を配りましょう。どのような文言を用いれば魅力的に映るのか考慮しながら採用計画を立てていきます。視点が偏りがちであれば、第三者に見てもらうなどして、客観的に見て魅力のあるコンテンツに仕上げることが重要です。

営業に強みがあるが技術力に弱みがある、優秀な技術者を採用したいなどの場合には、優秀な技術者が営業に強みがある会社のことをどう考えるのかといった視点に切り替えて考えることも大切です。多くの案件があるため、技術開発や研究に専念できる環境であるなどのコンテンツ作りが一例となります。

設定したターゲットとなる人材は既にいる社員のトップパフォーマーと傾向が近くなるため、社員のトップパフォーマーの意見を取り入れるのも良いでしょう。

採用基準の明確化

実際の採用プロセスにおいて重要になってくるのが「採用基準の明確化」です。明確な採用基準を基に必要なプロセスを計算し、採用計画を組み立てていきましょう。

具体的かつ客観的に判断できる基準を定める、構造化面接などで全ての面接官の評価を統一するなどが求められます。

実際にほとんどの企業で議論されているものになりますが、「採用基準の明確化」に至るまで「求める人物像の明確化」「自社の強みの明確化」「母集団形成のためのコンテンツ作り」の過程をしっかりと踏むことで、どんな人材から応募があるのかが明確になります。全体の採用プロセスの中の重要な一部分として、議論し直すことが可能になるでしょう。

振り返りと改善

採用プロセスが一段落したら、結果を振り返り「次なる採用活動のための改善」が重要です。

採用プロセスの中で起こった問題点や、採用後のミスマッチなどを考慮に入れ、悪かったことの原因を明らかにして次回の採用活動に活かします。実際に入社した社員の活躍の有無も積極的かつ継続的にチェックしていきましょう。

採用マーケティングでは、市場である求職者たちの動向の変化に対し素早く対応していくことが非常に重要になってきます。継続的にニーズをリサーチし続けましょう。

採用マーケティングを取り入れてみよう!

採用マーケティングの具体的な手法は、その名の通り、マーケティング分野で使われている手法やフレームワークを人材採用の分野に応用させたものです。様々な観点から採用活動を見直す必要があり、少し大変に思われますが、他社に差を付け、必要な人材を効果的に採用するために非常に効果的な手法です。

マーケティングそのものについての深い理解は、採用マーケティングの効果をより高めます。自社にマーケティング部門がなくとも、一般的なフレームワークについては書籍なども数多く出ているので、興味のある方は是非採用マーケティングにチャレンジしてみてください。

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