M字カーブの変遷と国際比較における日本の現状と将来とは?

M字カーブ―緩やかに「台形」に近づく

女性が出産や育児によって職を離れ、30代を中心に働く人が減る「M字カーブ現象」。さまざまなメディアや国際比較などで長らく、日本に特徴的なワークスタイルの問題と言われてきました。しかし近年M字カーブは改善されつつあります。

改善されつつある背景には、社会の変化はもちろん、女性自身のワークスタイルやライフスタイルなどへの価値観の変化があります。一方で、国の支援策の推進や企業の地道な取り組みなども挙げられます。

女性の活躍度合い=労働力としてみなされる女性の割合は、統計として長年数値化されていますが、このグラフで、30~40歳代の部分が顕著に落ち込む「M字カーブ」がここ数十年で薄れ、米国や欧州各国などの数値に近づいてきています。

今回は、「M字カーブ」が解消しつつある現状に至るまでの変遷と、国際社会からみた日本の女性の働く環境などについてご説明します。

M字カーブの変遷と他先進諸国との比較

M字カーブはこう変化してきた

昭和50年(1975年)頃は25~29歳(42.6%)がM字の底となっています。これが近年次第に上昇し、平成24年(2011年)では齢階級別で最も高い労働力率(77.6%)となっています。この時期、35~39歳(67.7%)の年齢階級がM字の底となっていますが、30~34歳の年齢階級と共に30代の労働力率は上昇しています。

現在も依然として「M字カーブ」の傾向は続いていますが、そのカーブは以前に比べて浅く、より「台形」に近いカタチ=M字の底となる年齢階級も上昇しているのが見て取れます。

年齢階級別労働力率の推移
出典元『内閣府男女共同参画局』女性の年齢階級別労働力率の推移

M字のボトムが、徐々に変化(昭和50年(1975年):25~29歳、平成7年(1995年):30~34歳→平成23年(2011年):35~39歳)していますが、これは、女性の晩婚化・晩産化が影響していると考えられています。25~29歳および30~34歳で労働力率の上昇が見られる背景は、大卒人材の増加や、未婚化の進展などでより長期的な就業を希望する人が増えてきていること、ほか、結婚・出産後も就業を希望する人材の増加などが考えられています。

女性の社会進出の進展は?

約40年前の1980年には、夫婦のうち男性が主な働き手となる世帯が主流でした。その後、共働き世帯数は継続的に増加。1997年には「共働き世帯」が「片働き世帯」数を上回ることとなりました。その後も共働き世帯は増加を続けており、一方だけが働くワークスタイルとの差は拡大傾向にあります。

共働き世帯・片働き世帯の推移
出典元『国土交通省』第1節 働き方の変化

齢階級別の女性の就業率増加の背景をみる

1980年代以降、20代後半~30代前半の上昇が目立ちます。1975年には25~29歳では41.4%、30~34歳では43.0%だった就業率は、2011年にはそれぞれ72.8%、64.2%まで大きく上昇しています。

年齢階級別女性の就業率の推移
出典元『国土交通省』第1節 働き方の変化

女性の就業率の上昇の背景のひとつには、女性の労働意欲の高まりがあると考えられています。同じく総務省の統計で、女性の理想とするライフコースを尋ねると、「両立コース」(結婚し子どもを持つが、仕事も一生続ける)および「再就職コース」(結婚し子どもを持つが、結婚あるいは出産の機会にいったん退職し、子育て後に再び仕事を持つ)を選択する者が2010年時点でそれぞれ30%を超えており、特に両立コースを選択する者については1992年の調査以降一貫して増加傾向にあるなど、家庭と仕事を両立しようとする女性の意欲の高まりが顕著です。

「女性の年代別のライフコースの変化(平均的なライフサイクルとその分化)」、ライフコース(個人が生まれてから死ぬまでの人生の軌跡の変化)について、1950年、1980年、2000年のそれぞれの生まれのモデルケースで比較したものです。

助成を取り巻く状況の変化
出典元『女性のあした研究所』日本の統計2017年:女性の働き方

この調査によると、この変遷の背景には2つの要因があると言われています。

  • 長寿化

平均寿命の違いでライフコースの様相は異なります。1950年に女性の平均寿命が60年を超え、その後も伸び続け、1980年に女性78.76年となり、2011年には、女性85.90年で世界最高の長寿国のひとつとなりました。

  • 多様化

1980年代以降、製造業からサービス産業への移行による働き方の変化、女性労働力への需要の高まり、晩婚化や非婚化の進展といった社会経済環境の変化は、ライフコースの大きな変化をもたらしました。2000年代に入り、若年層において非正規社員雇用に従事する人々、離職・転職する人々が増加するとともに非婚化が加速化し、ライフコースパターンの多様化が本格的に始まりました。

国際社会から見た日本の現状と将来

OECD 主要先進国で比較すると、欧米諸国の M 字カーブは解消している一方、韓国は日本より下方に深い M 字カーブを持つことがわかります。逆に、ドイツやスウェーデン、アメリカでは「逆U字型」と呼ばれる曲線で、一定の年齢層で労働力率が下がるような事象はありません。 要因としては、女性の働き方に対しての柔軟性が高いことや、地域の子育て支援の環境整備が徹底していることなどが考えられます。

各国の年齢別女性就業率
出典元『日興フィナンシャル・インテリジェンス』諸外国における女性の活躍推進に向けた諸制度等の調査

世界経済フォーラムが公表している『ジェンダー・ギャップ指数(男女格差)ランキング』では日本は144か国中114位という非常に低い順位(下位4分の1グループ)となっています。

ジェンダーギャップ指数(2017)
出典元『内閣府男女共同参画局』「共同参画」2018年1月号

日本のジェンダー・ギャップ指数で「0.657」という数値は、エチオピア(0.656)、ネパール(0.664)、カンボジア(0.676)の3国と同レベルです。この3国はいずれも経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)の定義において、「後発開発途上国」と位置づけられている国々です。経済先進国とされている日本がいまだに、経済的には開発途上国とされる国々と同レベルの女性活躍推進国であることは、しっかりと認識しておく必要があります。

2017年度1位はアイスランド、2位はノルウェー、3位はフィンランドと上位は北欧勢が占めています。

1位のアイスランドは、9年連続です。女性の政治への参画が他国を圧倒しており、男性の育児休業も普及。経済活動項目で14位、政治参加で1位を記録しています。こういった国際比較を見ていくと、日本のM字カーブが改善傾向とは言いつつ、女性の活躍できる環境の整備はまだまだ道半ばとしか言えません。

「管理職比率」は以前低迷

いかに日本がこれまで、「世界トップクラスの女性の学力を仕事上で開花させる女性活躍推進がなされてこなかったか」を示す国際比較データが「管理職比率」です。
日本における女性管理職比率は韓国と並び約1割程度。欧米だけでなくアジアの中でも、長期的視野に立った女性の人材育成が行われてこなかったかを如実にあらわしています。

就業者及び管理職に占める女性の割合国際比較
出典元『ニッセイ基礎研究所』女性労働力率M字カーブの底上げだけが問題の本質なのか。-女性活躍推進データ再考:「補助人材」としての女性活躍推進にならないために

“M字回復=女性の活躍推進”なのか?

日本の女性活躍推進策は進み、M字カーブが回復基調にあるといえども、実はその中身は、給与が低かったり、業務内容でスキルアップを実現できる可能性が低いケースなどが散見されます。

育児や介護などの中で、業務時間や休日を調整可能な非正規社員を女性が選択する、『就業転換マジック』が働くことが、見かけ上のM字カーブ緩和(V部分が緩やかになる)として見えるだけ、という意見もあります。

「女性が就業を継続すること」と「能力開発が行われること」とは別の問題です。誰もが自分の希望するキャリアマップを描くためには、長期的な視野に立った実のある政策が求められているのです。

税制面でいっても、日本はいまだ、配偶者控除や年金保険料の負担などに専業主婦サイドへの優遇が残り、就労する配偶者に中立ではありません。保育コストを低減させる公的保育関連支出も限定的で、待機児童問題など保育が利用可能でないケースも都市圏を中心に多くあります。有給の産休育休制度が整備されていても、パート タイム労働者が利用できるとは限りません。

フルタイムの正社員の柔軟な働き方は難しく、長時間労働問題などもあって、ワーク・ライフ・バランスは課題のままです。パートタイム労働がフルタイム労働者と比較して、労働条件も異なり低賃金であることも女性の労働参加にはマイナス要素でしょう。

オランダでは、短時間勤務が労働の質を落とすことなく可能であったため、短時間勤務が女性の労働参加を促したと考えられています。EU15 ヵ国を対象とした調査によると、女性の就業率の変化は人口構成や景気サイクルなど経済に影響を受けるのではなく、各国の税制や保育補助、産休育休制度、労働市場の改革など諸政策に影響を受ける部分が大きいとしています。もちろん、どの政策が強く影響するかは社会構造によって国によってさまざまです。ドイツでは経済のサービス化に伴い女性の労働参加がサービス産業を中心に進みました。

大黒柱思考のヨーロッパ諸国や、家族主義の強い南欧(スペイン、イタリア、ギリシャ、ポルトガル)でも、女性の就業率は近年上昇しています。これらのことから、女性の労働参加を促す政策が浸透するにつれ、社会認識や女性自身の認識自体も変わっていくと考えられます。

M字カーブ解消が最終の目標ではない

M字カーブは改善されつつあり「女性の活躍推進」などの良い部分もあれば「共働きしなければ子育てできない」などの賃金の問題も依然として大きな要素です。M字カーブは確かに改善していますが、重要なのはその中身です。「見かけ上のM字カーブ緩和」では、本当の意味での女性の活躍促進は進みません。

「女性が就業を継続すること」と「能力開発が行われること」をいかに両立し、適正な評価を受け、長期的に就業できるか。実のある政策は待ったなしで求められているのです。

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