くるみん認定とは?認定に必要な基準と条件とは?
「くるみん認定」は、子育て支援に積極的に取り組む企業に対して、いくつかの基準とその実施、申請を経て、厚生労働大臣が認定する制度です。2007年の施行以降、認定企業数は年々増加し、ビジネスパーソンはもちろん、一般の人々への認知も向上しています。
くるみん認定企業については、実施年となる2007年には428社だったのですが、2010年度末には1,000社超に。2018年度2月末時点では、2,945社となっています。このようにくるみん認定企業は、1年に200~300社ほどのペースで急激に増加中なのです。
認定を受けるメリットとして、「育児支援に力を入れている」「社員の多様な働き方を応援している」といった企業のブランドイメージの向上や、実際に取り組みを推進することで社員の満足度がアップし、ひいては継続勤務の増加=退職率の低下などにつがなり、優秀な人材の流失を防止することができます。採用や人材への教育の投資率もアップすること、税制優遇(くるみん税制)が受けられるなど、費用の面でも多くのメリットがあります。
「くるみん認定」ですが、認定を受けるには認定基準を満たす必要があります。
くるみん認定を受けるための基準と条件とは?
「くるみん認定」を受けるには、行動計画の計画期間が終了し、くるみん認定基準を「すべて」満たすことが必要です。2017年4月に改正された新しい認定基準には、10の要件があります。
1.雇用環境について、一般事業主行動計画を適切に策定したこと
行動計画には、次世代法の規定により定められた「行動計画策定指針」の以下の事項の1および2に示された項目のうち、1項目以上を盛り込まなければなりません。
「六 一般事業主行動計画の内容に関する事項」の「1 雇用環境の整備に関する事項」
- 妊娠中の労働者及び子育てを行う労働者等の職業生活と家庭生活の両立等を支援するための雇用環境の整備
- 働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備
2.計画期間が「2年以上~5年以下」であること
認定を受けるための行動計画の計画期間は、2年以上5年以下であることが条件です。
3.行動計画を実施し、計画に挙げた目標を達成したこと
認定の申請にあたっては、計画に定めた目標を達成したことを証明する資料を添付する必要があります。証明する資料は目標によって異なりますが、以下のようなものが考えられます。
出典元『厚生労働省』一般事業主行動計画を策定し、くるみんマークを目指しましょう!!
4.平成21年4月1日以降に、新たに策定・変更した行動計画を公表し、業員への周知を適切に行っていること
認定を受けるためには、行動計画の策定や変更を行った場合は外部への公表や従業員への周知が必要となります。公表や周知の時期は、策定や変更の日からおおむね3か月以内です。
5.男性従業員の育児休業等の取得については、以下の1または2を満たしていること
- 計画期間内において、男性社員の中で、育児休業等取得率が「7%以上」であること
- 計画期間内において、男性社員のうち育児休業等の取得者、および育児休業等に類似した「企業独自の育児を目的とした休暇制度」の利用者の割合が「15%以上」、かつ、育児休業等の取得者が「1人以上」いること
※「企業独自の育児を目的とした休暇制度」とは、小学校就学前の子どもについて次のような休暇制度を利用した場合が考えられるとしています。
- 失効年休を育児目的で使用できる制度
- 育児参加奨励休暇制度
6.計画期間内において、女性従業員のうち育児休業等取得率が「75%以上」であること
育児休業等取得率を計算時は、「計画期間内に出産あるいは育児休業等を取得した有期契約労働者」のうち、育児・介護休業法において育児休業等の対象にならない社員は除外することができます。
※ 認定申請時にすでに退職している従業員は、分母にも分子にも含みません。
注)従業員数が300人以下の一般事業主の特例
計画期間内の女性の育児休業等取得率が75%未満だった場合でも、計画期間とその開始前の一定期間(最長3年間)を合わせて計算したときに、女性の育児休業等取得率が75%以上であれば基準を満たします。たとえば、3年さかのぼると取得率が75%に満たないが、2年であれば75%以上となるような場合は、2年分だけさかのぼって構いません。
7.3歳~小学校就学前の子どもを養育している従業員について、以下の制度や措置を講じていること
- 育児休業に関する制度
- 所定外労働の制限に関する制度
- 所定労働時間の短縮措置
- 始業時刻変更等の措置に準ずる制度
「始業時刻変更等の措置」とは、以下のものをいいます。
- フレックスタイム制度
- 始業または終業の時刻を繰り上げまたは繰り下げる制度(時差出勤の制度)
- 従業員が育てる子のための保育施設の設置運営、その他これに準ずる便宜の供与
(ベビーシッターの手配および費用の負担など)
上記の制度や措置は、3歳から小学校就学前の子どもを育てる「すべての従業員」への適用が必要です。有期契約労働者などを対象外とすることはできません。
8.労働時間数について、次の1と2を満たしていること
- フルタイムの労働者等における法定時間外と法定休日の労働時間の平均が「各月45時間未満」
- 月平均の法定時間外労働が「60時間以上」の労働者がいないこと
フルタイムの労働者等とは、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)第2条に規定する短時間労働者を除く、すべての労働者を指します。ただし、認定申請の時点で退職している労働者については、計算に含める必要はありません。
9.次のいずれかについて、具体的な目標を定めて実施していること
次の①~③のいずれかを具体的な成果に係る目標を定めて実施していることとしています。
- 所定外労働の削減のための措置
- 年次有給休暇の取得の促進のための措置
- 短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他の働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置
※必ずしも一般事業主行動計画に目標を定める必要はありません
10.法、および法に基づく命令、その他関係法令に違反する重大な事実がないこと
その他関係法令の違反とは、たとえば、次のような法令違反等を指します。
- 労働基準法、労働安全衛生法等に違反して送検公表
- 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム労働法で勧告
- 労働保険料未納
- 長時間労働等に関する重大な労働法令に違反し、是正意思なし
- 労働基準関係法令の同一条項に複数回違反
- 違法な長時間労働を繰り返し行う企業の経営トップに対する都道府県労働局長による是正指導の実施に基づき企業名公表 等
くるみんとプラチナくるみんの認定基準の違いとは?
特例認定であるプラチナくるみんの認定を受けるには、12の要件を「すべて」満たす必要があります。12の要件のうち8つはくるみん認定基準と同じなため、ここでは、それ以外の4つの要件について紹介します。
くるみん認定と同じ基準
認定基準1~4、6~8、10はくるみん認定と同じ基準です
- 雇用環境について、一般事業主行動計画を適切に策定したこと
- 計画期間が「2年以上~5年以下」であること
- 行動計画を実施し、計画に挙げた目標を達成したこと
- 平成21年4月1日以降に、新たに策定・変更した行動計画を公表し、業員への周知を適切に行っていること
- 計画期間内において、女性従業員のうち育児休業等取得率が「75%以上」であること
- 3歳~小学校就学前の子どもを養育している従業員について、以下の制度や措置を講じていること
- 労働時間数について、次の1と2を満たしていること
- 法、および法に基づく命令、その他関係法令に違反する重大な事実がないこと
1.男性社員の育児休業等取得について、以下の1または2を満たしていること
- 計画期間内において、男性社員のうち育児休業等を取得した者が「13%以上」
- 計画期間内において、男性社員のうち育児休業等の取得者、および育児休業等に類似した企業独自の休暇制度の利用者の割合が「30%以上」、かつ、育児休業等の取得者が「1人以上」いる
注)従業員300人以下の企業の特例
計画期間内に男性の育児休業等取得者又は育児休業等に類似した企業独自の休暇制度の利用者がいない場合でも、改正くるみん認定の「子の看護休暇を取得した男性労働者がいる」「子を育てる労働者に対する所定労働時間の短縮措置を利用した男性労働者がいる」「小学校就学前の子を育てる男性労働者がいない場合において、企業が講ずる育児目的の休暇制度を利用した男性労働者がいる」もしくは「計画の開始前3年間に、育児休業等を取得した男性労働者の割合が13%以上」のいずれかに該当すれば基準を満たすとします。
2.以下の1~3(「くるみん認定基準」9の1~3と同様)のすべてに取り組み、かつ、1と2のうち少なくとも1つは定量的な目標を定めて実施し、目標を達成していること
- 所定外労働の削減のための措置
- 年次有給休暇の取得の促進のための措置
- 短時間正社員制度や在宅勤務、その他、働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備などの措置
定量的な目標とは、たとえば、「年次有給休暇の取得率を〇%以上にする」といった成果にかかる数値目標のことです。
3.計画期間において、次のいずれかを満たしていること
- 子どもを出産した女性従業員のうち、子どもの1歳の誕生日に在職している者(育休中の者を含む)の割合が「90%以上」
- 子どもを出産した女性従業員、および出産予定だったが退職した女性従業員のうち、子どもの1歳の誕生日に在職している者(育休中の者などを含む)の割合が「55%以上」
※「子どもの1歳の誕生日に在職している者」には、育児休業中の従業員のほか、企業が育児目的で独自に導入している休暇制度の利用者なども含まれます。
注)従業員300人以下の企業の特例
①又は②に該当しない場合でも、計画期間とその開始前の一定期間(最長3年間)を併せて計算し①又は②を満たせば、基準を満たすとしています。
4.育児休業等を取得し、あるいは、子育てをする女性従業員が就業を継続して活躍できるように、能力の向上やキャリア形成に向けた支援などについて行動計画を策定し、実施していること
くるみんの認定基準の見直しに注意しよう!
「くるみん」や「プラチナくるみん」認定を受けるためには、これら全ての基準を満たす必要があります。
職場環境を整備するという目的を念頭に置きつつ、その手段として認定を受ける場合は、これらの一つひとつの基準について、自社の現状について詳細に確認し、課題を抽出していくという、丁寧な作業が必要となってくるのです。
また時代情勢によって認定基準も改定されることがあります。今回の記事は2018年5月時点での基準ですが、2019年、2020年の取得を目指される場合は、厚生労働省のサイトから最新の情報(変更された内容など)に注意しておきましょう。