J字カーブとは?入社直後から従業員の組織コミットメントは下がり続ける

J字型カーブとは組織コミットメントの指標である

日本企業における多くの雇用形態は今現在まで、終身雇用が主流とされてきました。そんな中、従業員が会社に対する愛着や同一視といった、個人が組織に対する関わり合いを表すひとつの指標として組織コミットメントという概念が存在します。

組織コミットメントとは「会社が従業員に対して「関わり合い」を要求し、それを従業員が承認する状態」のことを指し、会社が求める考え方や意思決定において忠実に従業員に指揮命令し実行させるためには、とても重要だと言われています。組織コミットメントには、入社してから一定の変化があると考えられており、今までにも多くの研究がなされてきました。

中でもその変化の傾向をモデル化して捉えたJ字型カーブは有名であり、組織コミットメントを考える上では重要な指標とされている考え方と言えます。

J字型カーブとは?その具体的な変化の内容とは?

組織コミットメントがなぜJ字型カーブに変化しているのか、背景と理由について見て行きましょう。

J字型カーブとは、名前の通りアルファベットの「J」をなぞるような変化曲線を意味しています。組織に属する個人の入社からみたキャリア発達に伴う、組織コミットメントへの意識の変化を統計するとJ字型カーブのように変化していることをモデル化した考え方と言えます。

J字カーブ
出典元『日本マンパワー』新入社員が定着するためには

J字型カーブの特徴としては、入社前に抱いていた組織や仕事内容への期待や想像に対し、現実に入社してからのギャップに一度は下降します。しかし、その後様々な経験ややりがいを見つけ勤続年数とともに、上昇し最終段階においては上昇し続けるという傾向があります。

より具体的にJ字型カーブの変化を4段階に分けて見ていきます。第1段階では、入社より2~3年目は入社と同時に組織へ抱いていた理想と現実とのギャップ「リアリティー・ショック」により組織コミットメントは一旦大きく落ち込みます。組織に求められる知識や価値観などを獲得しながらいわゆる「組織社会化」を経験し、この過程を乗り越えることで第2段階へと繋がります。

第2段階では、組織や社会に慣れ仕事にも慣れて来た頃です。現実とのギャップが埋まり始め、当初のような緊張感は和らぐものの、依然として組織コミットメントは低いままとどまります。

第3段階として、キャリア形成の初期から中期にあたる勤続7~8年目辺りに、やっと組織コミットメントは回復期に突入します。回復期に入る要因として考えられているのは、この時期に多くある組織における自身の位置づけ、すなわち昇格があります。昇格により与えられた役割に対して責任と自覚が生まれ、やりがいも上昇し組織コミットメントが高まることが予想できます。

第4段階として、組織での自分の職位や地位が高まることにより、組織コミットメントは継続的に上昇し右肩上がりのカーブを書くというのが従来のJ字型カーブのモデルです。

J字型カーブのモデルは、あくまで2000年代初頭までに行われた調査結果を基として考えられた仮説であり、今もなお説得力を持つ部分が大半です。しかし前提として、入社から定年まで一貫して勤めあげられる会社に所属している人を対象に考えられているという点、伝統的な日本企業における終身雇用制度や年功序列制度を基礎として分析されているということがあります。

近年働く環境や企業における人事制度は大きく変化しています。そんな中必ずしもJ字型カーブのモデルが現状の社会に当てはまるのかという議論もされており、必ずしも当てはめて考えることが正しいとは言えないと考えられています。

これからの企業に必要な方法で対処することが大切

組織コミットメントの変化をグラフにした際に、たどる曲線を表現し名付けられたJ字型カーブは、概念としては組織運営をする上では十分説得力があり参考にするべきモデルと言えます。しかし前提には、日本企業特有の伝統的な終身雇用制度や年功序列といった背景があることもあり、必ずしもこれからの組織運営に当てはまるとは限りません。

組織コミットメントは重要ですが、現代社会においては従業員エンゲージメントのほうが重要だという考え方もあります。今後の組織運営をする上では、リアリティーショックは起こるものと言うことを踏まえた上で、事前にエンゲージメントを高めるための施策に取り組むことが求められています。

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