グループワークが多く使われる理由
グループワークは書類選考や面接だけでは見れない、参加者の主体性や性格などの見極めに適した方法です。
グループワークは、他の参加者とどのように関わり合うのか、組織の中での役割を見極めるのに適した手段です。面接や業務スキルを測る試験でも見極めは可能でしょうが、具体的な行動を確認できるグループワークよりも見極めが難しくなります。
個人では解決できないことが、チームになれば解決できたことは、実際の業務でもよく起こりえます。チームのメンバー同士で知識を共有し、物事をみる角度が増えることで、新しい発想が生まれます。
参加者の主体性や性格だけでなく、チームワーク力などを見極めることにも長けているグループワークですが、他にはどんなメリットがあるのか、逆にデメリットはあるのでしょうか?
本記事はグループワークのメリットやデメリットについてご紹介いたします。
グループワークのメリットとは?
採用選考として、グループワーク以外にも筆記試験やエントリーシートなど、様々な選考があります。中でもグループワークの最も大きな特徴は、実際の行動を評価できることでしょう。そのため、応募者評価の精度が向上します。
また、グループワークは複数のグループを同時進行しながら評価するため、一度に多くの応募者を効率的に評価・選考できます。
それ以外のメリットについて、整理しました。
- 業務内容とのミスマッチを防ぐ
- 「なりすまし」や「印象操作」に惑わされにくくなる
- コミュニケーション能力での選考ができる
業務内容とのミスマッチを防ぐ
これはグループワーク特有のメリットと言えます。グループワークが自社の業務内容を擬似体験できる内容であれば、参加者は「会社で働く」イメージがわきやすくなり、「業務内容のミスマッチ」を防ぐことができます。特に社会人経験のない新卒採用において、非常に効果的です。
一方でグループディスカッションは、テーマが抽象的なものになりがちなため、ディスカッションによって業務内容をイメージできるとは言えません。
また、参加者の取り組み方が、実際に働く上で、望ましい行動を選択しているのか確認・評価できる良い機会でもあります。
「なりすまし」や「印象操作」に惑わされにくくなる
グループワークは、書類選考や適性検査と異なり、実際の行動を評価する方法です。書類選考や面接で、優秀な人材を演じるための「なりすまし」「印象操作」が起こりえますが、実際の行動を見ることで、惑わされることが少なくなります。
選考採用で重視する「評価項目」と「評価基準」が決まっていれば、その人の発言と行動に違いはないかを確認できます。また、面接だけでは見れない、自主性やコミュニケーション能力などのスキルを実際に確認できます。
コミュニケーション能力による選考ができる
「コミュニーケーションのダイナミックはチームが成功する真髄」とBen Waber氏(「職場の人間科学(People Analytics)」の筆者)は述べています。選考の最終目的は、そもそも、自社に適した人材を選ぶことではないでしょうか。
しかし「自社に適した人材」は、それぞれの会社で異なる要素が求められます。
ですが会社という組織である以上、「同僚」や「顧客」とのコミュニケーションは必ず発生します。そのため、程度の差はあれど、コミュニケーション能力は必要になります。
筆記試験やエントリーシートでは、コミュニケーション能力が把握できません。グループ面接などと言っても、コミュニケーションは応募者対担当者の1対1で起こります。グループワークでは、1対多のコミュニケーションが主であり、応募者の傾聴力や発信力などを簡単に把握することができます。
グループワークのデメリットとは?
グループワークによって起こるデメリットを、Ron Friedmanが「The Collaboration Paradox: Why Working Together Often Yields Weaker Results」の記事の中で、学術的な目線から説明しています。
この記事を基準に、グループワークの主なデメリットを整理しました。
グループワークを選考で用いる際は、下記のデメリットが起こる可能性を考慮して評価しなければなりません。
逆に言えば、インターンシップでグループワークを使う場合は、フィードバックとして、デメリットで挙げる問題が発生していないかどうか、重点的に確認すると良いでしょう。
- グループでの決断に過剰な自信を持つ
- グループとの同調に圧力がかかる
- 怠惰を助長する
グループでの決断に過剰な自信を持つ
グループで何かを決定するとき、決定した内容に対して、個人での決定よりも過剰な自信をもちます。グループワークによって得られる自信や気持ちの高揚が、個人の判断力を低下させてしまうことがあります。
グループ外にある意見や情報に「抵抗感」を示してしまい、ベストである選択肢を見逃してしまう可能性があります。
グループとの同調に圧力がかかる
グループワークの中では、「仕事の質」と「同僚との関係」で、苦渋の選択を強いられる事が多々あります。たとえマジョリティな意見が間違っていると分かっていたとしても、同僚との関係を重視し、マジョリティに従ってしまうことがあります。
マジョリティに従ってしまうことで、視点が画一化されてしまい、問題解決の糸口が見えにくくなってしまいます。マイノリティな意見を持つメンバーは、間違っていることを指摘するか、黙っているかの選択を迫られ、ストレスとなります。
参考:Psychological Monographs: General and Applied
怠惰を助長する
グループに属することで、メンバーのモチベーションや努力が喪失することがあります。「自分がやらなくても、他の誰かがやってくれるだろう」という感覚から引き起こります。グループでの成果が求められるため、個々の評価の比重が下がることが原因です。
このことを「ソーシャル・ローフィング(社会的怠惰)」と呼びます。共同作業になることにより、メンバーの怠惰につながってしまう現象です。
別の問題として、グループワークによって「実際より生産的な活動をした」と錯覚を持つこともあります。机の前に座って、特別な反応も返ってこない個人作業と比較すると、他の人のアイディアを聞いたり、フィードバックをするグループワークの方が、生産的なことをしているように感じてしまいます。
デメリットをメリットにする方法とは
似たようなスキルを持つ人を同じグループにするよりも、異なるスキルを持っている人を同じグループにしましょう。これにより、お互いの知識を相互補完し合えるか(コミュニケーションができるか)、相乗効果によりどのような発想や成果物を得たかを評価できます。
メンバーそれぞれに明確な役割を持たせましょう。参加者は「今からこの課題を解決しなければならない」と目的を共通認識することで、共に励みあえるか、役割を果たせるかを評価できます。
各メンバー(役割)に対して、細分化した課題があると良いです。グループワークを「アイディアをシェアする場」にすることで、役割に対する責任意識や発信力、取りまとめ力などを評価できます。
単独作業と共同作業を上手く分離することが大切です。「単独作業があってのグループワーク」ということを理解すれば、共同作業の内容に流されずに、各メンバーが自分の役割を果たすことで、より優れているグループワークとなります。
選考精度を向上させながら、個人の良さを活かすグループワークが理想!
グループワークは行動を評価できる、非常に有効な方法です。メリットとして、コミュニケーション能力などのスキルを評価できる、書類選考や面接での「なりすまし」や「印象操作」などに惑わされにくくなるなど、応募者評価の精度が向上します。また参加者も「業務内容のミスマッチ」を事前に確認することが出来ます。
デメリットとして、個人の意見が言えずにグループに従わざるを得なくなる、個人で頑張らなくても良いと思ってしまうなどがあります。
しかし、デメリットはメリットに変えられます。自分は1つのグループに属している、という発想ではなく、個人個人の集まりがグループになっている、と認識させれば良いのです。
この考えは、弊社サービス「ミツカリ」のカルチャー(社風)の考え方と同様です。そもそもカルチャー(社風)というものが存在して、それに社員が属しているのではなく、社員1人1人の考え方の集合体がカルチャー(社風)となっているだけなのです。
メリットだけでなく、デメリットも理解することで、より優れているグループワークを実施できます。