集団凝集性とは?若手社員の企業への帰属意識は年々低下している!
集団凝集性とは、集団のメンバーを集団に留まらせる「求心力」や「動機付け」などの内的な力を意味する言葉です。
デロイト・トーマツによって行われたミレニアル世代(1983年から1994年までに生まれた世代)に対する意識調査によると、現在の勤務先で働き続ける期間を「2年以内」と見込む日本のミレニアル世代の割合は年々上昇しており、2019年調査では約半数となる49%という結果が出ています。
出典元『デロイト トーマツ』2019年 デロイト ミレニアル世代の意識調査(日本版)
デロイト・トーマツの調査から、日本のミレニアル世代は比較的短期での転職を視野に入れており、企業への帰属意識が低下していることが分かります。ミレニアル世代の企業への帰属意識を強め、離職率を低下させるにはどうすれば良いのでしょうか。
社会心理学分野において「帰属欲求を動機づける」概念として「集団凝集性」があります。集団凝集性の高さは、離職率だけでなく労働生産性にも影響を与えます。
今回の記事では、集団凝集性の意味や定義、集団凝集性を高める要因とメリット・デメリットについてご紹介します。
集団凝集性の意味や定義とは?集団凝集性を高める要因とメリット・デメリットについて
集団凝集性の意味や定義とは?
集団凝集性とは、集団のメンバーを集団に留まらせる「求心力」や「動機付け」などの内的な力を意味する言葉です。
集団凝集性の高い集団では、メンバーの心理的な帰属意識が高くなり、連帯感や仲間意識が強くなります。企業においては、組織内の連帯感や仲間意識が強まることによって、離職率の改善や労働生産性の向上が期待できます。
集団凝集性の種類とは?対人凝集性と課題達成的凝集性について
アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによると、集団凝集性には「対人凝集性」と「課題達成凝集性」があるとされています。
対人的凝集性とは、集団内においてメンバー同士が好意的な繋がりを持つことによって生じる魅力を意味する言葉です。対人的凝集性が高い集団に所属するメンバーは「このグループは自分を認めてくれている」と感じ、集団への帰属意識が強まります。
課題達成的凝集性とは、権利や特典、自己実現など、集団に所属することによって個人が得られる魅力を意味する言葉です。課題達成的凝集性が高い集団に所属するメンバーは「このグループに所属していれば、自身の目標も達成できるはず」と感じ、集団への貢献意識や自身の役割へのモチベーションが高まります。
集団凝集性を高める要因とは?
集団凝集性を意識的に高めるためには「人」と「集団」の両面から、影響要因に対するアプローチを行う必要があります。
集団凝集性を高める主な要因としては、以下のような例が挙げられます。
- メンバーの共有時間が長い
- 参加の困難度が高い(新しいメンバーが入りにくい)
- 集団の規模が小さい
- 外的脅威の存在(集団の外に仮想敵・ライバル集団がいる)
- その集団での成功体験がある
集団凝集性を高めるメリットとは?
集団凝集性を高めるメリットとしては、帰属意識の上昇による生産性の向上や離職率の低下が挙げられます。
集団凝集性は個人を集団に留まらせるように働く力のことであるため、集団凝集性が高まると、社員の組織への帰属意識やチームの団結力が高まります。組織のメンバーの団結力や協調性が高まると、仕事における不安や緊張が緩和されてチームに一体感が生まれ、労働生産性の向上や離職率の低下につながります。
集団凝集性を高めるデメリットとは?
集団凝集性を高めるデメリットとしては、集団浅慮や規律の乱れにつながる可能性が挙げられます。
集団浅虜とは、グループ・シンクや集団思考とも呼ばれる「集団で決定された意思や方針の質が個人で考えたものよりも劣ってしまう現象」を意味する言葉です。集団浅慮は、主に組織内の同調圧力が原因で起こるため、集団凝集性が高く仲間意識が強い組織ほど注意が必要です。
組織の同調圧力は、少数派の意見を持つメンバーに対して、暗黙のうちに多数派の意見に従うよう強制させます。少数派のメンバーは「組織の和を乱したくない」「メンバーから嫌われたくない」などの理由から反対意見が主張できずに多数派の意見に従ってしまい、組織の視野狭窄や会議の形骸化につながる可能性があります。
組織内の規範意識が低い状態で集団凝集性が高まった場合、馴れ合い感情によって組織規範が守られなくなり、生産性を低下させてしまう可能性があります。集団凝集性を高める上でメンバーのミスを必要以上に責めないことは大切ですが、過剰な仲間意識によって業務上必要な注意やミスに対する指導まで行われなくなってしまっては、生産性の低下だけでなく取り返しのつかない重大なヒューマンエラーにつながる危険もあります。
集団凝集性を高める際には、単にメンバー同士の仲が良いだけの組織を作るのではなく、同時に集団規範意識を高めることが大切です。
集団凝集性と心理的安全性の関係性とは?
Googleの研究で注目された「心理的安全性」は、集団凝集性に必要な要素です。集団凝集性のメリットであげた「生産性の向上」には、心理的安全性の存在が関わっています。
心理的安全性とは、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンソン氏によって提唱された「チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり、チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」を意味する言葉です。
集団凝集性が高い組織では、メンバー同士で前向きな協力関係が構築されているため、集団凝集性が高い組織は心理的安全性も高いことがほとんどです。心理的安全性が高い組織は生産性が高いことがGoogleの調査で明らかになっているため、集団凝集性を高めることで心理的安全性が高まり、組織の生産性向上につながるのです。
集団凝集性を高めて社員の帰属意識を向上させよう!
集団凝集性とは、集団のメンバーを集団に留まらせる「求心力」や「動機付け」などの内的な力を意味する言葉です。
集団凝集性の高い集団では、メンバーの心理的な帰属意識が高くなり、連帯感や仲間意識が強くなります。集団への帰属意識が高まることで、労働生産性の向上だけでなく、離職率の改善にもつながるメリットがあります。
集団凝集性を高める上では、馴れ合いによる作業効率の低下や集団浅慮などが起こる可能性があるため、単にメンバー同士の仲が良いだけの組織を作るのではなく、同時に集団規範意識を高めることが大切です。
今後企業活動を担っていくミレニアル世代の帰属意識が低下している中で、社員の帰属意識をどのようにして高めるかは、全ての企業にとって重大な課題です。組織力・チーム力を強化する上で、心理的安全性を確保しながら集団凝集性を高めていくことが求められています。