同一労働同一賃金が派遣社員や派遣会社に及ぼす影響や考え方とは?

同一労働同一賃金における派遣労働者の捉え方とは

『同一の労働に従事する労働者には同一の報酬を支給する』考え方が「同一労働同一賃金」と呼ばれるもので、ドイツやフランスなどのEU諸国に広く普及している考え方です。

日本では働き方改革の柱の一つとして「正規・非正規間の格差是正」が掲げられています。格差を是正するための施策として「同一労働同一賃金」が推進されています。2016年12月には、国の働き方改革実現会議から「同一労働同一賃金ガイドライン案」が提出され、2018年7月6日に公布され、大企業では2020年から、中小企業では2021年からの施行が予定されています。

同一労働同一賃金ガイドライン案では、いわゆる「正規雇用労働者」と「非正規雇用労働者(アルバイト、パートタイム労働者、派遣社員などを含む)」の間の、不当で不合理な格差の解消を目指して策定されています。

議論の目玉となっているテーマの一つに「派遣労働者の処遇」があります。アルバイトやパートタイムと同様に、派遣労働者の格差を是正も必須です。しかし、派遣労働者は、実際に勤務する企業(派遣先企業)と給与の支払い企業(派遣元企業)が異なるため、どんな判断基準で同一労働とみなすのかなどが議論の焦点となっています。

派遣先企業の従業員と同一労働を行った場合に派遣先企業との同一賃金を支払う場合、派遣先企業に関わらず派遣元企業として同一労働をしているとみなして派遣元企業での同一賃金を支払う場合など、それぞれ派遣労働者に対してもメリット・デメリットが混在しています。

派遣労働者への同一労働同一賃金の考え方

検討が進んでいる現状の方向性について

派遣労働者というワークスタイルの場合、法律上の雇用主は「派遣元」とされています。賃金や待遇を精査していく場合に、実態としては「派遣先」「派遣元」の両者が関わるため、どちらにその規制を設けていくのかについて議論が進んでいます。

現時点では「派遣先の労働者との均等・均衡」もしくは「派遣元の労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式」のいずれかを選択する方法で検討されていますが、いずれを採用するかはまだ決定していません。

2通りの方式が検討されている理由とは?

2通りの方式において、派遣労働者に対してもメリット・デメリットが混在しています。一概にどちらが良いかは判断できず、派遣労働者の事情によってどちらが良いのかが変わってくるためです。

派遣先の労働者との均等・均衡の場合(派遣先に適応させる場合)

派遣先企業で同業務を行っている正社員の給与をベースにする、という考え方です。どこの派遣会社から派遣されても派遣労働者の時給が同一になります。

この方式の場合、派遣労働者は高時給の派遣先企業を探すことで収入アップが狙えます。しかし仮にスキルアップをしても、派遣先企業が変更になった場合に新しい派遣先企業の給与水準が低ければ、以前より時給が下がってしまうケースも考えられます。なかには、スキルやキャリアの向上を目指さず、とりあえず同じ企業で働き続けようと考える方も出てくるでしょう。

一般事務や営業事務などの場合、派遣元の給与水準がそもそも低い場合、経験やスキルに関係なく、評価(給与)が低く設定されてしまう点も問題になりえます。

派遣という働き方の特徴として、短期で職場が変わる可能性が多いにあります。派遣先の給与水準によって給与が決まる場合、給与が不安定になり、生活基盤も不安定になることが危惧されています。

派遣労働者を受け入れる企業から見ても、同程度の業務をこなす派遣社員の質が異なることも大きな課題となります。業務内容の質をどのように評価して賃金に反映させるのか、「同一労働同一賃金制度」の概念に反さないように難しい判断を迫られる可能性もあります。

派遣元の労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式の場合(派遣会社に適応させる場合)

派遣元企業で「ITエンジニア職は時給○○円、事務職は時給○○円」などと決まる場合になります。賃金額については、派遣元企業でITエンジニアとして働く正社員や事務で働く正社員の金額をベースとして考えます。派遣元企業で働く正社員の中で該当する職種がいない場合には、同じ業務に関わる派遣労働者の給与が基準となります。

この場合、派遣先企業の事情や派遣労働者のスキルなどに関わらず、派遣元企業の給与水準に従って時給が決定します。同じ派遣先企業で同一労働を行っても、派遣元企業が異なる場合には、同一賃金にならない可能性が高いです。そのため、派遣を受け入れる企業からすると「同一労働同一賃金」が成立していない状態となってしまいます。

派遣元企業に給与水準が決まってしまうため、複数の派遣会社を横断して登録し、条件の良い会社に契約を都度変更していく可能性もあります。2018年問題とも言われる労働契約法(5年を超える有期契約労働者を、無期に転換することを求めるもの)の概念とも反してしまいます。

派遣社員を受け入れる企業側の対応

現状、検討段階で最終的に結論づけることが難しいテーマですが、基本的には、『派遣社員・派遣元企業に委ねられることになる』というのが今のところの見解です。

有識者の間では、EUの考え方のように「職種別、企業横断的に賃金を同一にする」ことで、派遣先や派遣会社の企業規模による格差は解消されるという意見があります。同じ職種であれば、どの派遣元企業に登録しても同じように評価されることが望ましいというのが根拠です。

同じ職種でもどのようにレベルを図るのか、などの細かい議題は残されているため、いずれにしても、「何をどうすれば問題が解決できる」ということを現状で語ることは困難なため、さまざまな事例とともに今後も検証を重ねていくことが求められます。

ワークスタイルに関わらず、働きやスキルが正当に評価されるために

派遣労働者は、派遣先企業と派遣元企業の2つの企業が関わってくるため、同一の労働とみなす企業はどちらか、同一の賃金とみなす企業はどちらかといった問題があります。

どちらの選択にしろ、派遣労働者としても一長一短があり、どちらが正しいというものではありませんが、「同一労働同一賃金」を派遣労働者にどのように適用させていくかは議論の余地が残されています。

派遣先企業での「社員食堂の利用」などの福利厚生に関する内容は、派遣先労働者と同一の扱いを行うという方針が明記されています。派遣労働者を受け入れる企業としては「派遣であるかそうでないか」「正規であるか非正規であるか」に関わらず、誰もが正当な評価を受けることができる環境の整備が求められています。

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