業績アップには欠かせない企業文化とは
ベイン・アンド・カンパニーによる「経営管理の手法と傾向に関する世界調査」で、グローバル企業の上級幹部1200人のうち91%が「企業文化は戦略と同じぐらい重要である」という意見に賛同しているという調査結果が出ています。別の調査によると、企業幹部の81%が「文化なき企業は並の業績しかあげられない」意見に賛同しています。市場を勝ち抜くために「企業文化」が「事業戦略」と等しいレベルで重要視されていることが分かります。
出典元『PRESIDENT Online』なぜ、優秀な会社は、企業文化を大切にするのか
「企業文化」とは経営学用語の1つで、会社の業績にも影響を与える要素ではありますが、抽象的な概念であり、定義があいまいな方も多くいらっしゃるかと思います。また類似した概念として「組織風土」や「社風」などがありますが、これらは全て違う内容を意味しています。
企業文化を活用し企業の業績アップにつなげるために、「企業文化」とは何かについて理解する必要があります。今回は「企業文化」の概要について説明します。
企業文化の意味や定義とは
企業文化とは「企業や従業員が意識的・無意識的に共有している独特の価値観や企業規範、前提条件・ルールなど」のことを指します。主に「行動原理となる価値観」のことになります。外部からの影響を受け、徐々に形成されたり変化したりするものです。
「文化」の意味は「土地よりも時代を反映する、創造的で自由な価値観」のことです。日本の文化は和(協調)を重んじて本音と建前を使い分ける、天然資源が少ないがために物を加工し輸出する「ものづくり」文化が発展したなどと使われることがあります。
企業文化の具体例として、以下のようなものがあります。
- 個人主義なのか、それともチームワークを重視するのか
- 成長志向なのか、それとも安定志向なのか
- 年功序列なのか、成果主義なのか
- トップダウンなのか、ボトムアップなのか
- 褒めて育てるのか、厳しく叱るのか
企業文化には程度があります。全ての企業が「個人主義もしくはチームワーク主義」の2パターンに分けられるのではなく、「どちらかというと個人主義」のような程度があります。そのため、「どの程度個人主義なのか」を見極めるのは、適性検査など、心理学やテクノロジーを活用した分野でなけば容易ではありません。
企業文化と似たような言葉として、組織文化という言葉があります。一つの組織を「会社全体」としてとらえた場合が「企業文化」、部署やチームなどを一つの組織としてとらえた場合が「組織文化」となります。同じ会社であっても「営業部」や「開発部」など部署が異なると、文化が違う場合も起こりえます。
組織風土や社風の定義とそれぞれの違い
混同して使われる言葉の中に「組織風土」や「社風」という言葉があります。非常に似ていますが定義やニュアンスが異なりますので、それぞれの言葉の違いについて説明します。
組織風土と企業文化との違い
人間に例えると、組織風土は「人見知りをしない」などの性格、企業文化は「色々な人と交流を持ちたい」などの価値観のような違いがあります。
組織風土は、外部からの影響とは関係なく、企業や組織の内部で自然に培われたもので、組織や従業員間で共通の認識とされる規則や価値観などのことを指しています。例えば「経営理念」「業務マニュアル」「コンプライアンス制度」「人事評価制度」「ローカルルール」「暗黙のルール」などが組織風土に影響を与えています。
組織風土は、良くも悪くも世代を超えて継承され、大きく変化することはないものです。「従業員のモチベーション」に大きく関わる要因となっています。
企業文化は、外部からの影響を受けながら変化していくものです。市場の変化や競合他社の影響などからも影響を受けます。人間に例えると、以前は他人に積極的に関わろうと思わない性格だったが、困ったときに見知らぬ人に助けてもらったことに感謝し、以降自分も他人の役に立てるように関わろうとするなどがあります。
企業文化は、仕事の仕方に影響を与えます。個人主義の企業文化であれば、プロジェクトを完全に分業する形で、一人一人が成果を出すやり方が好まれます。逆にチームワーク主義であれば、ある程度の分業は行うが、プロジェクトに関わる全員が会議などで課題を洗い出しながら業務を進めていく方が好まれます。
社風と企業文化との違い
人間に例えると、社風は「話しかけやすそうな雰囲気」などの印象、企業文化は「色々な人と交流を持ちたい」といった価値観などの違いがあります。
社風は「従業員が感じている会社の雰囲気や特徴」のことです。企業内や組織内の人間関係を基本とした労働環境を表しています。空気感などの感覚的な要素も大きいです。例えば「穏やかでのんびりしている雰囲気」「新入社員でも社長に意見できる」「体育会系」「社員全員の仲が良い」「サービス残業が多い」「雰囲気が暗い」などを表しています。
社風は「組織風土」と「企業文化」両方の影響を受けています。性格と価値観から、その人の人柄が出来上がるようなものです。
例えば「うちの会社は上司部下関係なく、従業員同士仲の良い雰囲気で勤務できる」と従業員が感じているのは社風です。同じように従業員同士が仲が良い雰囲気でも、作為的に「チームワークを大切にしよう」とか「会社内の従業員は仲間だ」という風な理念や目標を掲げて、従業員が共通した認識を持つようになるのは企業文化といえます。
どんな要素が企業文化に影響するのか
企業文化は仕事の仕方に影響を与えます。現場社員だけでなく、経営層も含めた、全従業員に影響を与えます。
統一された文化を持つ組織では、従業員は会社への安心感や信頼感をもって働くことができます。従業員同士の団結力も増すため、チームワークも向上し、長く勤務することができます。
難しい意思決定の際にも企業文化が影響を与えます。意見が割れて結論が出せないときに、明確な企業文化が存在すれば、企業文化に準ずる選択ができるようになります。企業文化と合った選択であれば、従業員も違和感なく受け入れられるでしょう。
自社の商品やサービスの方向性にも影響を与えます。企業文化に対応したアイディアはもちろんのこと、プロダクト化の決定などにも企業文化が現れます。「挑戦志向」の文化であれば、今まで挑戦したことのない分野のプロダクトアイディアが出てきやすく、「安定志向」の文化であれば、既存のヒット商品や競合他社の商品との差別化をはかった、利益予測がしやすいプロダクトアイディアが出てきやすいです。
企業文化は企業の方向性やプロダクト、開発過程などにも影響を与えながら、成功・失敗経験が企業文化を変化させることがあります。
企業文化を活用するメリット・デメリットとは
企業文化は仕事の仕方に影響を与えています。そのため、労働生産性や業績など、経営に直結する要素についても大きな影響を与えています。
企業文化を活用するメリットとは
- 企業イメージが形成される
- 自社の文化にあった採用希望者が集まり、長期的に勤務してくれる
- 安心感や信頼感が生まれやすくメンバー同士のチームワークに結び付く
- 意思決定の指針が定まり、迅速化する
- 経営の効率性がアップする
企業文化を活用するデメリットとは
- 思考パターンが限られて新しい発想がでにくくなる
- 文化に馴染めない人を排除しててしまう可能性がある
- 排他性が高まりすぎると、外部からは近づきがたい印象を与えてしまう
企業文化を活用して強い組織づくりを
企業文化は仕事の仕方だけでなく、業績にも大きな影響を与える概念です。従業員の行動原理となる価値観とも言える、外部からの影響を受けながら徐々に形成・変化していくものです。
組織文化と同様に、企業文化も抽象的な概念ですので、明文化するのが非常に難しいです。しかし、活用できれば非常に強い武器になりうるもので、事業戦略と同じレベルで大切なものです。
自社の業績を伸ばしたい、市場で勝ち抜きたいと考えるのであれば、まずは自社の企業文化がどのようなものかを確認し、従業員に浸透しているのか(現場との乖離はないか)を確認してみてはいかがでしょうか。