組織の中核を担うコア人材とは
近年は社会環境が大きく変化し、企業の経営のスピード化や効率化が必要な時代となっています。企業の変化を担う重要な存在が「コア人材」です。「コア人材」候補を確保し、育成することが多くの企業にとっては大きな課題となっており、人事においてもコア人材がいかに活躍できるか、いかにコア人材を育成できるかが求められています。
ただ「コア人材」の定義はさまざまで、事業戦略や自社の抱える課題によって求められる要件は異なるため、「コア人材」の人材要件は一言で説明できるものではありません。
日本の人事部では、企業の発展プロセスごとに「創業期」「成長期」「多角期」「変革期」の4種類に分類し、プロセスごとに必要なコア人材のイメージが述べられています。各プロセスによってコア人材のイメージが異なるのはもちろんのこと、各プロセスにいる企業によっても自社が抱える問題や社会情勢等の環境によって、求める人材は変わるでしょう。
出典元『日本の人事部』長期的観点から再考する「コア人材」の採用と育成【前編】
組織がどの段階にいるとき、どのようなコア人材が求められるのか。企業として、コアとなる人材にどのようなアプローチをとっていくべきなのか。今回はコア人材の概要をご説明します。
「コア人材」の意味と主な仕事とは?
コア人材の定義や意味について
「コア人材」を明確な一言で表現することは困難です。その定義や特徴は、業種や企業規模、企業のビジョンなどに応じてさまざまだからです。共通して言えることは、「組織が今後成長していくにあたって必要な存在となる人物」が「コア人材」であるということでしょう。
たとえばスタートアップ企業など、若手社員が多い組織の場合は若手をひっぱりモチベーションをあげていくリーダータイプが「コア人材」の一例になります。反対に、ある程度組織や事業が確立している組織の場合、現状をさらに発展させていく方策を考えることができる存在や、次の一手を上層部に進言することができる存在が「コア人材」であるといえるでしょう。
「コア人材」の対局の存在を「フロー人材」といいます。長期的に組織に定着する見込みの少ない人材、例えばパートタイムやアルバイト、契約社員などの非正規雇用者や派遣労働者、嘱託社員などです。
フロー人材はもともと雇用期間が定められているなどで、退職する可能性は社員よりも高くなります。コア人材のように会社の中核を任せるケースは多くなく、定期的に発生する定型業務や、メイン業務のバックアップを担うケースが多くみられます。
コア人材の特徴とは
企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。厳しい競争時代を乗り切れる企業となれるよう、組織においてしっかりとしたビジョンを描き、新たな事業やサービスを創造することができる「コア人材」は非常に重要です。
野村総合研究所はコア人材を「役職などに関わらず、他社との差別化を図る上でも必要不可欠となるコア業務を担い、代替の効かない代表者でない人物」としています。(参考URL:コア人材の確保・定着のための戦略 -コア人材の視点から-)
コア人材に期待するものとして「知識・能力(スキル)」と「やる気や性格などの適性」とされています。入社後の教育が難しい「やる気や性格などの適性」については、人材採用の時点で重視されています。
組織にとって必要不可欠なコア人材が離職をすることは、企業にとっては回避したいところです。離職の原因としては「報酬に満足していない」「仕事内容にやりがいや楽しみがない」「学びの機会がなく、成長できない」などの理由が挙げられます。
出典元『野村総合研究所』コア人材の確保・定着のための戦略 -コア人材の視点から-
コア人材の重要性や活用するメリット
コア人材は、組織の状況に応じて最適な行動を取ることができる存在であるため、会社にとって重要な存在です。組織の発展はもちろん、マネジメントや経営、人材育成の観点からも貴重な存在であることはいつの時代も変わりません。彼らの存在は、会社に多くのメリットをもたらします。
生産性をアップさせる
社内で何かの問題が発生した場合、コア人材は自ら考え率先して問題解決のためにできることを実践します。
リーダーシップが取れる存在がいることで、問題解決までのステップが非常にスムーズになり、会社全体の業務効率とともに生産性を向上させることができます。
幹部候補者を確保できる
コア人材は、その時々の組織の中核を担う存在です。会社を発展させるためには、経営方針にも精通した柔軟な発想をもった人材が必要です。
会社の状況を熟知し、適切な判断でリーダーシップを発揮できるコア人材は、将来の幹部候補者として他に代えがたい存在です。
組織の改善・安定化を実現できる
コア人材は、組織をいかに発展させていくかを常に考えており、組織の状況や人材も把握した上で、職場の環境づくりに配慮できます。
コア人材がいることで、組織に統率が取れ、社員が落ち着いて業務に専念できる環境が醸成されます。
他社との差別化を図ることができる
自社の状況を適切に分析すると同時に、今ある課題をいかに解決していくか、プランの作成から実行までできる力を有しているのがコア人材です。
コア人材を要する組織には、新たなサービスや企画が生まれやすく、結果、競合他社との差別化を図ることが可能となるのです。
コア人材を定着させるために企業に求められること
企業の核となるリーダーであり、組織の未来を左右する重要な存在です。
退社や転職などでコア人材がいなくなるのは、会社にとっては大きなダメージになります。組織として、コア人材の離職や退職を防ぐための対策は必須です。
コア人材の勤続意欲を下げない取り組み
コア人材は、自身の力を発揮できる職場に魅力を感じています。重要なポジションや新規事業の立ち上げ、事業推進に積極的な経営者とともに働く場合など、フレキシブルに力を発揮できる場所では高いモチベーションで仕事にまい進ます。
成長の機会を多く与えるとともに、彼らがスキルアップできるような研修や勉強会などのバックアップ体制を設けることは有益です。同時に、モチベーションの大きな原動力となる報酬も、しっかりと本人の希望とすり合わせるようにしましょう。
他社との交流機会を増やす
多くの人と触れ合い、コミュニケーションする中でさまざまなことを上手に吸収するのもコア人材の特徴です。
コア人材には、外部の人々と交流することができる場や外部の研修に参加する機会を与えることで、さまざまな刺激を受け、さらに仕事へのモチベーションを高めることでしょう。
人事評価制度を整備する
コア人材の働きをきちんと評価するために、組織としては、成果に対する報酬を正当に付与する制度を導入するのはもちろん、職場環境の改善や成果に至るプロセスも評価できる制度も設けるのが有効です。同時に、評価に見合った賃金制度の整備にも取り組んでおきましょう。
コア人材の重要性を、今一度認識する
事業の段階によって求められるコア人材は異なりますが、事業を成長させるためにはコア人材は必要不可欠な存在です。組織としては、コア人材を採用・教育することはもちろん、離職防止策も求められます。
自社でどういった業務・役割が「コア」にあたるのかを棚卸しし、組織の中で「コア」を拡大できる人材の姿を明確にしましょう。一般的に「コア人材」と呼ばれる人物が求めるものも押さえた上で、自社のコア人材に組織としてどのようなサポートができるか、コア人材を手放さないための職場環境の整備同時に進めていくように心がけることをオススメします。