キャリアアップ助成金の賃金規定等共通化コースとは?正規・非正規間の格差を埋める!

非正規雇用労働者の社会の動きとは

現在、女性活躍推進、副業解禁など社会の動きは働き方改革に向かっています。どの雇用形態の人も自分らしく働く社会に進んでいるでしょう。労働契約法も改正され、非正規雇用(有期契約)労働者の問もまた同様に解決する優先順位の高い課題となっています。

正規・非正規の格差是正のため、同一労働同一賃金制度に注目が集まっています。2018年6月29日に働き方改革関連法が成立し、同一労働同一賃金制度は、大企業では2020年4月から、中小企業は(準備期間を考慮して)2021年4月からの導入が決まっています。

同一労働同一賃金制度は、その名の通り、正規・非正規の立場に関わらず「同一の労働を行った労働者に対して同一の賃金(報酬)を与える」ことを目的としたものです。同じ業務を行ったとしても非正規だから給与が低い、非正規だから正規と同一の福利厚生や待遇を受けれないといった現実を解消するために、就業規則レベルで改善が求められる制度です。

キャリアアップ助成金は、非正規雇用者の企業内でのキャリアアップや待遇改善、正規雇用者との格差を是正する制度の導入促進を目的とした助成金です。キャリアアップ助成金には7つのコースがあり、中でも「賃金規定等共通化コース」は同一労働同一賃金制度の考え方と同様に、同じ職務を行った場合には同じ賃金が支払われるようにすることが目的であり、職務に応じた賃金規定の作成を推進するための制度です。今回は「賃金規定等共通化コース」について説明します。

キャリアアップ助成金の賃金規定等共通化コースとは

賃金規定等共通化コースは、派遣労働者や契約社員などの有期社員に関して、正規雇用の労働者と同じ内容の業務を行った場合に同一の賃金を支払うなど、正規雇用労働者と同様の賃金規定等を有期雇用労働者に対して適用した事業主が受給できる助成金です。非正規雇用労働者の処遇や待遇の改善、不公平感の払拭が狙いです。

賃金規定が明確になること、正社員と同様の賃金規定になることによって、非正規従業員のモチベーションもあがり、生産性の向上や離職率の減少も期待できるでしょう。

受給金額について

  • 1事業所当たり57万円<72万円>(42万7,500円<54万円>)
    < >は生産性の向上が認められる場合の額、( )内は大企業の額

共通化した対象労働者(2人目以降)については助成額が加算されます。

  • 対象労働者1人当たり20,000円<24,000円>(15,000円<18,000円>)
    ※上限20人まで

賃金制度に関わる助成金のため、1事業所当たり1回のみの申請となります。

受給要件について

受給要件は、キャリアアップ助成金で共通するものと賃金等共通化コースのみに適用されるものとあります。それぞれ分けて説明致します。

キャリアアップ助成金で共通する受給要件

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること
    (キャリアアップ計画書は、コース実施日までに管轄労働局長に提出すること)
  • 該当するコースの措置に係る対象労働者に対する賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備している事業主であること
  • キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

「キャリアアップ計画」とは、非正規雇用労働者のキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるために、今後のおおまかな取り組み(目標・期間・目標を達成するために事業主が行う取り組み)などイメージでいいのであらかじめ記入するものです。このキャリアアップ計画は、あくまでも当初の計画を記入するため、変更届を提出すれば随時変更することも可能です。

「キャリアアップ管理者」とはこのキャリアアップ計画をすすめる人のことで、1事業所あたり1名配置します。キャリアアップに関して知識、経験のある人が望ましいですが、資格などは必要ありません。

賃金等共通化コースのみの受給要件

  1. 有期契約労働者等に対して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに設け賃金規定に対応した基本給等の賃金の待遇を定めている事業主であること
  2. 正規雇用労働者の賃金規定等を、新たに作成する有期契約労働者の賃金規定と同時またはそれ以前に導入している事業主であること
  3. 賃金規定等の区分を有期契約労働者等と正規雇用労働者についてそれぞれ3区分以上設け、かつ、有期契約労働者等と正規雇用労働者の同一の区分を2区分以上設け適用している事業主であること
  4. 有期契約労働者等の基本給など職務の内容に密接に関連して支払われる賃金の時間当たりの額を、正規雇用労働者と同額以上とする事業主であること
  5. 賃金規定等が適用されるための合理的な条件を労働協約又は就業規則に明示した事業主であること
  6. 賃金規定等を全ての有期契約労働者等と正規雇用労働者に適用させた事業主であること
  7. 賃金規定等を6か月以上運用している事業主であること
  8. 賃金規定等の適用を受ける全ての有期契約労働者等と正規雇用労働者について適用前と比べて基本給や定額で支給されている諸手当を減額していない事業主であること
  9. 支給申請日において当該賃金規定等を継続して運用している事業主であること
  10. 生産性要件を満たした場合の支給額の適用を受ける場合にあっては、当該生産性要件を満たした事業主であること

分かりづらい3と4の受給要件について、掘り下げて説明します。賃金規定等の区分とは、評価における等級やグレードのことを意味しています。

賃金規定等共通化のイメージ
出典元『厚生労働省』キャリアアップ助成金のご案内

正規社員と有期社員の評価等級をそれぞれ3つ以上作り(上記の賃金テーブルの図ですと、正規社員は3等級~6等級、有期社員は1等級~4等級)そしてどちらの雇用形態も重なる同一の等級を2つ以上つくること(上記の図ですと正規社員の3~4等級と有期社員の3~4等級が重なります)。重なる同一業務の賃金は正規社員の給与と有期社員の賃金の時間給と比較したとき、同額以上となるように設定するということを伝えています。

どのような業務が求められるのか、該当する業務を行った場合には賃金がいくらになるのかを明確にする必要があります。正規雇用・有期雇用間の賃金格差が生まれないように、賃金を設定する必要があります。

賃金テーブルと評価における等級やグレードを設けていれば、労働者自身の業務と評価の結びつきが明確になるだけでなく、区分を上げるためにどのようなスキルが必要なのかも明確になるため、客観的な評価制度を作る上での第一歩となります。(実際には、昇進試験に合格するなど、区分を上げる評価基準も明確にした方が客観的かつ公平な評価制度となります。)

申請期間について

賃金規定共通化後の賃金を6か月間支給した日の翌日から起算して2か月以内に申請する必要があります。

賃金規定等共通化コースの申請の流れ
出典元『厚生労働省』キャリアアップ助成金のご案内

上記の例ですと、6か月分の賃金の支給日が10/15なので、その翌日の10/16から2か月以内に申請する形になります。

助成金申請における注意点について

注意点としては、賃金表や賃金規定を作る際に正規社員と有期社員のものをそれぞれに作るのではなく、共通化してつくる必要があるということです。

賃金等共通化コースのみの受給要件で示した等級やグレードを見ると、正規社員の4等級と有期社員の4等級の条件は同じ文言が入っていることがわかるかと思います。

同じ業務をするのであればそのポジションに対する社員は同じ給与が支払われるべきですので、賃金表や条件も共通しているものを作成することがポイントです。

賃金規定等改定コースとの違いとは

キャリアアップ助成金には、今回の「賃金規定等共通化コース」とは別に「賃金規定等改定コース」があります。「賃金規定等共通化コース」と「賃金規定等改定コース」の違いについて説明します。

「賃金規定等改定コース」は非正規雇用労働者の賃金の向上が目的で、賃金規定等の作成義務はありますが、就業規則への導入義務はありません。評価基準は「有期契約社員内での評価」なので、あくまで有期契約社員内の正当な評価と賃金のアップを図ることが目的です。

「賃金規定等共通化コース」は就業規則へ定めることが目的で正規社員と共通の賃金規定を就業規則に導入することが求められます。「正社員との比較評価」となるので、正規社員と比較し同業務を行っているのであれば同一の賃金が支払うよう規則に盛り込むことが必須となります。

同一労働同一賃金法案前に準備して損はなし

賃金等共通化コースは、同一労働同一賃金などで言われているように、同一の職務を行っても雇用形態の違いだけで給与が変わってしまっている、賃金格差を埋めるための助成金です。

賃金表の合理的な条件を明文化することで、人事評価制度にも活用でき、あいまいで納得感を得られない評価を避けられるメリットがあるでしょう。同一労働同一賃金の関連法案が改正され、今後運用を求められる前に準備しておくことに損はない助成金です。

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