いまや転職はキャリア形成のための一般的な選択肢
終身雇用が前提だった時代では、転職を志すよりも一社で勤め上げることがキャリアの王道であると考えられてきました。高度経済成長期から続いてきた、終身雇用や年功序列による昇進や給与テーブルの存在が、その状況を生み出していたとも言えます。しかし現在は、転職をすることによってキャリア形成をすることは一般的になっています。
労働政策研究・研修機構の調査内容から、「初めての正社員勤務先」での勤続期間分布(性・最終学歴・勤続別)を見てみましょう。
男性の離職者は1年以内28%、1年超2年以内が17.9%、2年超3年以内が16.2%、3年超4年以内15.3%、4年超22.6%となっています。女性の離職者は1年以内22.3%、1年超2年以内が19.8%、2年超3年以内が18.7%、3年超4年以内16.6%、4年超22.7%となっています。男女ともに、3年以内に辞めた人は6割にもなります。
出典元『労働政策研究・研修機構』若年者の離職状況と離職後のキャリア形成
離職後必ずしも転職をしたとは限りませんが、比較的早期に転職をする人が多い実態がうかがえます。
初めての就職後早期の転職者が多い実態はあるものの「石の上にも3年」と言われるように、若いうちの転職でタイミングに迷うということは珍しくないでしょう。一方で「35歳限界説」と言われるように、ある程度の年齢を超えてしまうと転職が厳しくなるという考え方にも不安を抱くことも考えられます。
今回は、どのような年齢で転職を目指すべきなのか、具体的にご紹介していきます。
転職年齢によって給与はどう変わる?
年齢による転職に関わる給与の変化を見ていきます。厚生労働省の公開する「平成29年雇用動向調査結果」の転職入職者の賃金変動状況を参照してみましょう。
平成29年度の調査結果では、全体の36.2%が給与が増加しています。世代別に見ると20~39歳までの各世代は全て40%台となっており平均より高い一方で、40代は30%台、50代以上は20%台以下となっています。年齢が上がるほど、給与の増加が厳しくなる傾向がうかがえます。
給与上昇を目的とした転職の場合、20~30代の方が適しているという側面がうかがえます。40~50代の場合、既に社内昇進などである程度給与テーブルが上がっているため、そもそも転職による給与アップの可能性が20代~30代よりも低いと考えられます。給与レベルの違う業界をまたいでの転職や、給与レンジが大きく違う企業への転職の可能性も若年層よりも低いことが考えられます。
40~50代になって急に給与が上がるという転職はあまりないことが考えられますので、若いうちから中長期的なキャリアパスと生涯年収を考えての選択が大切になります。ただし、給与だけに囚われていると、仕事内容において「こんなはずではなかった…」という転職になりえますので、注意しましょう。
転職年齢によって求められる経験・スキルは大きく異なる
転職する年齢ごとに求められるスキルや役割について見ていきましょう。一般的に下記の3層に求められるスキル・役割は分かれています。
第二新卒レベル(卒業後3年以内)
まずあげられるのは、第二新卒レベルです。第二新卒とは、一般的に「新卒で入社して3年未満の求職者」を指します。
この年齢での転職で期待される内容は新卒採用と近く「まだ特定の会社文化に染まり切っていない柔軟な考え方」や「今後の成長のポテンシャル」です。未経験職種や未経験業界への転職も比較的しやすい年代です。
新卒採用との違いとしては、電話・メール応対や顧客折衝における基本的なビジネスマナーを備えているという点で、新卒向けの教育コストの削減という意味でも積極的に採用が行われています。
一人前レベル(卒業後4年目程度~)
次にあげられるのが、一人前レベルです。第二新卒よりも具体的な業務経験を積んでおり、転職後それを活かして自立して仕事を遂行できるレベルが想定されます。
業界によってはマネジメント職に就く年齢が若いため、この世代でチームマネジメントなどを任されるケースも珍しくありません。
第二新卒レベルに比べると業界や職種をまたいでの転職機会は減るものの、30歳前後までは業界によっては積極的に採用を行っています。
マネジメント・スペシャリストレベル(35歳前後~)
最後にあげられるのがマネジメント・スペシャリストレベルです。ある業務や業界において10年以上の経験を持ち豊富な知識、ノウハウ、人脈などを活かしての活躍が期待されます。
業務や事業全体を俯瞰して仕事に取り組むマネジメント職としての期待は年代としては非常に大きなものですが、特定の業務遂行において高いスキルや専門性を持つスペシャリストとしての採用も珍しくありません。
期待されるスキルや経験は、職種や業界によっても異なりますので一概には言えません。共通して言えることとしては、年齢以上に、組織内でどのような強みを持って仕事に取り組める人材であるか、明確になっている人がこのレイヤーには該当するということです。
業界や職種をまたいでの転職は前述の第二新卒レベルや一人前レベルに比べるとないのが現状です。特定の業務・業界知識や経験があり、コンサル、SIerなどから事業会社への転職というようなケースはありますが、非常に狭き門である点は踏まえておきましょう。
求められるスキル・経験があれば35歳以上も転職可能。大切なのは中長期的なキャリアプラン!
転職は「35歳限界説」と言われた時代もありましたが、現在は求められるスキル・経験があればマネジメント層やスペシャリストとしての転職は十分に可能です。
年齢や経験によって転職を取り巻く状況はさまざまです。自分自身のケースに照らし合わせて「転職することによって、どのような働き方をしたいのか」「どのようなスキル・経験を得たいのか」などの目的意識を明確にしておくことが不可欠です。
年齢によって求められるスキル・経験が異なるため、すぐに転職をしなかったとしても「●●歳までの××の経験を積む」といった自分なりのキャリアプランを持つことが求められます。こうした目的意識の下、若いうちに転職をして経験を積むという選択ももちろんあるでしょう。
中長期的なキャリアプランを考え、戦略的に転職でのキャリアアップやキャリアチェンジを図ることが必要です。自分だけで考えることが難しい場合には、転職エージェントのアドバイスを参考に、一歩ずつ自分のキャリアの方向性を見出してみましょう。