インバスケット思考をご存知ですか?
インバスケットとは「未処理のタスクが詰まった箱」の意味で、それを効率的に処理するための思考が「インバスケット思考」です。
インバスケット思考を鍛えることで業界や職種にとらわれない業務遂行能力や対人関係処理能力を向上させることができるというメリットがあり、設定上の人物や役職になりきって行うロールプレイング形式の思考トレーニングとして研修でよく使われています。
主なルールは以下の4つです。
- 架空の人物を設定し、プレイヤーはそれになりきる
- 制限時間を設け、その中で思考する
- 多くの課題を設定し、それを処理する方法を考える
- いわゆる「正解」はなく、どんな案を出すかは自由である
大切なのは「時間を守ること」と「優先順位をつけること」です。「仕事の効率が上がらない」、「要領が悪い」という自覚のある方が短所を克服するのにぴったりのトレーニングです。
この記事では、例題を紹介し、どのように意識しながら解くのかというコツを紹介します。
インバスケット思考の問題例と着眼点について
Q.あなたは入社2年目の若手営業社員です。現在は月の半ばで、このままでは月間の営業目標達成は難しいと見込まれています。しかしつい先日、月間目標達成の明暗を分ける大きな商談のアポイントが入りました。以下の6つのタスクをどの順番で処理すべきかを答えなさい。
- 担当顧客からのクレーム対応
- 売上を底上げするための長期的戦略構築
- 歓迎会の予約(1週間後に開催)
- 上司からの呼び出し(いつ、とは明確に指示されてない)
- 3日後の商談のプレゼン作り。受注額が大きい。
- 明日締め切りの経費精算申請書類の記入。
着眼点1:「緊急性」と「重要性」の2軸で考える
インバスケット思考には「絶対的な正解は存在しない」という点を伝えます。あくまで明確な判断基準を持ち、それに従って論理的に素早く回答を出すトレーニングであることに注意しましょう。
この問題では「緊急性」と「重要性」の二つの軸を設定し、それぞれのタスクが4つ現れるパターンのうちどこにカテゴライズされるのかを分析することが基本的な考え方です。
例えば「担当顧客からのクレーム」の緊急性が高く、こちらを優先するのであれば「上司からの呼び出し」に対して「事情を説明して後にしてもらう」という連絡で対応するといった回答例が考えられます。
ビジネスパーソンとして「売上を底上げするための長期的戦略構築」は重要性は高いですが、緊急性が低いと考えられます。こうしたタスクをどうするは個人の見解が大きく反映されるものになるのです。
特にグループでインバスケット思考を行う際は、個人の見解によって回答が大きく異なることが往々にして起こります。
そうした時に、「これは違うでしょ!」と頭ごなしに否定するのはNGです。「なぜそのように考えたのか?」をきちんと順序立ててヒアリングし、他のメンバーの価値観や視点を共有することに努めましょう。そうすることで、これまでの自分にはなかった考え方を受け入れ、実践できるようになっていきます。
着眼点2:課題発見・解決方法を探る
インバスケット思考ではさまざまな問題が同時に発生しますが「どうしてこうなったのか?」を考えることも重要です。
「現状を理解」し、「そうならないためにどう手を打ち」、「あるべき姿はどんなものか」を明確にすることで、課題発見と解決案を考えてみましょう。
例えば、「月初での売り上げが伸びなかったから、ポッと出た受注額の大きな商談にかける状態になっている」と考えるのであれば、「売上を底上げするための長期的戦略構築」の優先順位を上げるというのもひとつの回答のあり方です。
同じことを2度繰り返さないように工夫する、という視野も大切です。
基本的な考え方を学んだ後はたくさん問題を解いてみましょう!
今回は基本的なインバスケット思考の問題を紹介し、どのように考え、どのように回答するかの例を紹介しました。
重要なのは、「どんな結論を導き出したか」ではなく、「どのように考えて結論に至ったか」ということです。結論に至るまでの思考過程を細かく分析し、他の人の回答例と自分の回答例を比較することで、よりフレキシブルな思考ができるようになります。
インバスケット思考の問題については、多くの書籍が出版されており、より深めたい場合は多くの問題を解くために参考にしてみてはいかがでしょうか?