採用要件の明確化は採用活動の重要な課題となっている
現在日本では、売り手市場によって人材の採用が年々難しくなっており、企業間の人材獲得競争が激化しています。売り手市場の原因については、少子高齢化に伴う労働人口の減少や、東京オリンピック開催にともなう有効求人倍率の増加など、さまざまな要因が挙げられています。
採用活動が難しくなっていることを示す指標としては、有効求人倍率の増加以外にも、採用単価の増加が挙げられます。マイナビの調査によると、新卒学生1人当たりの採用コストは2016年で47.3万円、2017年で49.9万円となっています。
翌年2018年のマイナビによる調査でも、新卒学生1人当たりの採用コストが「増えている」と答えた企業は43.5%であるのに対して「減っている」と答えた企業は7.4%という結果から、採用コストは年々増加していることが分かります。
人材を採用できたとしても、新入社員に早期離職されてしまうと、意味が無いどころか企業にとって大きな損失となります。早期離職が起きてしまうと、採用活動費や教育研修費、それぞれにかかる人手や時間のコストがすべて無駄になるため、採用失敗による企業の損失は非常に大きなものとなります。
「そもそも人が足りていないから頭数を揃えるだけで必死」という企業は多くありますが、採用失敗による損失を考えると、やみくもな採用はしない方がマシであるとさえ言えます。正社員として「自社で長く活躍してくれる人材」を採用するためには、人材を見極める採用要件を明確に設定する必要があります。
今回の記事では、採用要件の意味や設定方法、採用要件を明確にするメリット・デメリットなどについてご紹介します。
採用要件とは?意味や設定方法、採用要件を明確にするメリット・デメリットについて
採用要件とは、労働条件や求職者のスキルなど、採用活動において企業が応募者を採用するかどうかを決める基準を意味する言葉です。
採用活動を行う際には、どのような人材が欲しいのかという求める人物像を明確にして、採用要件を設定する必要があります。採用要件の代表例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 能力・学力・思考力・コミュニケーション力
- スキル・専門性・資格
- 属性・性別・年齢
- 経験・対人折衝・企画
- 社会適合性・価値観・性格・社風との合致
- 勤務条件・給与・待遇
採用要件を設定する方法とは?
採用要件を設定する際には、採用活動を始めるにあたって「現在の会社の人材状況がどうなっているのか」というスタート地点と「今回の採用によってどのような状態に持っていきたいのか」というゴール地点を明確にすることが大切です。
採用活動のスタートとゴールを明確にする上でポイントとなるのが、採用の目的が「欠員補充」なのか「増員」なのかという点です。人材募集の動機は「欠員補充」と「増員」の2種類に大別され、どちらを目的とするかによって採用戦略が大きく異なります。
欠員補充を目的とした募集をかける際の採用要件は、前任者と同じ労働条件で同じ業務を行える人材がターゲット像となります。前任者と同じ条件で募集をかける企業が多いですが、前任者のホンネの離職理由が労働条件に対する不満である場合を考え、離職者が出たタイミングで給与や業務内容などを見直してみることをオススメします。
増員を目的とした募集をかける際の採用要件は、スキルやキャリアが豊富な人材がターゲット像となります。増員の動機は事業規模の拡大や新規事業の立ち上げでしょうから、採用要件はしっかりと定義する必要があり「とりあえず採用できればいい」というわけにはいきません。
自社で長く活躍してくれる人材を獲得するためには、人材の受け入れ体制をしっかりと整えた上で、企業方針に沿った採用要件を精査していく必要があるのです。
採用要件を明確にするメリットとは?
採用要件を明確にするメリットは様々ですが、一番のメリットとしては「採用ミスマッチが起こりにくくなる」ということが挙げられます。
採用市場において、特に大きな問題の1つとされているのが「定着率」です。せっかく採用した新入社員が「業務内容や人間関係が想像と違った」という理由で早期離職するケースは非常に多く、採用や教育などにかけたコストがすべて無駄になってしまうため、採用ミスマッチの防止は多くの企業で重要な課題となっています。
採用ミスマッチの防止については、大企業に比べて中小企業では新入社員に対する教育体制が整っていない傾向があるため、採用と早期離職が自転車操業状態になっているところも珍しくありません。
採用要件を明確にする最大のメリットは、採用ミスマッチを防止して定着率を向上させるという、多くの企業・人事部が抱えている課題の解決につながる点です。
採用要件を明確にするデメリットとは?
採用要件を明確にするデメリットとしては「時間と手間がかかる」ということが挙げられます。
小規模の企業やスタートアップ企業では人事部を設置していない会社が珍しくなく、採用の仕事が後回しになり、採用要件の明確化に時間をかけていられないケースが多々あります。「人を採用するために採用担当を採用しなければならない」となると、ある程度経営が軌道に乗った企業でなければ、採用要件の明確化にコストをかけるのは現実的に困難な部分があります。
小さい企業ほど採用にかけられるコストが少ないという現実はあるものの、やみくもな採用を繰り返していると採用と早期離職を繰り返す悪循環になることは、前項でもご説明した通りです。採用要件の明確化は、人手やコストの問題から後回しにされがちですが、小さい企業ほど重要になるのです。
採用要件を設定する際の注意点とは?
採用要件を設定する際には「欲張りすぎてはいけない」という点に注意が必要です。「若くて安く雇えて資格をたくさん持っていて……」など、理想ばかりを求めて「実在しない人材」をターゲットとしてしまうのは、よく陥りがちな失敗例です。
採用要件の項目がいくつか上がった段階で、項目ごとに優先順位をつけるようにすれば、採用要件の設定ミスを防止できます。何を優先し、何を妥協するかをしっかりと定義して、よりリアリティのあるターゲット像を作り上げるようにしましょう。
採用要件を精査して採用ミスマッチを防止しよう!
採用要件とは、労働条件や求職者のスキルなど、採用活動において企業が応募者を採用するかどうかを決める基準を意味する言葉です。
採用要件を設定する際には、採用活動を始めるにあたって「現在の会社の人材状況がどうなっているのか」というスタート地点と「今回の採用によってどのような状態に持っていきたいのか」というゴール地点を明確にすることが大切です。
現在の採用市場では、求人サイトによるWebからの採用が可能になり、多種多様な人材へのアプローチが可能になっています。多様な人材の中から自社の求める人材を見極めるためには、採用要件の明確な定義が必要不可欠です。
求める人物像でない人材の採用は、企業にとって大きな損失となるため、採用活動の事前準備が非常に重要です。あいまいな採用要件を明確化し、必要最低限の項目に留め、採用ミスマッチの防止に注力しましょう。