ペーシングの3つの基本とは
人材市場で特に新卒や20代といった若手人材には「コミュニケーションスキル」が求められています。これは専門性や経験が豊かな人材の獲得難易度が非常に高くなっているため「業界・職種未経験者」が採用ターゲットになりやすくなっているということがひとつの原因として挙げられますが、日本では昔から「会社で中長期的に育てる」ことが前提の採用が主流となっています。
出典元『一般社団法人 日本経済団体連合会』2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果
コミュニケーションスキルと一言でいっても、内容は多岐に渡ります。「ペーシング」というスキルはコツさえ押さえれば実践の敷居が低く、教育研修プログラムにも盛り込みやすい内容です。
ペーシングは、しぐさや表情、声のトーンなどのペースに同調することで相手に安心感と親近感を与えるスキルで、信頼関係を構築するのに非常に役に立ちます。信頼関係構築の重要性はGoogleも言及しており、同社は成功するチームに最も重要なものは「心理的安全性」であると主張しました。
この記事では、ペーシングの基礎となる3つのスキル「ミラーリング」「マッチング」「バックトラッキング」とはなにかを紹介します。
ペーシングは「真似をする」で覚える
ペーシングとは文字通り「ペース」が重要となるスキルです。相手のペースに合わせてコミュニケーションをすることで、非言語的な領域で相手に自分の気持ちや態度を伝えることができます。言葉は正しく、ロジックも整然としているのになかなか相手に理解されない……という方は「ペーシング」への配慮が不足している可能性があります。
ペーシングは難しいスキルではありません。ポイントは「相手を真似すること」です。なかなかイメージが掴めなければ、相手に合わせるとは、まず相手を真似することから始めてみるとペーシングがどんなスキルかを把握しやすくなります。
以下で紹介する3つのテクニックは、具体的になにをどのように真似すればよいのかというものです。
- ミラーリング
- マッチング
- バックトラッキング
相手の表情・しぐさを真似するミラーリング
ミラーリングとは相手のしぐさや表情など、視覚情報を使ったペーシングスキルです。相手にとっての「鏡」のように振る舞うことで、同調や共感を非言語的に示すことができます。
ミラーリングで注目するのは以下の5つです。
- 表情
- 顔の傾き
- 手や上体の動き
- 足を組むなど下半身の動き
- 呼吸のペース
あからさまに真似をするのは逆効果になります。何から何まで相手の真似をしていると「バカにされている」という印象を与えかねませんので、気づかれない程度にするのがポイントです。
相手の声に合わせるマッチング
マッチングは相手の声を中心とした非言語的な聴覚情報を合わせるテクニックです。ここで注目するのは以下の4点です。
- トーン(声の高さ、低さ)
- テンポ(早口かゆっくりか)
- ボリューム(大きいか小さいか)
- リズム(言葉の区切り方など)
マッチングではあえて「相手の逆」をすることが効果的なケースもあります。応用的な技術ですが、クレーム対応でよく使われています。感情的になって早口で怒鳴るお客様に対して、オペレーターはゆっくりと理性的にと対照的な口調で話し、クレーム内容を1つずつバックトラッキングしていくという対応が、クレーム対応の基本です。こうすることで、相手が自分の言いたいことを言うにつれて落ち着きを取り戻していきます。
ペーシングは相手に同調するだけでなく、相手をこちらのペースに合わせてもらうスキルとしても活用できます。
相手の言葉を引用するバックトラッキング
バックトラッキングは簡単に言えば「オウム返し」に近いテクニックです。会話では相手が使用した単語をさりげなく使ってみると、相手への関心度の高さを示すことができます。
たとえば、
「週末はなにをしていましたか?」
「友人とバーベキューを」
「いいですね!」
だと、ちょっとそっけないですが、
「週末はなにをしていましたか?」
「友人とバーベキューを」
「ご友人とバーベキューですか!いいですね!」
ではきちんと話を聞いている、聞き流していないという印象を与えることができます。
ペーシングは日常生活のなかで習得できる!
ペーシングを実践する際はまず「相手の真似をする」ことを意識してみると具体的にこのスキルがどういうものかを理解しやすいです。
真似のポイントとして「ミラーリング」「マッチング」「バックトラッキング」の3つのテクニックがあります。これはビジネスシーンだけでなく、普段の生活などでも意識することで着実に習得できるスキルです。
コミュニケーションスキルの教育研修などの導入としても使いやすく、従業員の意識向上にも役に立ちます。普段の生活を実践の場とするなど、スキル向上の機会は非常に多いので一度試してみてはいかがでしょうか?