ティール組織とは?「次世代型組織モデル」として注目されている組織形態について
ティール組織とは、階層構造や管理マネジメントの仕組みが存在しない、社員一人ひとりが裁量権を持って行動する組織形態を意味する言葉です。
ティール組織という概念は、コーチやアドバイザーとして世界各国で活動しているフレデリック・ラルー氏が2014年に執筆した原著『Reinventing Organizations』によって紹介され、新しいマネジメント手法として注目されるようになりました。フレデリック氏の考え方の特徴的な点としては「旧来のマネジメント手法は成果が上がっているが、実は組織に悪影響を与える可能性をふくんでいる」という指摘を行った点が挙げられます。
ティール組織では、組織内における上下関係や細かな規則、定例会や予算の設定といった旧来の組織構造や組織文化の多くを撤廃します。ティール組織は、意思決定に関する権限や責任のほぼすべてを社員個人に譲渡して、組織や人材に革新的変化を起こす「次世代型組織モデル」として世界中から注目されています。
フレデリック氏が提唱したティール組織を含む「組織モデル」は、組織や人の発達段階にたとえて「5つの組織モデル」で構成されています。
今回の記事では、ティール組織を含めた5つの組織モデルの概要と特徴についてご紹介します。
ティール組織とは?5つの組織モデルの概要と特徴について
ティール組織という言葉を提唱したフレデリック・ラルー氏は、米国の現代思想家であるケン・ウィルバー氏が自身の理論の中でさまざまな段階を色で分別したように、組織モデルや発達段階を「色」で分別しました。組織モデルを示す色は、それぞれ「レッド」「アンバー(コハク)」「オレンジ」「グリーン」「ティール」の5段階です。
ティール組織は、レッド組織以降の組織の進化を内包しています。ティール組織は突然変異的に誕生したわけではなく、進化の過程で必要なものを組み込んだ結果、必然的に生まれたといえるでしょう。
ティール組織を含む5つの組織モデルとは?
ティール組織とは、世界各国で活動を行っているフレデリック・ラルー氏によって提唱された概念です。
フレデリック氏の理論によると、組織は多くの場合、従来の価値観を大きく変えるような革命的変化に出会ってパラダイムシフトを起こし、意識の発達段階を次のステージへと進めます。組織のステージは、経営者やトップマネジメント層の意識の発達段階に比例して、進化していくとされています。
出典元『プロシェアリング』ティール組織とホラクラシーの違い〜2020年代も成長し続ける企業が探求すべき組織モデル〜
ティール組織を含む5つの組織モデルについて、ひとつずつ詳しくご紹介します。
- レッド組織(衝動型):個の力による支配
- アンバー組織(順応型):役割が明確な階層構造
- オレンジ組織(達成型):出世が可能な機械的組織
- グリーン組織(多元型):社員第一の格差がない社会?
- ティール組織(進化型):生命体や組織のような存在
1.レッド組織(衝動型)
レッド組織とは、人類が進化する過程の最古の組織モデルとして誕生した、最も原始的でシンプルな組織です。
レッド組織の特徴は「オオカミの群れ」とたとえられるような「圧倒的な力を持った特定の個による支配」です。現代においては、マフィアやギャングなどがレッド組織の代表例といえるでしょう。
レッド組織の思考パターンは「自分が全て」という非常にシンプルな自己中心的思考です。レッド組織の発達段階にいる人間は、自分以外の全ての存在を脅威と捉え、脅威を取り除くために力によって支配します。
レッド組織のリーダーは、常に高圧的な態度を取って恐怖を与え、メンバーを服従させることで組織の崩壊を防ぎます。力を持たない支配される側のメンバーは、より強いリーダーに従って気に入ってもらうことで、自身にとって安全な環境を確保しようとします。
レッド組織のメンバーにとってもっとも重要なのは「今の安全」であるため、短期的な行動が多く見られ、組織としての戦略性は高くありません。
2.アンバー組織(順応型)
アンバー組織とは、人類が狩猟中心の文化から農耕を営む社会になる段階で誕生した、秩序や統制といった共通の価値観や普遍的なルールを組み込んだ組織です。
アンバー組織の特徴は、いわゆる「ピラミッド型」といわれる「明確なランク付けがある階層型組織」です。現代においては、軍隊のような縦社会がアンバー組織の代表例といえるでしょう。
アンバー組織における各階層のメンバーは、組織のトップから明確な役割をあてがわれ、与えられた役割の遂行が求められます。アンバー組織は個人には依存せず、ルールを守りながら集団の中で安定した仕事をこなすことが重要になります。
アンバー組織は、同じ時期・手法で毎年の作業を繰り返すような組織においては安定感がありますが、変化の適応には弱く、競争よりも組織階層のヒエラルキーが重視されます。旧来型の企業には今でも残る形態ですが、環境変化への対応が難しいという点で、グローバル化が進む現代にそぐわなくなっていると指摘されています。
3.オレンジ組織(達成型)
オレンジ組織とは、社会や組織がさらに成熟していく過程で誕生した、環境変化へ適応するために発展した組織です。
オレンジ組織の特徴は、社長や社員といった階層構造的でありながら柔軟な組織体制を有していて、成果を上げた人材が昇進できる「実力主義」を取り入れている点です。
オレンジ組織は、グローバル企業を中心とした、世界的な視野を持つリーダーが率いる企業に数多く見られます。オレンジ組織は社会的な成功を最終目標に掲げて、プロセスやプロジェクト、マーケティングや開発、製品管理などの概念を組織モデルに組み込んで発展します。
オレンジ組織のリーダーは、経営工学的な視点から組織を俯瞰して、組織目標の達成と株主の利益を何よりも重視します。オレンジ組織では、将来ビジョンの実現に向けてさまざまな可能性に柔軟に向き合える一方で、従業員を「組織を最も効率よく動かすために配置するパーツ(経営資源)」として捉えるような、個人への想いやコミュニケーションを軽視してしまう一面があります。
オレンジ組織は、現在の企業・組織の雛形と言われており、現在の企業の多くはオレンジ組織だと評価されています。オレンジ組織のネガティブな一面として、変化への対応や生存競争が求められる働き方が、過度な競争や過重労働といった昨今の社会問題につながっていると指摘されます。
4.グリーン組織(多元型)
グリーン組織とは、オレンジ組織のような実力主義の階層構造に「ダイバーシティ」「インクルージョン」「ステークホルダーマネジメント」などの柔軟な概念を加えた組織です。
グリーン組織は「家族」とたとえらる組織体系で、トップダウンによる意思決定ではなく、現場の人々にも裁量があるボトムアップの意思決定プロセスが採用されています。レッドからオレンジまでの組織との大きな違いは、立場によらず個人の主体性や多様性を尊重しようという考え方が強い点です。
グリーン組織のリーダーは、働きやすい環境作りや業務の最大化をサポートする役割を担います。グリーン組織では、社員全員に共有された組織文化や価値観をもとに合意形成や意思決定をしていく「社員第一主義」が採用されています。
グリーン組織では、従業員それぞれが持つ感情や協調的なつながりが重視されますが、合意に至るまでの時間的な問題やどうしても全員が合意できない場合の意思決定のために、ピラミッド型の階層構造を維持しています。理想としては「平等主義」なのですが、最終的な意思決定権は依然としてマネジメント側にあり、現実として階層構造を維持しなくては組織として機能しないという課題があります。
5.ティール組織(進化型)
ティール組織とは、グリーン組織が必要最低限として維持している階層構造をも取り払って「セルフマネジメント」「ホールネス」「組織の存在目的」という3つの要素を重視する組織です。
ティール組織は、個人が自己実現を目指す過程で生み出される力を、組織が社会的使命を果たすための原動力として活用しようという意図があります。
ティール組織には管理者(マネジャー)やリーダーなどの役職が存在せず、上司や部下といった概念もありません。また、組織構成員のことを労働者や社員と表現するのではなく、メンバーや同僚と表現し、全メンバーに対して平等に権限と責任が与えられています。
ティール組織のメンバーたちは、組織に与えられた使命を常に意識しながら、自分ができる最善の行動を考えます。メンバーの「やるべきこと」と「やりたいこと」が一致した時、仕事に対する主体性とモチベーションが最大限に発揮され、組織としての生産性も大きく向上します。
ティール組織では、全ての決議に「合意」を求めません。コンセンサスを得ることが目的ではなく、目の前の課題の解決が本当の目的だとメンバー全員が正しく理解しているため、不毛な議論や無駄な会議が必要なくなるのです。
ティール組織の実現を目指すために、自社の組織の現状を明確化しよう!
ティール組織とは、階層構造や管理マネジメントの仕組みが存在しない、社員一人ひとりが裁量権を持って行動する組織形態を意味する言葉です。
ティール組織は「レッド」「アンバー」「オレンジ」「グリーン」と呼ばれる従来の組織とは大きく異なる、独自の組織構造や慣例、文化を持つ次世代型組織モデルです。ティール組織では、固定化された階層や役職など、従来では組織を運営する上で必要不可欠だと考えられていた多くの要素が撤廃されています。
ティール組織は段階を経て発達していくため、自社でティール組織の実現を目指す際には、自社の組織が現在いる段階とどのような発達が必要なのかを明確化しましょう。