Z理論とは?X理論・Y理論との関係や動機付けへの活用方法について

X理論・Y理論では上手くいかず生まれたZ理論とは?

X理論・Y理論とは、人間観・動機付けにかかわる2つの対立的な理論です。X理論・Y理論は、1950年代後半にアメリカの心理・経営学者ダグラス・マクレガー氏によって提唱されました。

X理論とは「人間は生来怠け者で、強制されたり命令されなければ仕事をしない」とする、性悪説にもとづいた理論です。Y理論とは「人間は生まれながらに嫌いということはなく、条件次第で責任を受け入れ、自ら進んで責任を取ろうとする」とした、性善説にもとづいた理論です。

X理論・Y理論は、社員のモチベーションマネジメントを行う上で、最適な動機付けを行う目的で生まれました。しかし、Y理論によるマネジメントがうまくいかなかったこと、X理論は命令に近いマネジメントに対してY理論は主体性を引き出すマネジメントなど相反する存在であることなどから、Y理論を改良したZ理論が開発されました。

今回の記事では、Z理論とX理論・Y理論との関係や、Z理論を社員の動機付けにつなげる方法などについてご紹介します。

Z理論とは?X理論・Y理論との関係や動機付けへの活用方法について

Z理論の提唱者と提唱された背景とは?

X理論とY理論が登場してから20年以上経ったのち、アメリカの経済学者であるウィリアム・オオウチ氏が「Z理論」を提唱しました。

Z理論とは、X理論とY理論の「いいとこどり」をした理論です。権利統制と命令統制による上からの押しつけ型であるX理論と、社員の自主性を尊重するY理論の間を取ったような、上下や横の良好なコミュニケーションが存在するという理論です。

Z理論は、従来の「日本型経営企業(J型)」と「アメリカ型経営企業(A型)」という単純な比較から抜けだし、どちらにも優良な企業は存在するとした理論です。

日本型経営システムの特徴とは?

オオウチ氏は、日本の特徴的経営システムは以下の7つであるとしています。

  1. 終身雇用
  2. 遅い人事考課と昇進(役職者になるのに10年等)
  3. 非専門的な昇進コース(複数の職場をまわり、ジェネラリストが育成される)
  4. 非明示的な管理機構(評価や意思決定の基準や目標が具体的な形で示されない)
  5. 意思決定への参加的アプローチ(重要な決定は稟議等という形態)
  6. 集団責任
  7. 人に対する全面的な関わり(職場だけではない人間関係の形成)

上記の特徴は1970年代の話ですが、現在でも色濃く、あるいはそのままの形で残っている日本企業は多くあります。

Z理論が提唱されるまでの経緯とは?

Z理論の研究の中でオオウチ氏は、日本企業とアメリカ企業を比較対照して「日本型経営は、X理論とY理論の良いところを集めたものではないか」という仮説を立てました。

オオウチ氏は、前項の7つの日本型経営システムを認識した上で、米国の多種多様な業界の管理職にインタビューを行いました。日本型経営の特徴であるということは隠して7つの特徴をリストにしたものを見せ、特徴に適合すると思われる会社の名前を各管理職に挙げてもらったところ、多くの管理職がIBMやヒューレット・パッカードといった世界的に優良企業とされている会社を挙げました。

オオウチ氏は、アメリカで産まれ発展してきた会社でありながら日本型経営の特徴を持っている会社を、J型(日本型)とA型(アメリカ型)と区別して「Z型」と名付けました。

Z理論を動機付けに活用する上でのポイントとは?

Z理論では「平等で親密」という温かな雰囲気が個人を動かし、細かく監視しなくても自発的に行動するとしています。企業としての体制が整っていれば、社員のモチベーションは自然とアップするという理論です。

Z型組織の特徴である平等主義的雰囲気では、組織に所属する一人ひとりが主体的に考え、細かい監視を受けずに自立的に働けるようになるメリットがあります。

Z型組織の平等主義的雰囲気を実現するためには、J型組織のようなハイレベルのやる気や忠誠心といった、組織とメンバーの信頼関係が必要不可欠です。仕事に対するやる気も組織に対する忠誠心も無い社員の自主性に任せた組織運営では、当然ながら企業は成り立ちません。

Z型組織のデメリットとしては、昇給や昇進において性差別や人種差別が起きやすい点が挙げられます。「親密さ」や「信頼関係」が悪い方向に常態化して「馴れ合い」になると、文化的に異質な人材を評価しなかったり排除したりするようになるため、注意が必要です。

X理論・Y理論・Z理論は自社の状況に合わせて選ぼう!

Z理論とは、権利統制と命令統制による上からの押しつけ型であるX理論と、社員の自主性を尊重するY理論の間を取った、X理論とY理論の「いいとこどり」の理論です。

Z理論は、X理論とY理論が登場してから20年以上経った1970年代に、アメリカの経済学者であるウィリアム・オオウチ氏が「優良な経営がなされている組織に見られる特徴」として提唱しました。

Z理論の特徴である平等主義的雰囲気では、組織に所属する一人ひとりが主体的に考え、細かい監視を受けずに自立的に働けるようになるメリットがあります。しかし、X理論・Y理論・Z理論が提唱された1950年代~1970年代と現代とでは、人の価値観や労働環境などは大きく変化しています。

X理論・Y理論・Z理論を活用する際は、理論の本質である上司や部下とのコミュニケーションの重要さを意識して、社員のモチベーションマネジメントの参考にしましょう。

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