STAR面接の目的は「採用ミスマッチの防止」
STAR面接とは、行動面接における最も有名なフレームワークのひとつです。行動面接とは、応募者の過去の行動に焦点を当てて質問を投げかけることで、応募者の価値観や人物特性を見極めるために行う面接手法です。
STAR面接の目的とは、応募者のスキルや経験の確認ではありません。自社に合う人材か、自社で活躍しやすい人材かどうかなど、入社後のパフォーマンスを見極めて、採用のミスマッチや早期離職を防止することが、STAR面接の真の目的です。
中小企業こそ、面接で採用のミスマッチ防止を意識するべき理由
株式会社ONEが行った、関東圏内の中小企業人事担当者対象「採用面接の悩みに関するアンケート調査」によると、半数以上が、早期離職しそうな人材や自社に合う人材を面接で見極められないことに頭を悩ませていることが分かりました。
出典元『ONE GROUP』早期離職が深刻化する今、採用したいのは「優秀な人材」より「長く働ける自社に合う人材」
中小企業白書の発表では、大企業からの中小企業への転職者よりも、大企業から大企業へ転職してしまう人の数の方が多いことが明らかになっています。人材不足が加速するいま、人材獲得競争において多くの中小企業が苦戦するトレンドは、これからも続くと予測されます。
早期離職しそうな人材などの採用してはいけない人材を採用してしまわないこと、つまり「採用のミスマッチ防止」を意識することが、採用面接において非常に重要になっているのです。
STAR面接で採用のミスマッチを防止するための質問例3つ
STAR面接では、過去の行動についての背景や当時の役割、実際に何を行ってどのような結果を導き出したのかを、具体的に掘り下げていきます。
STAR面接とは
STAR面接とは、Situation(状況)Task(課題)Action(行動)Result(結果)の頭文字をとった言葉です。S→T→A→Rの順番に、過去の行動について質問をすることで、応募者の人物特性を実態に即した形で把握できるというメリットがあります。
Situation(どんな状況だったのか)
・状況、環境、背景、目標、きっかけ、チーム体制など
Task(どんな課題・役割を担ったのか)
・課題、職務、任務、役割、難易度など
Action(具体的にどんな行動を取って)
・具体的な行動、その理由、周囲からの助言、創意工夫、軌道修正など
Result(どんな結果・成果を導き出したか)
・結果、成果、学んだこと、いま振り返って改善すべきことなど
STAR面接は、入社後に似たような状況設定や環境に置かれた際、どのようなパフォーマンスを発揮するかの予測に役立つのです。自社で重視する評価基準について、STAR面接を実施することで、採用のミスマッチを未然に防げるというわけです。「主体性」「ストレス耐性」「チームワーク」という評価基準を見極めたいケースを例に、質問例を紹介します。
質問例1.「主体性」を見極めるためのSTARフレームワーク
(Situation)
「組織全体の目標に対して、あなた個人ではどんな目標でしたか?」
↓
(Task)
「難易度は高いと感じましたか?低いと感じましたか?」
↓
(Action)
「まず最初に何を行いましたか?」
「周囲に助言を求めましたか?」
「どのように目標を達成して行きましたか?」
↓
(Result)
「与えられた目標に対するあなたの成果は?」
「主体的に取り組む中で得られたことは?」
質問例2.「ストレス耐性」を見極めるためのSTARフレームワーク
(Situation)
「最も心理的負担を感じた仕事は?」
「どのようなことを最も負担だと感じましたか?」
↓
(Task)
「その時のあなたの職務、役割は何でしたか?」
↓
(Action)
「どのように課題に向き合いましたか?」
「任務を全うするために、工夫したことはありますか?」
↓
(Result)
「どのような成果を出しましたか?」
「同じ仕事を任されたとしたら、改善できることはありますか?」
質問例3.「チームワーク」を見極めるためのSTARフレームワーク
(Situation)
「最もチームワークを発揮できた経験についてお話しください」
「その時のチーム体制は?」
「チームワークを発揮できたきっかけは何だったと思いますか?」
↓
(Task)
「チームにおけるあなたが果たした役割は?」
↓
(Action)
「チームワークを発揮させるために、あなたが働きかけたことは?」
「その理由を教えてください」
「良いチームワークを維持するために、何をしましたか?」
「その理由を教えてください」
↓
(Result)
「チームであげられた成果は?」
「チームとして目標を追いかける中で学んだことはありますか?」
STAR面接を実施する際に気をつけること
STAR面接を実施するにあたり、注意すべきことを2つ紹介します。
1つ目は、STAR面接での質問を準備する前に、自社が求める人物像を明確にし、評価したい項目と評価基準を言語化しなければならない、という点です。
複数の面接官で共通した評価項目と評価基準を持つことで、同じ目線で採用合否を判断できる状態を構築できます。共通の目線が無いと、STARというフレームワークを導入したとしても、採用合否を判断するところで起きているミスマッチは、防ぐことができません。
2つ目に注意すべきことは、STAR面接を含む行動面接では、あらかじめ決められた質問に則って会話を掘り下げていくため、圧迫面接だと感じられる場合があるということです。
面接官の印象が、内定受諾を大きく左右するという事実もあります。面接で会話を掘り下げていく際の、基本的な質問術を抑えておくべきです。
STAR面接を行う際は、応募者のメリットも意識しよう
STAR面接では過去を振り返り、当時の意思決定や行動について掘り下げていくため、応募者自身の自己分析にも役立ちます。応募者自身が気がついていなかった部分について、自己理解が深まることは、STAR面接に臨む応募者のメリットといえます。
面接官にとって採用面接とは、自社に合う人物かどうかを短時間で見極めなければならない、プレッシャーのかかるものです。応募者の自己理解を支援しながら自社へ入社する動機付けを行うことができれば、応募者のエンゲージメントは向上し、入社後早期離職の防止にも役立つのではないでしょうか。
STAR面接の効果をより一層上げるため、あらかじめミツカリなどの適性検査を実施して、聞くべき質問の目処を立てることもおすすめです。採用面接を、適性検査で把握できたことの再確認を行う場にすることで、応募者見極めの効率アップを図ることができるでしょう。