注目されるアメリカのHRテック(HR Tech)サービス10選【2017年版】

2018年版の記事は「今注目の海外HRテックサービス10選【2018年版】」をご覧ください。

HRテック(HR tech)が生まれた背景

HRテック(HR tech)が生まれた背景として、働き方の急速な複雑化に伴い、企業はより多様なスキルを評価する必要がでてきました。心理学や統計学などの学問の応用が進み、組織文化や社員の働きがいが会社の利益に影響があることも徐々にわかってきました。

採用担当者・人事担当者に期待される業務は、採用から組織管理まで、より複雑になっていると言えます。しかし業務が複雑になればなるほど、採用・人事担当者への負担も大きくなります。

採用担当者・人事担当者への負担を軽減するサービスを開発・提供する会社が、HRテック企業です。シリコンバレーをはじめとした、今勢いのあるアメリカHRテック企業では、求職者と企業側を効率よくつなげ、組織をより効率的に管理するためにデータや人工知能(AI)を活用しています。

HRテック企業の台頭には、「ピープルアナリティクス」という考え方の発展が背景にあります。2000年代前半に、メジャーリーグで当時は弱小チームだったオークランドアスレチックスが資金不足ながらも、統計学を駆使した人材マネジメントで好成績を出したことなど、ピープルアナリティクスをビジネスに生かそうという流れが出て来ました。米国シリコンバレーを中心に、マーケティングと人事業務を融合させたような業務を担当するピープルアナリティクス専門の新しい役職が増えて来ました。

2010年頃になると、そのようなピープルアナリティクスの業務をより効率化、一般化して、より多くの人事担当者に使えるようにするサービスを提供するHRテック企業が台頭して来ました。

この記事では、そのHRテック領域で今もっとも勢いのあるアメリカのスタートアップ10選を、CB Insightの「Mosaic指標」に基づいて紹介します。

今後伸びそうなアメリカのHRテックサービス10選

1位 Culture Amp

CultureAmp

  • 資金調達総額:3600万ドル
  • 創業年:2015
  • 場所:サンフランシスコ、ニューヨーク
  • https://www.cultureamp.com/

匿名性のエンゲージメント調査、従業員満足度調査、180℃、360℃フィードバックを含むオンライン社内調査を提供する。サーベイは産業・組織心理学者や統計学者により開発されており、より効率的で科学的な組織文化作りに役立つツールになっている。顧客には組織文化を重視するAirbnbなどがいる。日本では、リンクアンドモチベーションのモチベーションクラウドなどが類似のサービス。

2017年6月にシリーズCで約2000万ドルの資金調達をし、今もっとも勢いのあるオーストラリア・メルボルン発祥のHRテック企業。

2位 GlassDoor

GlassDoor

  • 資金調達総額:2億100万ドル
  • 創業年:2008
  • 場所:ミルバレー(カリフォルニア)
  • https://www.glassdoor.com/

GlassDoorの求人サイトの特徴は、利用者によって作られた企業の評価、CEOの評価、給与明細、面接での質問、オフィスの写真などの情報が豊富なこと。C向けサービスはよりわかりやすく具体的な仕事検索を効率的に提供することだが、B向けのサービスはその豊富なデータや応募管理システムを使って自社ブランディングや採用プロセスの効率化を図ることができる。応募者と企業側、双方向にメリットのあるサービスとなっている。

2013年以降、合計で1億6000万ドルを調達するなど、順調に成長しているHRテックのユニコーン企業(未上場でありながらも時価総額が10億以上の企業)。

3位 SmartRecruiter

SmartRecruiter

250以上の膨大な求人サイト(LinkedInなど)を統合して、より一層採用担当者が候補者を探しやすくする方法を提供。どのリクルーティングプラットフォームを使えば良いか分からないという採用担当者の悩みを即座に解決してくれる。

2016年にシリーズCラウンドで3000万ドルを新たに調達したサンフランシスコにある創業5年目のスタートアップ。

4位 WayUp

WayUP

  • 資金調達総額:2750万ドル
  • 創業年:2014
  • 場所:ニューヨーク
  • https://www.wayup.com/

大学生に特化した求人サイトで、スマートフォンから簡単にテキストメッセージなどで連絡が取れるのが特徴。機械学習により、企業側が探している人材を効率的にかつ正確に提案する。

2017年にシリーズBラウンドで新たに1850万ドルを調達した。

5位 Entelo

Entelo

  • 資金調達総額:4000万ドル
  • 創業年:2012
  • 場所:サンフランシスコ
  • https://www.entelo.com/

ウェブ上にあるありとあらゆるビーグデータから顧客に最適な採用候補者を選び出す人工知能を開発している。データはGithubやFacebook、Linkedinなどのバックグラウンド情報からかき集めて、一つのプロフィールとして自動作成され表示される。また、機械学習を応用し、これから転職しそうな人材を予測し優先的に表示する技術を使ったダイレクトリクルーティング支援サービスである。Facebookも顧客先の一つである。

2017年のシリーズCラウンドで2000万ドルの資金を調達したスタートアップ。

6位 SnagAjob

Snagajob

  • 資金調達総額:1億6800万ドル
  • 創業年:2006
  • 場所: バージニア
  • http://www.snagajob.com/

オンデマンドとアルバイトが専用の求人サイト。オンデマンドサービスやより柔軟な働き方の増加に伴うニーズに合わせて、レストラン、小売、病院、ヘルスケアなど、幅広い仕事で募集を出せ、検索できる。スマートフォンとの互換性も高く、求職者、人事担当者双方に使いやすい設計となっている。

創業自体はやや古いが、2016年以降に1億1990万ドルの大型資金調達をした。

7位 Reflektive

Reflektive

リアルタイムで社員のエンゲージメント、パフォーマンスを分析するタレントアクイジション(タレント人材獲得)に特化した管理ツール。360℃フィードバックなどレビューシステムを充実させて、社員の成長をリアルタイムに計測できる。組織文化を強化したいが何からすれば良いか分からない人事担当者の悩みを解決する。

2017年にシリーズBラウンドでAndreessen Horowitzなどのシリコンバレーで著名な投資家から2500万ドルの資金調達をした。

8位 iCIMS

iCIMS

  • 資金調達総額:9100万ドル
  • 創業年:2012
  • 場所:ニュージャージー
  • https://www.icims.com/

SaaSベースのタレント人材獲得ソフトウェアを提供する。自社のトップパフォーマーの分析、採用要件の定義・作成、さらにはそれに沿ったリクルーティングなどを全て一括管理できる。タレント人材獲得を総合的にかつ簡単にサポートしてくれるソフトウェア。組織拡大に伴い組織文化を見直して強化したい採用担当者に最適。

2015年にシリーズBラウンドで5600万ドルの資金調達。

9位 Gusto

Gusto

  • 資金調達総額:1億7600万ドル
  • 設立:2012年
  • 場所:サンフランシスコ、デンバー
  • https://gusto.com/

経理、福利厚生、採用と、人事に関する幅広い作業をシンプルにかつ一括で管理できる「All in One」型プラットフォームを提供。経理に関しては、支払い確認や確定申告等をスムーズに行うことができる。顧客は従業員が100人以下の中小企業やベンチャー企業にフォーカスしている。人事が他の事務作業を並行して行わなければならない小さめの企業の人事担当者の悩みを解決してくれる。

2015年以降、1億5000万ドルを調達している順調なスタートアップ。

10位 Lever

Lever

  • 資金調達総額:3280万ドル
  • 設立:2012年
  • 場所:サンフランシスコ
  • https://www.lever.co/

エントリーシート受付から入社までの採用フローを一括管理するソフトウェア。候補者間との面接日時設定やEメールのやり取りを自動的に行ってくれる。採用担当者の候補者管理にかかる時間とコストの大幅削減を目的としたサービス。

2016年にシリーズBラウンドで2000万ドルを調達した。

CB InsightsのMosaicについて

今回のランキングは、CB InsightsのMosaicという指標に基づいて選出しています。
Mosaicは、以下の3つの独立した要素を定量化し、その合計値から算出されます。

  • Momentum – ソーシャルメディア、メディア露出、アプリ・ウェブ訪問者数、採用数、契約数を他の会社との比較を考慮し算出。
  • Market – 資金、調達額、拡大スピード、契約数など、市場での活動量を定量化。
  • Money – 資金の回転率、投資家のクオリティーなど、資金をどれだけ効果的に運用しているかを定量化。

Mosaicは会社が伸びる可能性と成長スピードを測る一つの指標であると言えます。
なお、Mosaicはメディア露出率やウェブページ訪問率をリアルタイムで計測しているため、リアルタイムで変動します。今回の10選は、2017年6月27日付に基づいています。

HRテックの目的は人事担当者の負担を減らすこと

今回の10選をタイプ別に分けると、組織管理系(Culture Amp, Gusto, Lever)、求人サイト(GlassDoor, SmartRecruiter, Snagajob)、タレント人材獲得(Reflektive, iCIMS)になりました。10社中7社がピープルアナリティクス発祥の地、シリコンバレーに集まっていました。

組織管理系のサービスは、人事の負担をより軽減するためにテクノロジーが使われています。求人サイトでは、大学生などより特化した検索をデータを使ってより正確に、効率化する動きが見られます。さらに、ピープルアナリティクスの中核となるタレント育成や組織文化作りにも、テクノロジーが効率的に組み込まれているサービスがあります。

トップ10選を見てみると、決して人工知能が人事の判断を代行しているようなサービスはなく、複雑で多様化した人間関係(組織内や組織外とのマッチング)を効率よく管理する為にデータや人工知能を活用するケースが見られます。

検索プラットフォーム系のサービスは、データの量が多いだけに効率的に候補者を絞っていくことが難しいという採用担当者のニーズをうまく解決してくれます。

管理系サービスでは、データの活用と管理のしやすいソフトウェアによって、組織文化作りという主観的な作業をより客観的に、正確に実現できます。

今勢いのあるアメリカのHRテックサービスは、人事担当者の負担を減らすという大きな目的を、様々な場面で効率的に解決してくれるものと言えます。

参考URL(確認にはログインが必要です)https://www.cbinsights.com/collections/43205/company

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