母集団形成の重要性や関係性を知ろう
帝国データバンクの調査によると、正社員不足だと感じている企業は51.1%に上るというデータが出ています。これにより上過半数の企業で人手不足であることが読み取れます。
一方で新卒の3年以内の離職率は長らく30%程度で推移しており、人事戦略において採用人数を確保することと離職を防ぐことが求められています。
そこで今回は採用計画における母集団形成の重要性や関係性、目的について詳しく説明したいと思います。
多くの企業が母集団形成で苦戦を強いられています。ご存知の通り、少子化の影響で新卒採用の対象となる学生の絶対数が減少しています。2007年時点では80万人を超えていた就職希望新卒者も、2018年には70万以下となっています。2018年に生まれた子供が、早くとも高卒で就職を希望する18年後の2036年まではある程度正確な予測が可能であり、今後も減少傾向が続いていく見込みです。
出典元『株式会社ベネフィット・ワン』就職希望新卒者(大卒、専修卒、高卒)の推移予測
一方で、多くの企業が労働力不足を認識しています。正社員が不足している企業は51.1%と過半数を超えています。
労働力不足を解消するために、多くの企業が採用強化に望んでいます。2019年新卒採用は、2018年よりも増やす見込みの企業が33.6%、減らす見込みが6.3%と、多くの企業が採用人数を増やす目標を立てています。
出典元『株式会社ディスコ キャリタスリサーチ』2019年卒 採用活動の感触等に関する緊急企業調査
2016年と比べて、2017年の中途採用のほうが厳しかった、2016年と同じぐらい厳しかったという企業は85.5%と、非常に多くの企業が中途採用の厳しさを実感しています。
出典元『中途採用サポネット』中途採用状況調査 2018年版(2017年実績)
人材獲得競争が激化し、働き方改革への対応等の人事業務の負担が増加している中では、効率的な母集団形成の重要性が増しています。やみくもに母集団形成を行うのではなく、採用予定人数を充足させるためには、どの母集団方法で何人の求職者を集めるのか、客観的な視点で目標を立てる戦略的な運用方法が必要です。
今回は戦略的な母集団形成を実現するために、どのような方法で母集団形成戦略を立てたら良いのかについて説明します。
戦略的な母集団形成を実施する方法とは
戦略的な母集団形成を実施するために、おおまかな採用計画のフローについて再確認しましょう。
おおまかな採用フローとは
ざっくりとした採用フローは、以下の4工程に分けられます。
- 採用計画立案
- 求職者を集める
- 人材を選定する
- 内定、採用
1.採用計画立案
やみくもに人材募集をするのではなく、事前に「どのような人材を求めているのか」「どんな強みで応募者にアピールしていくか」などということを考える必要があります。求める人材を定めていなければ、面接や現場で「この人物は優秀でない、教育コストなどが大幅にかかるが仕事を覚えてくれない」などといった人材が集まってしまうだけでなく、そもそも応募者が来ない可能性もあります。
会社が蓄積しているノウハウや人事経験に基づいた採用計画を立てることが多いと思いますが「昨年もこうだったから」と同じことを行うのではなく、常に「この方法で最適なのか」を見直す必要があります。
時代に合った新しい企画を提案したり、場合によっては採用の方針を変えていったりすることも大切です。
計画をたてる際には以下の要な事項について取り決めておくと良いでしょう。
- どの事業部を強化するか
- 何名採用するか
- いつまでに必要か
- 採用する人材にどんな能力を求めるか
- 雇用の条件
- 給与、待遇
- 募集コストをどれだけかけるか
- 採用ルート、採用方法
2.求職者を集める
採用計画に基づいて、実際に求職者を集めるための行動をおこしていきます。
「就職サイトを利用する」「SNSを利用する」「合同説明会に参加する」など求職者を集める手法は複数ありますので、時差に合った手法を選ぶようにします。
採用規模の拡大や市場の縮小により、新たな方法を取り入れる必要が生まれる可能性もあります。求職者をどれだけ集めるのかの数だけでなく、どんな求職者を集めるのか(どんな求職者が集まるのか)の内容も重視して、方法を取捨選択する必要があります。
無料で使用できる手法もある一方で、高額なコストがかかるものも多いので、費用対効果を考えつつ求職者の募集をしていくことが重要です。
3.人材を選定する
応募してくれた人材の中から、書類審査、筆記試験、適性検査、面接などを行い、自社が求めている人材かどうかを見極めます。
もし自社に合った人材ではない人を採用してしまった場合は、入社後に「こんなはずではなかった」などというミスマッチが発生してしまいます。早期離職は、選考辞退・内定辞退よりも大幅なコストが発生してしまいます。誰を採用するのかの見極めは、人一人の人生を変えかねない要素でもありますので、慎重かつ正確に評価することが求められます。
4.内定・採用
採用する人物を選定して内定を出します。内定を出すまでの選考期間が短すぎれば、応募者の人物像や性格などがしっかりと見極められないまま合否を決めてしまう可能性がありますし、逆に期間が長すぎると、優れた応募者ほど他社での内定が決まってしまう可能性も高まりますので、内定までの期間にも気を配る必要があります。
当然のことながら、内定から採用までの期間もあります。内定辞退が起こる可能性もありますので、内定者へのクロージングやフォローを行いましょう。
母集団形成に求められることとは
母集団形成は「求職者を集めること」です。しかし自社が求める人材像に近い母集団を形成しなければ、採用の成功確率を高めることができません。
単純に応募者の数を集めただけでは、選考にかける費用や手間がかかるだけになってしまう可能性があります。「結局自社に合った人材が採用できなかった、早期離職してしまった」では意味がありませんので、自社の求める人物像にあった求職者を多く集めて、効率よく採用することが重要です。
どの程度の母集団を形成しなければならないのか?
採用予定人数が10人だったとしても、自社に応募してくれた人材が5人だけならば、採用予定人数を充足することはできません。逆に10人の採用を行うために、1万人~10万人もの応募者を集めたとしても、スクリーニングや採用選考の工数だけでなく、広告費用や人事部の人件費などを無駄に使ってしまうことになります。
採用予定人数から、何人ぐらいの母集団形成を行う必要があるのかを逆算し、過不足があれば母集団形成方法の見直しなどを行うことが重要です。
単純な例を挙げます。説明会参加者が200人で、応募者が100人、書類選考通過者が60人、1次面接通過者が35名、2次面接通過者が20名、最終面接通過者(内定者)が12名、入社人数が10人の場合を考えます。説明会のみで来年度の採用人数15名の目標を達成するためには、説明会参加者を300人に増やせば良いことが計算できます。
実際には様々な母集団形成方法があるため、ここまで単純ではありませんが、一つの目安として活用できます。1回の会社説明会の参加者が100名であるとしたら、来年度は3回~4回程度開催することが目安となります。
母集団形成の方法によって、応募率や選考通過率は異なります。人材紹介会社・ヘッドハンティング会社であれば、選考通過率はより高くなるでしょう。
母集団形成方法ごとに、応募率や選考通過率のデータを取得しておくことは、戦略的な母集団形成を実施する第一歩です。更に掘り下げると、どのような応募者であったか、会社説明会や求人票ではどのようなことを説明したのか、入社後の活躍具合はどの程度かといったデータも参考になります。取得・活用すべきデータは多いですが、有効活用できれば、客観的な事実に基づく採用戦略の立案が可能となります。
母集団形成を戦略的に組み立てよう!
母集団形成は単に人数を集めることが目的なのではなく、求める人物像を明確にしたり、集めるための方法を選択したりする必要があります。
採用人数から逆算して、どの程度の母集団を集めないといけないのかを戦略的に組み立てることも非常に重要です。母集団形成方法ごとに集める規模は異なるため、各方法ごとに算出することが、効率的な母集団形成に欠かせません。
労働市場も都度変化しているため、「昨年もやっていたから」という考え方ではなく、何が成功要因だったか、失敗要因であったか、ということを振り返りながら、戦略に落とし込んでいく必要があるでしょう。