今後の採用活動では採用マーケティングが重要となる
現在、多くの企業では採用難・労働者不足に陥っています。帝国データバンクの調査によると、正社員不足を感じている企業は51.1%と、過半数になったとの報告があります。従業員規模別で見ると、大企業では59.1%、中小企業では49.1%となっています。
出典元『帝国データバンク』特別企画 : 人手不足に対する企業の動向調査(2018 年 1 月)
従業員が不足していると考えている企業は、年々増加傾向にあります。(望ましくないですが)リーマンショックのような経済危機が起こらない限りは、正社員が不足している企業の割合は増加していくでしょう。
出典元『帝国データバンク』特別企画 : 人手不足に対する企業の動向調査(2018 年 1 月)
採用での課題も深刻となっています。リクルートキャリアの就職白書2018では、採用目標人数を達成できた企業数は半数未満であるとの調査結果があります。従業員が不足しているのに採用目標数を達成できない状態が続いてしまうと、現在よりも企業における労働者不足が深刻化することは目に見えています。
同調査によると、新卒採用の話とはなりますが、2019年卒採用活動で最も減ると考えられているのが「新卒採用活動の母集団」です。次点は「選考応募人数」となっています。人材不足を解消する上での課題が「母集団形成」にあると考えられます。
「採用マーケティング」とは、減少しつつある母集団の課題を解決するための戦略・手法です。
そもそもマーケティングとは、消費者が求めているサービスや商品を供給する際に、効率的に提案するために適切な販売活動や宣伝活動を行うことを指します。従来のマーケティングの概念を人材の採用に最適化したものが採用マーケティングです
採用マーケティングが注目され始めた背景としては、「売り手市場化(求人数に対して求職者数が相対的に少なくなること)」による優秀な人材の獲得競争激化が挙げられます。優秀な人材は一部の人気企業に集中し、それ以外の企業ではそもそも人が集まらなかったり、集まっても意欲の低い人材や定着率の低い人材が増え、安定した採用が難しくなっています。
売り手市場化のトレンドの流れを受け、採用マーケティングが注目されるようになりました。先進的な取り組みをしている企業では、企業と人材のマッチングにフォーカスし、ターゲットのニーズに合わせた効果的なアプローチをすることでこれらの問題を解決に導いているのです。
採用マーケティングとは?
「採用マーケティング」は採用活動に「マーケティング」の視点を取り入れたものです。ここでの「マーケティング」とは、ターゲットの求めるものを提供し、継続的に「売れる」仕組みを作るものを差します。
この仕組みを採用活動に応用し、自社のターゲットである優秀な人材に自社を選ばれるように「仕組み」を作ることが、採用マーケティングの目的となります。
採用マーケティングと採用広報の違いとは?
「採用マーケティング」に近い言葉で「採用広報」というものがあります。どちらも戦略的に人材を獲得していく手段という意味では同じですが、言葉の定義としては若干異なるものがあります。
「採用広報」の「広報」とは新聞やメディアなどの媒体に記事として取りあげて貰うことを指し、お金を払って広告を行う「宣伝」は含まれません。
「採用マーケティング」においては、広報はもちろんお金を支払って行う「宣伝」や集客なども含まれており、「採用マーケティング」の方が幅広く、人材採用のためにありとあらゆる事を行っていくことが違いとなります。
採用マーケティングの具体的な内容とは?
採用マーケティングの具体的な内容として、6つのフローを繰り返し行っていく業務が挙げられます。6つのフローを繰り返し行っていくことにより、優秀な人材を自社に振り向かせるのが、採用マーケティングとなります。
採用マーケティングは、大きく分けて6つのプロセスから成り立っています。①自社の深い理解②ターゲット(必要な人材)の決定③ターゲットのニーズの調査④ターゲットの欲しいコンテンツ作り⑤コンテンツの発信⑥継続的な改善です、従来の人事の仕事の中心であった採用広報は、このプロセスの一部(⑤)に過ぎません。
①自社の深い理解
効果的にターゲットを絞り戦略的な採用活動を行っていくためには、徹底的な自社理解が不可欠です。
自社の強みは何か、何のためにどのような人材を必要としているのか、人事担当者はそのような事情に社内の誰よりも精通していなければなりません。
②ターゲット(必要な人材)の決定
採用マーケティングでは、採用したいターゲットに対して効果的なアプローチを行うことが重要です。
どのような人材を求めているのかを明確にしておくことは、その後のコンテンツ作りや選考プロセスに大きな影響を及ぼします。
③ターゲットのニーズの調査
ターゲットを明確にしたら、ターゲットが何を求めているのかを調査します。
ニーズに対して、自社のどのような魅力をどのように発信していくのが効果的なのか、コンテンツづくりの基礎となります。
④ターゲットの欲しいコンテンツ作り
自社の特徴とターゲットのニーズをすり合わせ、ターゲットに対して魅力的に映るようなコンテンツを作ります。
⑤コンテンツの発信
作り上げたコンテンツを発信していきます。いわゆる広報の仕事です。
作り上げたコンテンツを使い自社の存在や魅力をターゲットとなる層に広く認知させるのが主な目的となります。
⑥継続的な改善
採用活動が終わったあとは必ず振り返りを行い、次回に繋げます。
市場の動向やニーズは常に変化しています。市場やニーズの変化に敏感に対応していくことは継続的な「売れる」仕組みづくりの根幹となります。
採用マーケティングのメリットとデメリット
採用マーケティングのメリットとしては、今までの採用手法と比べて、自社の採用したい人材が明確になり、伝えたいメッセージも具体的になるため、自社の強みが伝わりやすい点が挙げられます。ダイレクトに欲しい人材に対して、自社の魅力を伝える事ができるようになります。
デメリットとしては、広報と違って表に見えない作業が多くを占めることや、自社のメッセージとして外部に伝えることになるため、上長や経営陣の理解が必要な側面もあります。市場の動向に応じて改善し続ける必要があるため、コストが掛かるなどのデメリットも発生してしまいます。
採用マーケティングが必須な時代が来る
今後も、売り手市場が加速していくと優秀な人材は各社の争奪戦となっていきます。
そのような状況の中で自社の求める人材を効率的に採用するためには、採用マーケティングが必須になる時代がくると言えるでしょう。
採用マーケティングに積極的に取り組んでいる企業が少ない今であれば、差別化をはかれると言えます。このタイミングで採用マーケティングをはじめることによって、優秀な人材の争奪戦に一歩リードして開始することが出来るようになります。