圧迫面接はいまや時代錯誤、母集団形成や業績にも悪影響
圧迫面接とは、わざと意地悪な質問や威圧的な態度を取って、相手のストレス耐性を図ろうとする面接のことです。日本国内だけではなく海外でも行われている面接手法で、英語では「stress interview(ストレスインタビュー)」と呼ばれています。
新卒採用・中途採用ともに、圧迫面接にどう備えるべきかといった「対処法」もWeb検索や書籍などで多く出回っています。「圧迫面接とは一般的な面接手法だから実施してもなんら問題ない」と捉える面接官や経営者も少なくありませんが、実はそれは大きな勘違いです。
面接で受けた印象によって、選考や内定を辞退する人があとを絶ちません。圧迫面接で受けたネガティブな情報を周囲に拡散したり、商品・サービスの利用を控えるようになるなど、母集団形成や業績にも悪影響を及ぼすことが明らかになっています。少子高齢化に伴い売り手市場が加速する現在の労働市場において、圧迫面接を続けるのは、非常にリスクが高い行為なのです。
新卒の就活時に圧迫面接を経験した人は約6割
リクナビの調査によると、新卒の就職活動で圧迫面接を経験したことはある人は63.7%と、過半数の学生が圧迫面接を経験しています。面接官の態度が横柄だったり、意見を全否定されるなどの典型的な圧迫面接のケースもあれば、「なぜ?」と繰り返し聞かれるなど面接での会話が「圧迫」っぽく感じさせるケースもあるようです。
出典元『リクナビ 就活準備ガイド』新卒の就職活動で圧迫面接を経験したことはありますか?
面接官によっては、決して故意にではなく無意識的に圧迫面接を行ってしまっていることもあります。学生が「圧迫面接」のように感じてしまえば、学生からの口コミなどによる風評被害を防ぐことはできません。学生視点で「圧迫面接になっていないか」、面接の内容や面接官としての態度を客観的に振り返ることが必要とされています。
Re就活の調査によると、第二新卒・既卒ともに7割以上の人材が、面接時に入社したくないと感じた経験があると回答しています。多くの企業が人材不足に悩み、採用候補者を集めるのにも苦労している中で、面接でのイメージ低下は深刻な問題です。
志望度が下がる理由として、第二新卒・既卒ともに「面接官の態度・話を聞く姿勢が悪かった時」が1位として挙げられており、2位に「圧迫面接を受けた時」が挙げられています。ストレス耐性を見極める目的だったとしても、入社意欲が低下して、内定辞退を引き起こしてしまっては本末転倒です。
圧迫面接をいますぐやめて応募者との良い関係を構築できれば、自社に合う人材の見極めに役立つばかりか、結果として採用に至らなかったとしても採用活動で重要な母集団形成や自社商品・サービスへの好感度向上にもつながるのです。
圧迫面接の意味や実施される目的とは?
圧迫面接とは、故意に意地悪な質問や威圧的な態度を取る面接手法です。具体的には以下の様な特徴が挙げられます。
- 応募者の発言に対して、常に否定的・批判的
- 応募者の発言に対して、興味を示さない
- 応募者を侮辱するような発言や態度をする
- 応募者に対して、威圧的・横柄な態度をとる
圧迫面接の目的とは
圧迫面接の目的とは、クレームや要望に対処するために必要なストレス耐性や機転が効くかなどの対応力を見極めることです。ストレス耐性を見抜くのに役立つ面接手法として、アメリカの企業で考案されたと言われています。
ストレス耐性は、どんな職種においても重要です。顧客対応が必要となる営業職はもちろん、社内での人間関係や困難な状況をいかに打破できるか、ビジネスにおいては不可欠な能力といえます。
圧迫面接は、採用面接であえて求職者にストレスを与えることで、反応からストレス耐性を見極めるためによく実施されてきました。しかし、いまやストレス耐性は適性検査などを用いれば正確かつ具体的に測定できること、入社後に変化しうるために売り手市場においては事前の見極めよりも入社後の育成が重要になることなど、ストレス耐性の重要性や見極め方も変化しています。ストレス耐性を見極めるための圧迫面接ではなく、圧迫面接を実施することでの企業にとってのデメリットやリスクについても事前に考える必要があります。
圧迫面接をいますぐやめるべき3つの理由とは
労働力人口は減少の一途で、リーマンショックなどの経済危機などが起こらない限りは、これからも売り手市場が続く見込みです。
大企業に比べて、求職者からの知名度がない中小企業(特に対企業向けビジネス)の方が数倍、採用しづらい状況に陥っています。デメリットやリスクの大きい圧迫面接は、いますぐにでもやめるべきなのです。3つの理由を紹介します。
【圧迫面接をやめるべき理由①】選考辞退が起こりやすくなる
面接で受けた印象は、会社へのイメージや入社意向度を大きく左右します。
せっかく自社にマッチする人材が選考に上がっても、圧迫面接で会社への印象を損なうと途中で選考を辞退される可能性が高くなります。運良く内定まで行っても、複数社から内定が出やすい現状で、最終的に内定辞退が発生してしまえば、採用コストはかさむ一方です。
【圧迫面接をやめるべき理由②】母集団形成への悪影響
圧迫面接によって心象を損なった結果、周囲の人に「あそこは受けない方がいい」「あの会社はパワハラが横行するブラック企業だ」など、ネガティブな情報が伝えられてしまう可能性があり、母集団形成に悪影響を与えます。
採用面接での会話がSNSで拡散されるようなことがあれば、被害はさらに拡大するでしょう。
【圧迫面接をやめるべき理由③】売上拡大の機会損失
圧迫面接を受けた会社に対して不快感や嫌悪感を持つようになり、商品・サービスの購買・利用を控えるという人も少なくありません。
ネガティブな風評がじわりじわりと広まれば、販売の機会損失につながります。社内のマーケティング担当がどんなに優れた販売戦略を立てても、「負の感情」が先立つようになってしまうと売上拡大は見込めません。
ストレス耐性を見抜くために「代替手法」の活用を
圧迫面接がNGだとすれば、ストレス耐性を見抜くための代替手法が必要となります。
適性検査を利用してストレス耐性を見極めるのは一案です。行動面接を導入して「ストレスがかかった状態で、過去どのように切り抜けたか」を掘り下げて質問することも有用です。
意図せず「圧迫面接」になってしまっているケースもあるので要注意です。求職者に圧迫面接だったと言われないようにするにはどうしたらよいのか、求職者視点で面接の印象を捉えることが大切です。「意図せずやりがちな圧迫面接の5例!応募者目線で考えよう(6月5日公開)」では、面接官が無意識に圧迫面接を行ってしまっている5つの例を紹介していますので、合わせてお読みください。
圧迫面接のリスクを知り、ストレス耐性は別の方法で見極めよう!
圧迫面接とは「クレームや要望への対応スキル」を見極めるために考案された手法です。自社が採用したい人材要件においてストレス耐性が重要だと判断するならば、まずはストレス耐性のなかでもどのような項目に秀でた人材がほしいのかを定義しましょう。
例えば、多方面からのクレームにテキパキと迅速に対応できる人材がほしいのなら、「トラブルに直面したときすぐに気持ちを切り替えられる」能力が重要です。高額商品の個人営業などであれば、気難しいお客様にもひるまずニーズを聞き出しお応えしていく「粘り強さ」が大切でしょう。
自社が求めるストレス耐性とは何かを明確にし、面接の前に適性検査を実施することをお勧めします。適性検査を行ったうえで面接を実施すれば、面接という限られた時間の中でも本当に見極めたい項目に絞って掘り下げて求職者のストレス耐性を把握できます。
やみくもな圧迫面接は、百害あって一利なしです。適性検査などのストレス耐性を科学的かつ具体的に計測できる方法を上手に活用すれば、ストレス耐性を精度高く見極めることは十分可能なのです。