OJTやOff-JTでの人材育成には助成金が支給される!
現在日本では、少子化にともなう労働人口の減少が深刻な問題となっています。
日本政府は労働人口不足の問題に対して、労働者一人当たりの生産性を上げることにより、少子化の影響を最小限に止めようとしています。
OECD(経済協力開発機構)の労働生産性の調査によると、日本の労働生産性は欧米諸国に比べて低く、OECD加盟国35カ国中20位とされています。日本の生産性は上位の国々の半分程度であることから、政府はかなりの危機感を抱いています。
出典元『公益財団法人 日本生産性本部』労働生産性の国際比較2017年版
日本の労働生産性の低さを改善するべく、政府が主導する働き方改革では「労働生産性の向上」にスポットライトが当たりました。労働生産性を向上させるためには人材育成が不可欠であることから、企業内での人材育成制度の導入を促進させるべく、人材育成を積極的に行う企業に対する助成金制度が導入されました。
今回の記事では、OJTやOff-JTを実施する際に申請できる助成金をご紹介します。
OJTやOff-JTへの助成金とは?助成金の種類や受給条件とは?
OJTやOff-JTは、日本政府が後押ししている人材育成手法の一つであるため、助成金制度が設けられています。OJTやOff-JTへの助成金は、人材開発支援助成金という助成金制度の一部コースで支給されます。
人材開発支援助成金は、中小企業に対する助成が手厚く、実際に生産性を向上させた企業へは助成金が割り増しされます。中小企業に対する助成が優遇されているのは、日本全体の雇用の約7割を中小企業・小規模事業者が担っているためです。
人材開発支援助成金とは?
人材開発支援助成金とは、従業員に職業訓練を実施した事業主に対して、訓練の経費や訓練中の賃金の一部が助成される制度です。
人材開発支援助成金のコースは7種類ありますが、今回はOJTやOff-JTが支給対象となる3種類のコースをご紹介します。
人材開発支援助成金では、いずれのコースでも自社で「訓練計画書」を作成し、計画通りに訓練を実施した場合に助成金を申請できます。また「生産性要件」を満たした場合、通常よりも多くの助成金が支給される仕組みとなっています。生産性要件については、厚生労働省の「生産性要件算定シート」を活用すると便利です。
- 特定訓練コース(OJT・Off-JT共に支給対象)
- 一般訓練コース(Off-JTのみ支給対象)
- 特別育成訓練コース(OJT・Off-JT共に支給対象)
1.特定訓練コース(OJT・Off-JT共に支給対象)
特定訓練コースとは、労働生産性の向上に直結するような訓練を実施した場合に、助成金が支給されるコースです。特定訓練コースの対象となる訓練には、以下のようなものがあります。
- 若年労働者への訓練
- 技能承継等の訓練
- グローバル人材育成の訓練
- 雇用型訓練
特定訓練コースは、対象となる訓練の種類が限られている代わりに、一般訓練コースよりも助成率が高いのが特徴です。カッコ内は中小企業以外の助成率・助成額となります。
- Off-JT実施の経費助成:45%(30%)
- Off-JT実施中の賃金助成:一人当たり1時間760円(380円)
- OJT実施中の賃金助成:一人当たり1時間665円(380円)
2.一般訓練コース(Off-JTのみ支給対象)
一般訓練コースとは、他のコースで対象とされていない訓練を実施した場合に、助成金が支給されるコースです。
一般訓練コースは、対象となる訓練の種類に細かい指定が無い代わりに、他のコースより助成率がやや低めです。
- Off-JT実施の経費助成:30%
- Off-JT実施中の賃金助成:一人当たり1時間380円
3.特別育成訓練コース(OJT・Off-JT共に支給対象)
特別育成訓練コースとは、以前はキャリアアップ助成金の人材育成コースとして実施されていた、非正規雇用労働者が対象となるコースです。特別育成訓練コースの対象となる訓練には、以下のようなものがあります。
- 一般職業訓練
- 有期実習型訓練
- 中小企業等担い手育成訓練
特別育成訓練コースは、特定訓練コースと同じく、助成率が高めに設定されています。カッコ内は中小企業以外の助成率・助成額となります。
- Off-JT実施の経費助成:実費
※中小企業等担い手育成訓練は対象外 - Off-JT実施中の賃金助成:一人当たり1時間760円(475円)
- OJT実施中の賃金助成:一人当たり1時間760円(665円)
※一般職業訓練は対象外
OJTやOff-JTは助成金を活用して実施しよう!
OJTやOff-JTを実施する際には、人材開発支援助成金制度を活用すれば、訓練にかかった経費や訓練中の賃金の一部が助成されます。
人材開発支援助成金は、あらかじめ計画書を作成・提出した上で訓練を実施する必要があるため、現在進行中の訓練は対象外になりますが、自社でOJTやOff-JTを実施している場合、助成金を受けられる可能性があります。
人材開発支援助成金の支給対象となる訓練施策は幅広いため、OJTやOff-JTを実施しているのであれば、支給対象となる可能性が高いです。これからOJTやOff-JTを導入する企業だけでなく、既に実施している企業でも自社のOJTやOff-JTが助成金の対象になるかを確認し、次年度以降の人材育成計画に活かしましょう。