OJTとは?企業におけるOJTの効果と実態とは?
OJTとは、企業が従業員の能力開発のために行う教育研修の手法の一つです。OJTは、英語の「On the Job Training」の略称で、実務を通して学ぶ訓練のことを意味します。
厚生労働省の調査によると、正社員に対する教育訓練で「OJTを重視する」「OJTを重視するに近い」と回答した企業は70%を超えおり、従業員の育成に対する企業の意欲の高さが伺えます。
リクルートワークスが東証一部上場企業に対して行った調査によると、人材が独り立ちするためには、OJTが上手く機能している企業では4.2年、OJTを実施してはいるが上手く機能していない企業では4.6年かかるという結果が出ています。
出典元『リクルートワークス研究所』人材流動性とOn the Job Trainingに関する探索的研究
OJTが機能していないと回答した企業に対して、OJTが機能していない理由を尋ねた調査では「市場とのコミュニケーション」「働き方の変化」などが理由として挙げられました。
出典元『リクルートワークス研究所』人材流動性とOn the Job Trainingに関する探索的研究
「市場とのコミュニケーション」では、市場環境の変化によって創造的なコミュニケーションが求められる中で、従来のOJTが機能しなくなっていることが原因として挙げられています。「働き方の変化」では、業務の効率化が進んでいく中で、指導や教育を行う時間が確保できなくなっていることが原因として挙げられています。
従来のビジネスでは、決められた通りに仕事をするマニュアルワークが求められていましたが、昨今は世の中の変化が激しくなり、知識や経験を活かして付加価値を生み出すナレッジワークが求められるようになりました。OJTが機能していないと感じる理由は、教育研修の内容が時代の変化に対応できていないことが原因なのです。
今回の記事では、OJTの基本となる4段階職業指導法やPDCAのサイクルにもとづいて、OJTによる教育研修の実施方法をご紹介します。
OJTによる教育研修の実施方法とは?
OJTを効果的に運用するためには、人事部や経営層がOJTのメリットや実施方法を理解しておくことはもちろんですが、実際に教育を行う各部門がOJTの意味や目的を正しく知っておくことも重要です。
OJTの認識に社内でズレがあると、人事部や経営層が現場にOJTを依頼したところで、効果的な教育研修が行われる可能性はほとんどありません。教育研修の効果や効率の向上を目指すためには、まずは社内でOJTについての理解を共有することが大切です。
OJTの意味や定義とは?
OJTとは、英語の「On the Job Training」の略称で、実務を通して学ぶ教育研修のことを意味します。反対に、新入社員の合宿や集合研修などの業務から離れて行う教育研修は、Off-JT(Off the Job Training)と呼ばれます。
OJTの起源は、第一次世界大戦までさかのぼります。当時のアメリカでは、従来の10倍の作業員の補充が必要となり、大量の新人を効果的に育成する必要がありました。新人育成プロジェクトの責任者を任せられたCharles Ricketson Allen氏が、大量の新人の育成方法として職務現場での実地研修を提唱し、研修方法を発展・改良して開発された「4段階職業指導法」が、OJTの始まりだと言われています。
4段階職業指導法とは?
OJTを実施する際は、従業員に仕事の全体像を理解させることを目的に、4段階職業指導法と呼ばれる以下の4ステップに分けて行う方法が一般的です。
- Show(やってみせる)
- Tell(説明する)
- Do(やらせてみる)
- Check(評価・追加指導する)
Showでは、実際に仕事をやってみせて、仕事の全体像を把握させます。
Tellでは、具体的に仕事の内容を説明し、仕事の意味や必要な理由を理解させます。
Doでは、ShowとTellを踏まえた上で、実際に仕事をさせてみます。
Checkでは、Doの結果を見て、できた部分の評価とできなかった部分の追加指導を行います。
OJTでは、Checkのステップが最も大切です。できた部分はしっかりと褒め、できなかった部分はどうすればできるようになるかを一緒に考えることで、受講者の知識や技術の習得だけでなくモチベーションの向上も期待できます。
OJTの教育におけるPDCAとは?
OJTによる研修を行う際には、PDCAのサイクルが基本となります。
PDCAとは「Plan=計画」「Do=実行」「 Check=評価」「Action=行動」の頭文字をとった言葉で、業務の改善や効率化を図る手法の一つです。
OJT教育におけるPDCAの「Plan(計画)」とは?
OJTを実際に行う前に、PDCAのPに当たる、計画作成の段階から始めます。OJTに限った話ではありませんが、計画が破綻していると後の全てが失敗する危険性が高くなるため、計画作成の段階は非常に重要です。
OJTの受講者が新卒社員の場合、成長目標としては「ビジネスマナーの習得」「仕事の進め方の理解」「自社への理解(歴史・強み弱み・競合・製品群)」などが一般的です。計画作成の段階では、成長目標をより細分化し、チェック項目を整理していきます。
ビジネスマナーの習得を目標とした場合、目標を細分化すると以下のようになります。
- 職場でふさわしい言葉遣いができる
- 報連相がきちんとできる
- お客様に対し適切な態度がとれる
成長目標の細分化ができたら、目標達成にかかる期間や教育担当の適任者などを決めて、OJTにおける計画作成は完了です。
OJT教育におけるPDCAの「Do(実行)」とは?
OJTにおけるPDCAの「Do(実行)」では、4段階職業指導法で解説したように、教育担当者がやってみせ(Show)、説明(Tell)し、受講者にやらせてみる(Do)、という順番を踏むようにしましょう。
受講者にとっては初めての仕事ですから、やってみせる(Show)・説明する(Tell)のどちらか一方だけでは、理解が困難だったり理解が不十分になったりするため、注意が必要です。
OJT教育におけるPDCAの「Check(評価)」とは?
OJTにおけるPDCAの「Check(評価)」とは、4段階職業指導法の評価・追加指導(Check)の評価と同じで、前項のDoでできたこと、できなかったことを整理します。
できたことはしっかりと褒めた上で、できなかったことは「なぜできなかったのか?」「できるようになるにはどうすればいいか?」を一緒に考えることで、受講者のモチベーションアップに加えて、反省・改善の習慣づけの効果も期待できます。
OJT教育におけるPDCAの「Action(行動)」とは?
OJTにおけるPDCAの「Action(行動)」とは、前項の評価と反省を踏まえて、できなかったことをできるようになるための追加指導を行います。
ここまでで最初の「Plan(計画)」で立てた成長目標が一つ達成され、OJTにおけるPDCAの1サイクルが完了します。1サイクルの結果を踏まえ、以降の計画作成の参考にすることで、OJTの内容やPDCAの精度が向上します。
OJTを通して変化に強い人材を育成しよう!
OJTを効果的に運用するためには、人事部や経営層がOJTのメリットや実施方法を理解しておくことはもちろんですが、実際に教育を行う各部門がOJTの意味や目的を正しく知っておくことも重要です。
OJTを実施する際には、4段階職業指導法やPDCAを意識して、ステップごとの目標を達成していくことが大切です。計画・実行・評価・行動のサイクルを繰り返すことで、教育研修の効果や効率を向上させることができるのです。
世の中の変化が激しい分、業務の内容も短期間で変わる可能性が考えられます。目先の業務をこなすだけでなく、なぜ今の業務を行う必要があるのか、目的や意図を随時フィードバックして、業務内容の変化にも柔軟に対応できる人材を教育することが求められていると言えるでしょう。