OJTとは?日本企業におけるOJTの実施状況とは?
OJTとは、企業が従業員の能力開発のために行う教育研修の手法の一つです。OJTは、英語の「On the Job Training」の略称で、実務を通して学ぶ訓練のことを意味します。
日本でのOJTの実施状況は、厚生労働省が平成13年から毎年実施している「能力開発基本調査」を見ることで、国内の企業における労働者の能力開発の実態を知ることができます。
厚生労働省の調査によると、正社員に対する教育訓練で「OJTを重視する」「OJTを重視するに近い」と回答した企業は、70%を超えています。
同調査によると、新入社員と中堅社員に対する計画的なOJTを実施する企業はここ3年で増加傾向にあり、従業員の育成に対する企業の意欲の高さが伺えます。
今回の記事では、OJTの意味や定義を説明した上で、OJTの実施方法やメリット・デメリットについてご紹介します。
OJTとは?意味や定義、実施方法やメリット・デメリットについて
OJTとは、企業が従業員の能力開発のために行う教育研修の手法の一つです。
OJTの意味や定義、実施方法やメリット・デメリットについて、順を追ってご紹介します。
OJTの意味や定義とは
OJTとは、英語の「On the Job Training」の略称で、実務を通して学ぶ教育研修のことを意味します。反対に、新入社員の合宿や集合研修などの業務から離れて行う教育研修は、Off-JT(Off the Job Training)と呼ばれます。
OJTの起源は、第一次世界大戦までさかのぼります。当時のアメリカでは、従来の10倍の作業員の補充が必要となり、大量の新人を効果的に育成する必要がありました。新人育成プロジェクトの責任者を任せられたCharles Ricketson Allen氏が、大量の新人の育成方法として職務現場での実地研修を提唱し、研修方法を発展・改良して開発された「4段階職業指導法」が、OJTの始まりだと言われています。
OJTの実施方法とは
OJTを実施する際は、従業員に仕事の全体像を理解させることを目的に、以下の4ステップに分けて行う方法が一般的です。
- Show(やってみせる)
- Tell(説明する)
- Do(やらせてみる)
- Check(評価・追加指導する)
OJTは大量の人材を効率的に育成するために開発されたため、人手不足に悩む現代日本とは状況がまるで違うはずですが、なぜ今日本でOJTの重要性が注目されているのでしょうか。
OJTが重要視される理由を、日本企業を取り巻く現状に焦点を当てて考えてみます。
OJTが重要視される理由とは
OJTが重要視される理由として「労働力人口の減少」「終身雇用制度の崩壊」「技術革新のスピードの速さ」という、日本の企業を取り巻く3つの課題が挙げられます。この3つの課題が、企業の人材育成に対する考え方に大きく影響しています。
日本の労働力人口は2017年に6,720万人となり、女性や65歳以上の高齢者の労働市場参加率が高まったことにより、現在は5年連続で増加傾向にあります。従来では働けなかった・働かなかった人が就業することによって、2023年頃までは労働人口の増加が続くと見られています。
日本の労働人口は増加傾向にありますが、2024年以降は女性や高齢者の労働参加だけでは人口の自然減を吸収できなくなり、労働力人口が減少に転じる見込みです。数年後を見据えると、企業の人材育成の重要性は年々高まっていくことになります。
終身雇用制度は既に崩壊しつつあり、人材の流動化が進んでいることから、中途採用枠で入社する人材の数が増えています。中堅社員へのOJTの実施率が増加しているのは、中途採用の人材の増加が背景にあると言われています。
技術革新のスピードによって、ビジネスの様々な場面で利便性が高まると同時に、業務内容や仕事のノウハウの早期習得が重視される時代になっています。戦力となる人材をいかに早く・効率的に育成できるかが、企業の将来を左右するようになってきているのです。
OJTのメリットとは
OJTで人材教育を行うメリットは多数ありますが、代表的なものをいくつかご紹介します。
- 実務を通して学べるため、早期に即戦力を養える。
- 個々のスキルや習得度合いに応じて柔軟に対応できる。
- 実務をこなしながらの教育なので、ほとんどコストがかからない。
OJTを実施する上での特に大きなメリットは、実務を行いながらの教育となるため、業務が完全に止まってしまうことがない点です。OJTは自社内で完結するため、合宿や外部委託と違い、ほとんどコストがかからないこともメリットとして挙げられます。
OJTのデメリットや注意点とは?
OJTで人材教育を行う際には、メリットだけでなくデメリットや注意点も存在します。
- 教育担当者が複数人いる場合、新入社員間で習得スピードに差が生じる可能性がある。
- 現場の状況によって、教育に粗が出たり後回しになってしまう可能性がある。
- OJTを行う部署全体で、教育担当者と新入社員をフォローする意識が必要になる。
OJTを実施する上で特に注意すべきことは、部署全体での協力が不可欠という点です。教育担当者は新人に教えながらの業務となるため、どうしても普段より業務効率が落ちてしまいます。
OJTの教育担当者は、新人教育を行いながら普段の業務も全てこなさなければならないとなると、教育・業務ともに質の低下は避けられません。最悪の場合、無茶な業務をさせられた教育担当者と質の低い研修を受けた新入社員が、揃って退職するという事態も考えられます。
OJTを実施する際には、教育担当者の業務を部署全体でフォローし、新入社員の教育への協力体制を作ることが大切です。一時的に部署全体の負担は増えますが、新入社員が早い段階で戦力になるメリットを考えれば、先行投資としての価値は十分にあります。
OJTで新入社員の早期戦力化や教育研修の効率化を図ろう!
OJTとは、英語の「On the Job Training」の略称であり、実務を通して学ぶ訓練のことを意味する、企業が従業員の能力開発のために行う教育研修の手法の一つです。
OJTは、元は大量の人材を効率的に教育するための手法として生まれましたが、労働人口の減少や終身雇用制度の崩壊などを背景に現在日本で注目を集めています。
OJTで教育研修を行うメリットは多くありますが、効果的なOJTを行うためには部署全体での協力が不可欠です。教育担当者に新人教育を丸投げするだけでは、教育研修の効果が低くなるだけでなく、最悪の場合教育担当者や新入社員の退職につながる危険もあります。
人手不足が深刻な現代日本において、新入社員の早期戦力化や教育研修の効率化は、企業の大きな課題です。経営層や人事部の主導で各部署や現場担当者にOJTの理解促進を行い、会社全体で新入社員の早期戦力化や教育研修の効率化に取り組んでみてはいかがでしょうか。