多くの企業が人手不足に悩んでいる
厚生労働省の調査では、人手不足を感じている企業の割合はここ10年ほど増加傾向が続いており、日本全体で人手不足が深刻な問題になっています。
リクルートの調査によると、採用目標人数を充足できた企業は47.0%であり、半数以上の企業が採用計画の目標を達成できていない状態です。
労働力人口の減少が続く中で企業が成長を続けていくためには、場当たり的な採用活動を続けるのではなく、計画的な人材採用を行う要員計画を考える必要があります。
今回は人員の要員計画について説明します。
要員計画の意味や定義とは
要員計画とは、企業が事業計画を進めるにあたって必要な人材の確保や、不要な人材の整理などを計画することをいいます。
要員計画の具体的な内容としては、企業にとって必要な人材の確保や分配、どのような人材が不足していてどの部署に必要なのか、逆に余剰となっている部署があるのか等の要因状況を調査します。調査において、総額人件費管理の観点等から適正な人件費を算出し、組織ごとの人材の過不足に応じて人件費の適正化を行い、不要な人材の整理などを計画します。
要員計画の目的について
要員計画の目的は、企業が効果的、効率的な事業計画の運営を進めるために貴重な人材の能力を活用するためにあります。人材戦略を明確化することで、採用や異動、配置転換、人材能力開発などの調整を行いながら企業の経営方針や事業計画の達成を目指すことが可能となります。要員計画は優秀な人材の確保と育成、活用によって事業の達成を図ることが目的です。
少子高齢化が進み労働力が不足し、様々な働き方や多様な人材が社会進出したことで労働者の仕事に対する価値観も変化しています。社会が変化し予測できない状況において、企業は貴重な人材を有効に活用し、変化を生き抜くために中・長期的なビジョンに立った人的資源の量的・質的な適正化が必要だということで要員計画がすすめられています。
人員計画や採用計画との違いについて
似ている言葉として「人員計画」「採用計画」がありますが、要員計画とどう違うのでしょうか。
人員計画とは、長期的な視点に立った人員に関する計画で、主に採用、異動、配置といった分野に関する計画のことを指します。人員計画は要員計画の一部となり、企業の長期的事業計画や労働市場の状況を踏まえ、人員計画の策定がされます。
採用計画とは、言葉通り採用のための計画です。事業の経営方針や計画を踏まえ、かつ採用市場やマーケット状況を踏まえ、人員補充が必要と判断された場合、どのような人員をいつ採用するのか、どう採用するのかの計画のことを指します。
要員計画を立てるメリットと注意点とは
要員計画を立てることは企業側にどのようなメリットがあるのでしょうか。
人材の確保や育成などが管理しやすくなるという点が挙げられます。要員調査によりどんな人材がどういう仕事をしているのか把握することができます。社内の人材を有効に活用することができ、社員の異動配置も含めた活躍の場を提供することができます。
人件費管理を行うことで無駄なコストを省き、きちんとコストをかけるべき点にその部分を補うことができます。「人を何人減らせるか」ではなく「1人当たりの生産性をどれだけ向上させられるか」という人的生産性の視点で考えることで、生産性向上にも効果があります。
注意点としては、安易に要員計画を変更してはいけないという点です。要員計画は、経営理念や経営計画を達成するために策定された計画です。会社の事業そのものを推進するための計画となりますので簡単に変更することは事業が破綻する可能性もあるため、避けた方が良いでしょう。
どうしても計画が難しいのであるならば、経営計画そのものを再考することを検討するべきです。要員計画と経営計画はセットで考えるものですので、要員計画だけを変更しても根本の解決には至らないのです。
要員計画と事業計画は密接に関わっている
終身雇用の崩壊や人手不足の影響から計画的な人材管理が必要になってきています。要員計画を立てれば人員の確保や育成などを管理しやすくなること、要員計画と事業計画は密接に関わっているため安易に計画を変更すると事業が破綻する可能性が発生してしまいます。
企業の維持・成長のために正しい計画の立て方と運用方法を知っておきましょう。