面談での質問内容は「母集団形成」を重視して
採用面接における面談は、「良い会社があったら転職したい」と考えている、潜在転職者層に効果的にアプローチできる手法です。候補者との対話を通じ双方の理解を深める機会になるため、自社の採用要件にマッチした質の高い母集団形成に役立ちます。
売り手市場が続くいま、一部の有名な大手企業以外では、母集団形成に苦戦している企業が少なくありません。こうした潜在転職者層に、早期にアプローチすることで、長期的な視点で母集団形成を図る企業が増えているのです。
面談での質問は「相手のニーズ」を引き出す内容を事前準備
面談は、転職活動を始めていない人材でも、気軽に参加することが可能です。企業にとっては、幅広く多様な人材と出会う機会になる、というメリットがあります。
明らかに採用要件にマッチしない人材や、転職意欲が極めて低い(転職するつもりが全くない)人材も、候補者に含まれる可能性があり、回収見込みのないコストが発生するというデメリットも否めません。
自社の採用選考に進む可能性が低い人材でも、将来的に社外パートナーや顧客になる可能性があります。面談ではどんな相手にも、自社への好感度向上に努めるべき。面談での質問は、相手の状況やニーズに合わせてどう対応するか、事前にパターンを想定し備えておく必要があるのです。
面接での質問内容を事前に準備しておかなければ、自社の採用要件にマッチした人材であっても、相手のニーズを深堀できず面談が単なる雑談で終わってしまうというリスクがあります。今回は、採用活動の一環としての面談において、具体的な質問内容について紹介します。
面談での質問は「求職者目線」で
面談は、企業と候補者が双方に理解を深めること目的です。企業にとっては、採用要件へのマッチ度が高い人材であればあるほど、面談で企業への好感度や入社意欲を高めたいところでしょう。
面談では、候補者の就労ニーズを引き出し、自社から提供できる職務内容や職位、収入、やりがい、働きがいなどを、候補者が魅力的だと感じられるように伝えるべきです。つまり、あくまでも「求職者目線」でコミュニケーションを図ることが、最も重要なのです。
面談での質問は、「オープンクエッション・発言の背景・具体例・共感(フィードバック)」を組み合わせ、会話を掘り下げる質問術を活用してみてはいかがでしょうか。下記に、質問内容の例を紹介します。
面談で現職について掘り下げるための質問内容
面談では、候補者が現職でどのような仕事をしているのか、現職に対してどのような満足・不満足を感じているのか、現状を把握することから始めましょう。
(オープンクエッション)
質問:「いまは、どんなお仕事をされているのですか?」
回答:「いまは、△△というプロジェクトで、PMとして働いています」
↓
(共感・フィードバック)
質問:「いま、ようやく繁忙期が落ち着いたところなのですね」
回答:「そうなんです、ここ半年、△△プロジェクトに掛り切りだったのですが、ようやく一息つけました」
↓
(オープンクエッション)
質問:「それは本当に、お疲れ様でした。◯◯さんは、△△プロジェクトで、どんなことにやりがいがありましたか?」
回答:「××という部分で、自分なりに工夫して進められて、みんなの協力もあって乗り越えられたので、よかったです」
↓
(発言の背景)
質問:「××という部分で、特にこだわって工夫されたのは、どういう背景があったのですか?」
回答:「・・・・という課題があって、△△プロジェクトの進捗が遅れていることが分かったので、メンバーみんなで分担して納期を守れました」
↓
(裏付け・具体例)
質問:「メンバーみんなを巻き込むことで、課題を克服できたのですね」
↓
(オープンクエッション)
質問:「どんな風に、みなさんを巻き込んで行ったのですか?」
面談で就労ニーズを把握するための質問内容
現職での業務内容や保有スキル、満足・不満足などの現状をヒアリングできたら、今後どのような就労ニーズを抱えているかを把握して行きます。
(オープンクエッション)
質問:「今後は、こんなお仕事やってみたい、という希望はありますか?」
回答:「◯◯という領域にも携わりたいと思っています」
↓
(発言の背景)
質問:「どうして、そう考えていらしゃるのですか?」
回答:「もともと学生の頃から、△△という仕事をしたいと考えていたのです」
↓
(裏付け・具体例)
質問:「そのために、ネクストステップとして具体的にイメージしている職種や働き方などはありますか?」
↓
(共感・フィードバック)
質問:「(候補者の回答を受けて)とても共感します。実は、弊社にも△△をミッションにするチームがありまして…」
↓
(オープンクエッション)
質問:「(共感で相手のニーズを引き出した後に)もし弊社に入社された場合の話ですが、職務内容や待遇、働き方などの希望はありますか?」
面談の終わりに、選考へ進む意欲を確かめる質問内容
(オープンクエッション)
質問:「今日はありがとうございました。実際にお会いして話してみて、いかがでしたか?」
回答:「御社への理解が深まり、今後の転職活動の参考になりました」
↓
(裏付け・具体例)
質問:「どのあたりが、印象に残っていらっしゃいますか?」
回答:「◯◯という職務内容を、××という働き方でできる、という点は魅力的だと感じました」
↓
(発言の背景)
質問:「現在お勤めの会社では、××という点ではややご希望に沿っていらっしゃらないのですね」
回答:「そうですね、家族からはよく△△と言われるので…」
↓
(共感・フィードバック)
質問:「そうですか。確かに、弊社を応募いただく方からも、そういう話はよく伺います」
↓
(オープンクエッション)
質問:「(共感で相手の現状をより深堀した後で)◯◯さんのお話を伺って、おそらく△△チームのお仕事がマッチしそうだと感じたのですが、もしよろしければ、△△チーム担当の役員と再度面談を設定させていただくなどは、いかがでしょうか?」
回答:「そうですね、ありがとうございます。ただ正直なところ、いますぐに転職できる状況ではないので…」
↓
(オープンクエッション)
質問:「(転職時期や志望意欲をヒアリングして)もちろん、時期を見て、で結構でございます。またしばらくして、ご連絡差し上げてもよろしいですか?」
面談は気軽に設定できるからこそ、意図と目的を明確に
面談は、企業と求職者が双方にメリットがあることから、気軽に設定されがちです。せっかくの対話の場ですから、雑談に終わらせない工夫が必要です。面接と同様に面談においても、質問する意図と目的を明確にし、事前に準備をしておくことで、企業・候補者の双方にとって有意義な時間となるでしょう。
面談は、お互いにリラックスして臨めるため、面接では話しづらいような踏み込んだ話題もしやすくなります。候補者を質問攻めにしたり、相手が興味のない自社のことを話しすぎたりなどして、自社への好感度を下げてしまわないためにも、事前準備は手を抜かずに行いましょう。