多様化する「社内コミュニケーションツール」
「社内コミュニケーション」には、よくある「報・連・相」のような業務上のやり取りから、日々の雑談まで幅広い要素があります。
日頃の業務連絡やスケジュール調整などがスムーズであれば、組織としての生産性向上につながることは当然ですが、業務と直接には関係しない雑談など、プライベートに近い部分でのコミュニケーションも、社員同士の関係性を深め企業の競争力強化につながると言われています。
たとえば、ランチタイムなどの雑談やちょっとした知識の共有が、社員同士の「横のつながり」を強化し、新たなビジネスのアイデアが生まれる可能性があります。また、社内の雰囲気や居心地が良い職場は、通常離職率が低くなると同時に、優秀な人材が集まりやすいという土壌になることが期待されます。
社内コミュニケーションは企業活動の土台を支えるものとして重要な要素です。一方で、HR総研が実施した「社内コミュニケーションに関する調査」によると、70%以上の企業が社内コミュニケーションに課題を感じている、という調査結果もあります。重要なことはわかっているがそこに課題も多いことを、多くの企業が認識しているのが、調査結果から見て取れます。
出典元『ITmedia ビジネス』 多様化する「社内コミュニケーションツール」 企業が抱える導入の課題点とは?
企業はコミュニケーションを活性化させるために、さまざまな「ツール」を活用しています。メールなどのデジタル系のツールは多くありますが、最近では、社内コミュニケーションに特化した『社内SNS』から、スケジュール調整などを行うグループウェア、ファイル共有のためのオンラインストレージ、ビジネス版チャットなど、多種多様なツールが活用されています。
社内コミュニケーションツール導入のメリット・デメリットと新しいツール
社内コミュニケーションツールを導入することによるメリットとデメリット、具体的なツールについて確認しましょう。
社内コミュニケーションツール導入のメリット
社内コミュニケーションツール導入のメリットとして、主に4つが挙げられます。
- 情報管理の一元化が可能
- ナレッジの共有が容易
- 離れた勤務地の人と交流できる
- メールで起こりがちなタイムラグなどの問題を解決する
1.情報管理の一元化が可能
社内SNSを利用すると、オンライン上に自由に使える「大部屋」ができます。あるプロジェクトに関するコミュニティーをメンバー以外の社員がフォローすることで、そのプロジェクトの進捗状況だけでなく、議論の内容も確認することができ、必要な際にサポートしあうということも可能になります。
メールや対面な会議では関係者以外が情報を把握することが難しい性質がありますが、社内SNSは誰もが状況をキャッチアップだからこそ、一体感の醸成に貢献し、相互扶助が促進されると言われています。
2.ナレッジの共有が容易
メールや電話など、社内で何らかのコミュニケーションの行動を起こすにあたっては、事前に「誰が何を知っているか」を把握していることが必要になります。しかし、社内SNSではこういった事前の情報も必要ありません。
困っていることや知りたいことなどを社内SNSに質問しておけば、その知識を持つ人やサポートできる社員が回答してくれます。必要な知識を持っている人が見つかるというシステムとして機能する点も、社内SNSの大きな特徴です。
特定の社員が活用しきれず埋もれていた有益な情報を掘り起こし、共有していくことによって、組織全体の向上につながっていく可能性もあります。
3.離れた勤務地の人と交流できる
既存のメールはもちろん、SNSやチャットツールなどはお互いの距離に依存しないツールという意味で、日本全国、また海外などに広く拠点を展開する企業にとっては非常に有効です。
4.メールで起こりがちなタイムラグなどの問題を解決する
仕事をしていると、まれに、重要なメールがそれ以外に埋もれてしまい、次のアクションを起こすのにタイムラグを生じさせることがあります。
社内SNSであれば、重要な情報が入った場合、「プッシュ通知機能」などでアラートを立てることが可能で、タイムリーにアクションを起こすことができます。
さらには、メールの文面のように定型文を入れる必要はなく、要点のみを速やかに相手に伝えることができるという点で、コミュニケーションの時間を短縮することも可能です。
社内コミュニケーションツール導入のデメリット
社内コミュニケーションツール導入のデメリットとして、主に3つが挙げられます。
- 多様であるだけに、ツールを使いこなせる人と使いこなせない人が発生する
- 導入目的が曖昧だと失敗しやすい
- セキュリティー面でのリスクがある
1.多様であるだけに、ツールを使いこなせる人と使いこなせない人が発生する
SNSなど新たなコミュニケーションツールは非常に便利なように思えますが、メールからSNS、グループウェア、チャットなど複数のツールが存在することで、結局使いこなせない・使われないというケースも多く見られます。
「チャットに添付した資料とメールに添付した資料、どちらが最新か分からなくなった…」「以前にやりとりしたのはどのツールだったっけ?」など、ツールが複数あることによる弊害が起こり、使いこなせる人と使えない人で二極化していくデメリットが発生します。
そもそもパソコンに馴染みのなかった年配の世代だけでなく、スマートフォンに慣れ親しみ過ぎてパソコンの使えない若い世代もいることは、考慮すべき点でしょう。
新しいツールをいかに定着させ、コミュニケーション活性化にまでつなげるか、しっかりと道筋を描いておくことが重要です。
2.導入目的が曖昧だと失敗しやすい
「社内SNSを導入すれば、会社が良い方向に変わるのではないか」などと、明確な目的なしに社内SNSなどのツールを組み込んでも、間違いなく成功しません。
現状の組織として、何が課題で社内SNSを使ってどう変えていきたいのか、を考えるところが肝要です。ツールはあくまでもツール。明確な目的・役割があってこそ意味があるものです。
「緊急性に優れるが、特定の人にしか情報を伝達できない」のは、メールや電話などがあります。一方「広範囲に情報伝達できるが、情報をいつキャッチアップするかは人による」のが、社内ポータルサイトなどで、SNSはこの2つを補完する形で存在するのが適切と言われています。
目的に合わせたツールの選択、が何よりも大切なのです。
3.セキュリティー面でのリスクがある
SNSなどは気軽に投稿ができるだけに、社内の機密や個人への誹謗中傷を含む情報が拡散されるリスクも発生しやすいものです。
ツールならではの問題にいかに対応するか、事前の対策と利用者へのモラルの周知徹底が重要です。
社内コミュニケーション用のビジネスツール
社内コミュニケーションを活性化させるビジネスツールを3つ紹介いたします。
Chatter(チャター)
Chatterはセールスフォース・ドットコムが提供する社内SNS。有料版と無料版がありますが、社内SNSとしての利用であれば無料版でも十分の機能があります。
性能としてはチャットがメイン。アンケート機能などもあるため、社員アンケートや会議の日程調整、組織内で決議をとる際に活用することができます。ファイルや画像、動画の投稿も可能なため、さまざまな情報の共有が容易にできるのもメリットです。
Chatwork(チャットワーク)
多くの企業が無料プランで利用しているケースが多いチャットツールです。
チャット機能を基本としているが、ファイルの共有も可能で、タスク管理機能も搭載されていて便利です。自分のものはもちろん、同僚のタスク管理もできます。他にも、ビデオや音声通話などのコミュニケーション機能も搭載されています。
Slack(スラック)
アメリカ発の社内SNSで、日本でも使いやすさで人気があります。
主な機能はチャット、画像共有、リマインダーなどが挙げられます。特に「ピン機能」と「インテグレーション機能」もあるのが特徴的です。
「ピン機能」は、特定の投稿に”ピン”することで、重要な内容をチャットの脇に保存した状態にすることができ、チャットの弱点でもある「重要な内容が探しにくい」といった問題を解決してくれます。
「インテグレーション機能」は、他サービスとの連携機能のことです。たとえば、SlackをGoogle Calendarと連携することで、Google Calendarに記載した情報をSlack上で通知することができるようになります。
他にも、連携が可能なサービスがあれば、利用している複数のサービスをSlackにまとめることが可能です。
「やること」が目的ではなく、自社にあった活性化の方法を模索すべし
セキュリティーリスクについては事前に留意することや、ツールを使いこなす点に不安がある世代へのフォローなどを考える必要がありますが、ツールを活用した社内コミュニケーションへのニーズは高まっています。
一番大切なことは、ツールなどの道具を使って、自社のどのような課題を解決するかという視点です。
これからの新入社員はミレニアル世代といわれ、ツール活用が前提である属性でもあります。そういった流れも踏まえつつ、自社の社内コミュニケーションの課題とツール導入の目的を明らかにしていく丁寧なステップが重要です。