外国人採用の現状や社会的な背景について
少子化に伴う売り手市場化や市場のグローバル化などの影響から、多様な人材の獲得・活用が求められています。
中でも外国人採用が注目されていて、経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の外国人移住者は増え続けており、2015年の移住数は約39万人となり、世界4位と日本が事実上の「移民大国」であることが報じられています。
参考URL『西日本新聞』「移民流入」日本4位に 15年39万人、5年で12万人増
実際に外国人労働者数は増加傾向にあります。内閣府の「『外国人雇用状況』の届出状況表一覧((平成28年10月末)」の報告によれば、国内の外国人労働者は2012年以降、加速度的に増えており、2017年には約128万人(2016年比18%増)となっています。
外国人採用を行う事業所はまだ多くはありません。総務省統計局によると平成28年の事業所数は約558万事業所と報告されていますが、厚生労働省の調査では外国人を雇用している事業所は約17万事業所であるため、実際に外国人を活用している事業所は3%にとどまります。
出典元『厚生労働省』今月の特集 日本で安心して働いてもらうために 外国人雇用Q&A
First Advantageが各国の採用候補者を対象に実施したスクリーニング調査によると、日本における経歴詐称率は5.47%と諸外国と比べて低い水準にあるものの、日本人が「真面目で嘘をつかない」というわけではなく、「経歴を詐称するインセンティブがない」ことが理由として考えられています。「経歴を詐称するインセンティブがある」文化で育った外国人人材においては、経歴詐称などが起こるリスクについても理解しておくことが大切です。
出典元『Japan PI』海外の採用事情 経歴詐称が多い国・少ない国ランキング 日本は何位?
外国人労働者を受け入れるためには、受け入れ体制の整備や能力の見極めの難しさなど、多くの課題が残されているのが現状です。就労ビザの確認はもちろんのこと、様々なミスマッチが引き起こっている現状について知っておく必要があるでしょう。
具体的にどのようなミスマッチが起こっているのか、今回説明致します。
外国人採用における問題点とは?
外国人採用や受け入れの中で起きている問題点についてご紹介します。
ディスコが行った「外国人留学生の採用に関する企業調査」によりますと、外国人留学生を採用することにより社内で起きた「問題」では、「文化・価値観、考え方の違いによるトラブル」が60.9%でトップとなっています。「言葉の壁による意思疎通面でのトラブル」が57.8%で次いで上位となりました。社内のコミュニケーションがうまくいかず、人間関係や組織形成のうえで問題となっています。
出典元『DISCO』「外国人留学生の採用に関する企業調査」アンケート結果
「受け入れ部署の負担増」が、前年の43.0%から 54.7%へと増加していますが、大手企業では75.9%が、外国人採用によって負担が増えたと発言していて現場の納得感なく採用に踏み切った結果とも考えられます。
きちんと現場での意識あわせや受け入れ体制の整備、任せる業務や役割の整理などを行い丁寧に推進していかなければ、外国人採用者も現場社員もどちらも疲弊してしまうでしょう。
実際に就いている職種と希望している職種とのミスマッチ
経済産業省が委託し、新日本有限責任監査法人が行った「外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査」の報告によりますと、外国人採用者の実際に就いている職種と希望していた職種とのミスマッチが起きていることがわかりました。
希望する職種では文系、理系問わず「国際業務」 が過半数を占めていて人気です。理系では「研究開発」「システム開発・設計」が多く、文系では「事務職(総務・人事・広報等)」 「マーケティング・商品開発」「貿易業務」が多い状況です。実際に就いた職種でいうと、理系留学生は「研究開発」「システム開発・設計」という専門職、技術職にマッチングされているケースが多く、自らの専攻を活かせる職種に配属されギャップは少ないと言えます。
しかし文系留学生は、実際に就いた職種として「営業・販売」が多くなっていて、希望していた専門性の高い「国際業務」「貿易業務」といった職種への配属は、留学生の希望と比較すると少なくなっています。また「事務職(総務・人事・ 広報等)」や「マーケティング・商品開発」といった職種への関心も高いですが、企業でのこのポジションでの実際の配属はとても少ない状況となっています。
出典元『経済産業省』外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査
出典元『経済産業省』外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査
文系留学生は日本で働く職務のミスマッチやギャップが多くあるという問題が発生しています。企業側は外国との接点のある販売、接客等を希望しているケースが多く、文系留学生側は専門スキルを活かした業務を希望するケースが高いのです。
まずは各職種の具体的な内容や期待される役割についての外国人採用の段階での周知や理解の徹底、大学や企業から具体的な説明を行うことが重要でしょう。
外国人留学生が日本での就職を希望しない理由
日本に留学している外国人に、今後日本で就職を希望しないと考えている人にその理由を聞いたところ「母国または他の国で働きたい」「帰国しなければならない理由がある」という回答が多くきかれました。
個人の事情なので企業側は関与できない問題ですが、企業側で解決できる理由としては「日本企業の働き方や制度があわない」「日本ではやりたい仕事ができない」などは今後の受け入れ体制の整備等で解決できる可能性があるでしょう。
出典元『経済産業省』外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査
お互い違う認識を持っているという考えを持って、外国人を採用することが大切
外国人の採用は、言語の違いは当然ながら、仕事に対する価値観なども大きく異なる可能性があるため、採用する前の段階で、お互いが理解し合うことが大切となります。
元々住んでいた国の文化や法律、宗教などによって影響を受けており、国ごとだけでなく地域ごとによっても大きく異なるため、「日本だから日本のやり方に合わせるべき」ではなく「お互いが違う認識を持ち合っている」という前提で、日本人労働者同様、採用の見極めを行うべきでしょう。