ファシリテーション型リーダーシップとは?個人の主体性を活かす!

メンバーから「引き出す」リーダーシップ

リーダーシップ理論の歴史は古く、20世紀初頭からはアメリカを中心にリーダーシップ理論化・体系化が進められてきました。

初期の研究ではリーダーシップは生まれついた才覚によるものだという見解でしたが、時代を経るごとに変わっていきました。現代では「リーダーシップは生まれつきのものではない」「どのような状況下でも唯一普遍で最適となるリーダーシップは存在しない」という考え方が主流となっています。

近代のリーダーシップ研究であるコンセプト理論では「状況に応じた具体的なリーダーシップのとり方」が研究されています。コンセプト理論のひとつに「ファシリテーション型リーダーシップ」があります。

ファシリテーション型リーダーシップは、会議やミーティングなどの場における「ファシリテーション」から名付けられたリーダーシップです。中立の立場からメンバーの意見や情報を引き出し、メンバーが主体性をもって行動することに務めるリーダーシップです。今回の記事では「ファシリテーション型リーダーシップ」について紹介します。

ファシリテーション型リーダーシップとは

ファシリテーションとは、会議などの場で発言や参加を促したり、議論をまとめたり、参加者の認識の一致を確認などを行う「場のまとめ役」のような働きのことを言います。対立しがちな会議などで、公平な立場から合意形成や相互理解をサポートすることで、最終的には協働を図ることが目的です。

ファシリテーション型リーダーシップとは、組織において中立的な立場をとり「参加者」であるメンバーから意見を引き出すように働きかけるリーダーシップです。メンバー個人個人を尊重しながら、関係性を構築し、共通の目的に向かって協働するようにサポートを行うリーダーシップと言えます。

ファシリテーターとリーダーの違いについて

ファシリテーション型リーダーシップを理解する上で重要なのが「ファシリテーター」と「リーダー」の違いです。

リーダーとは組織においてのトップを意味します。構造のピラミッドの上位に位置し、組織の意思決定やメンバーへの業務指示などを行う存在です。メンバーを指示したり、フォローしたりする役割が一般的です。

ファシリテーターとは、中立なポジションを取り、メンバーの総意を成り立たせるためのまとめ役になります。メンバーの能力や考え方を引き出すだけでなく、対立するメンバーがいれば、総意を成り立たせるためにメンバー同士の関係に干渉することもあります。

ファシリテーション型リーダーシップには、議論の舵取りスキルが求められます。場の目的とゴール、意思決定プロセスをあらかじめ明確にしておくことも重要です。

ファシリテーション型リーダーシップのメリット・デメリットについて

ファシリテーション型リーダーシップはメンバー個々の自主性を尊重し、上下関係のない組織構造を作ります。メンバーの積極的な意見や情報を引き出せるというメリットがあり、メンバー主導の組織運営となるため主体性が出てくることも特徴です。

しかしメンバー主導の主体性をコントロールできなければ、ファシリテーション型リーダーシップのデメリットとなる一面もあります。議論が堂々廻りになり、スピーディーな意思決定ができなくなる可能性があります。対立する立場を納得・説得させるために、公平な立場から議論をまとめなければなりません。

ファシリテーション型リーダーシップの事例

ファシリテーション型リーダーシップを使って成功した事例として挙げられるのが「星野リゾート」です。

星野リゾートは、日本全国でホテル・旅館などを経営運営を行っている会社です。代表取締役社長である星野佳路氏は、各ホテル・旅館に対して「どうするか」「どう考えるのか」という質問をし、その回答にしっかりと傾聴し、メンバーをリードしてきました。侃々諤々の議論をする組織風土を作り上げ、社員自身が納得する動きを重視し、古き良き伝統であっても執着せずに変革を実現しています。

メンバー個々の主体性が組織を強化する

ファシリテーション型リーダーシップはメンバーの主体性を引き出しながら、目指すべきゴールに向けて最善をつくすリーダーシップです。個性の強いメンバー同士であっても、リーダーが公平な立場で意見を取りまとめることで、人間関係も良好になる傾向があります。

ダイバーシティの推進などで様々な価値観や経験を持った人材が増えている中で、各メンバーの個性を活かすために意見を引き出しながらまとめるファシリテーション型リーダーシップは、組織力の強化の面でも重要性が増しています。

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