企業の将来を左右するのは、幹部候補生の育成
リーマンショック以降、日本の求人倍率は増加の一途をたどっており、求人市場は企業間の競争が年々激化しています。人手不足が叫ばれていますが、人事課題のうちでも短期的な問題であり、同時に中長期的な課題も同時に存在しています。それが幹部候補となる若手人材の獲得・育成です。
経済産業省は「経営人材育成」に関する調査結果報告書を公開しており、ここでは将来の経営人材の確保・育成が順調であるという企業は37.6%と記されています。
出典元『経済産業省』「経営人材育成」に関する調査 結果報告書
経営人材の確保・育成についての取り組みを行なっていない企業はわずか16.5%であり、過半数の企業ではなんらかの取り組みがなされています。しかし、組みを行なっている企業であっても不安を感じているのが過半数を超えており、幹部候補の確保・育成の難しさを物語っています。
出典元『経済産業省』「経営人材育成」に関する調査 結果報告書
幹部候補の確保・育成についての取り組みを行なっていない企業の理由として最も多く挙げられているのは「誰を対象とするか、選抜の判断が難しいから」というものです。「誰を対象とするか」は特に問題を困難にしていて、「経営人材に合う要件の候補者がいるか」という質問に対して「10年後・20年後となるにつれわからない」という回答が増えています。幹部候補は長期的な人材戦略であり、それゆえに不確定な要素も多く、運用がむずかしいというのが現状です。
この記事では、中長期的な人材育成では欠かすことのできない「幹部候補生」について、どんな人物が適任かという特徴を紹介します。
幹部候補とは?
幹部候補とは、組織の中核を任せることを前提に採用・選抜された人材のことを指します。会社であれば、トップマネジメントのポストに就くことが想定されていることが一般的ですが、これは企業によって異なり、取締役など経営層を意味する会社もあれば、部長など管理職を意味する会社もあります。
組織の性質や規模により想定されている役割が大きく異なりますので、求人広告などで「幹部候補募集」として募集する場合は、どのような社内キャリアを想定しているかを明示することが大切です。
幹部候補生に向いている人材の特徴について
幹部候補生はだれを抜擢していいというわけではありません。論理的思考力やコミュニケーション能力はさることながら、リーダーシップや向上意欲に長け、会社の掲げた理念や価値観を深く共有できる人物が望ましいといえるでしょう。
数ある「幹部候補生に向いている」と見なせる特徴のなかでも、世界と対等に渡り合っていくために必要なものとして「アントレプレナーシップ」が挙げられます。
アントレプレナーシップとは「起業家精神」または「企業家精神」という言葉で認知されている概念です。欧米諸国のビジネススクールではこの精神が教育の根幹となっていて、新時代の起業家となる若者にも根付いています。しかしながら、終身雇用や年功序列が根付いた日本では、この精神が育っていないのが現状です。
アントレプレナーシップは、多様化・複雑化するビジネスシーンに柔軟かつ迅速に対応するために重要です。そのためにも、「リスクをとってでも常に挑戦することを選択できる」という図太さが組織の牽引には欠かせません。そうした挑戦を楽しむことができ、素早く行動に移せる人材は、幹部候補生として抜擢する価値があるといえるでしょう。
もちろん、無理な挑戦ばかりを無計画に行うだけでは幹部候補生に向いているとはいえません。常に置かれている状況を俯瞰的・客観的に見る視点の高さ、事業レベルで組織のメンバーがそれぞれどういう行動を取るべきかを論理的に考えることのできる冷静さもまた、幹部候補生として抜擢するには備えておいて欲しい特徴です。
幹部候補生を育成し「人が育つ企業づくり」を
中長期的に幹部候補を育成していくためには、どのような要件が必要なのかをまず明確にする必要があります。それらが整理され、具体像が明らかになってから幹部候補生を確保する方法を考えましょう。
その方法は大きくわけて2つ。新規採用か自社人材の抜擢です。採用や抜擢段階で慎重に人材特性を見極め、教育研修などの人材育成によって身につけてもらうスキルをできるだけ細かく検討していくことが大切です。
実際に活躍している幹部などをロールモデルとし、特徴を抽出してみるのも効果的です。大切なのは「どんな人物を見つけ出し、どんな人物に育成するか」というビジョンの解像度なのです。
解像度が高いほど採用要件や研修プログラムなどの質を高めることができ、「人が育つ企業づくり」が可能になります。