エンパワーメントとは?活用するメリットやデメリット、活用方法について

組織力を強めるために「個人」の力を引き出そう

世界のリーディングカンパニーが、チームの生産性をいかにして高めるについて、本気で取り組んでいます。チームの生産性をあげるためには、個々人が本来持つ可能性を十分に発揮できる状況が必要です。

世界各国で1万店以上のチェーンを展開する「スターバックスコーヒー」は、業務の80%がマニュアルレスです。個人の裁量や現場判断に店舗運営を委ねているのです。

ディズニーランドで働く「キャスト」たちには、お客様に喜んでもらうための裁量が与えられています。東日本大震災の際には、「頭を守るために」と店頭に並べられたぬいぐるみをゲストに配るなど、キャストの対応が称賛を受けました。マニュアル化された行動ではなく、各自のホスピタリティ精神により、自発的に行われた行動です。

強い組織とは、チームワークはもちろんのこと、組織に属する一人ひとりが能力を発揮できてこそ実現できます。今回は、強い組織の実現のためにスターバックスコーヒーやディズニーランドでも実践されている「エンパワーメント」について説明します。

エンパワーメントの意味や活用するメリットとは?

「エンパワーメント(エンパワメント)」とは、権限を持たせること、自信を与えること、力を付けてやることなどのことです。

エンパワーメントという用語が社会的に広く使われ始めたのは、第2次世界大戦後の米国においてであり、1950年から1960年代の自由公民権運動や1970年代のフェミニズム運動などの社会変革活動を契機としています。近年では、社会福祉の分野、発展途上国における労働や人間の能力開発、女性の社会的な地位や制度をめぐるジェンダー問題、教育心理学等の分野に転用され、発展してきた概念です。

エンパワーメントには「人の可能性を信じ、その潜在能力を最大限発揮させる」といった価値観が含まれています。筑波大学大学院人間総合科学研究科の国際発達ケア・エンパワメント科学研究室では、エンパワーメントという言葉の和訳を「湧活(ゆうかつ)」としています。

湧活とは、人びとに夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させることとされています。

参考URL『筑波大学』国際発達ケア:エンパワメント化学研究室

企業活動や人事領域におけるエンパワーメントの意味とは

「エンパワーメント」が企業活動や人事領域で使われる場合は、組織としてのパフォーマンスを最大化するために現場に権限を与え、従業員の自主的・自律的な行動を引き出す支援活動を指します。

エンパワーメントには、管理部門から現場へ・上司から部下へ仕事における権限を委譲・付与する構造的アプローチと、自己効力感を高める心理的アプローチの両方が含まれます。

エンパワーメントを活用することで、個人や集団が本来持つ能力や才能を引き出し、生産性とメンバー満足度の両方を高めていきます。

企業活動でエンパワーメントを活用するメリットについて

企業活動や人事領域においてエンパワーメントを活用する主なメリットとしては、3つが挙げられます。

  1. 意思決定の迅速化
  2. 自ら考え、判断し、行動できる人材の育成
  3. 本来持つ能力の発揮

1.意思決定の迅速化

エンパワーメントが行われていない場合、顧客対応やイレギュラー案件の対応時に上司に認可をもらうための手続きが必要であり、大幅な時間のロスとなってしまいます。

エンパワーメントが行われていれば、現場判断で対応することが可能になり、意思決定に至るまでの時間が短縮されます。企業としての機動力や顧客満足度の向上にもつながります。

2.自ら考え、判断し、行動できる人材の育成

現場での自らの判断を求められるということは、上司の立場や状況になって考える力が求められることでもあります。

今まで「指示」として受け取っていた内容の奥にある目的や背景をより深く理解できる人材の育成にもつながります。

3.本来持つ能力の発揮

エンパワーメントが浸透することで、部下の持つ潜在能力を発見できます。能力が表面化すれば、さらなる活躍も見込め、人材の適材適所を実現することもできるでしょう。

エンパワーメントを活用するデメリットと注意点

企業活動や人事領域においてエンパワーメントを活用するデメリットや注意点としては、2つが挙げられます。

サービスレベルのばらつき

エンパワーメントのメリットは、現場で部下が自分自身で意思決定できる点です。しかし、自分自身で意思決定できることがデメリットともなります。顧客対応などのサービスレベルに差ができてしまったり、組織と個人で方向性がずれてしまうことがあるのです。

サービスレベルのばらつきや、組織と個人の方向性がずれることを防ぐためには、以下の注意点について考える必要があります。

  • 判断基準の根本となる企業理念や行動指針の浸透
  • 個人で判断できるラインの明確化
  • ホウレンソウの徹底

メンバーがエンパワーメントの本質を理解できていない場合「権限が与えられた=自分勝手が許される」という誤解を招くこともあります。所属する組織の理念のもとで、共通の目標を持っていることを従業員1人ひとりが理解していれば、現場で何をどう判断すべきかは自ずと決まることでしょう。

メンバーへの過剰なストレスや、パフォーマンスの低下

誰かの指示を受けて働く側だったメンバーがいきなり権限委譲をされると、自分で考える・判断する・行動することが難しい場合があります。自分で何をすべきか分からずに業務が円滑に進まなかったり、権限や責任を担うことに必要以上の重圧を感じてしまう人にとって大きなストレスとなることもあります。

周りからの支援を得ながら成長していくことで、自分自身が思ってもみなかったような能力を発揮することもあります。エンパワーメント導入後は、以下の点に注意してメンバーの様子を観察しましょう。

  • 社員に過剰なストレスがかかっていないか
  • 業務のキャパシティは最適か
  • 適切に権限を行使できているか

不穏な様子を見つけたら一方的に上司が介入するのではなく、面談を通して対話したり、権限委譲を一旦停止して様子を見るなどの対策をとることも必要です。

企業活動や人事領域でエンパワーメントを活用する方法

エンパワーメントを活用する5つのステップについて説明します。

  1. エンパワーメント推進を宣言する
  2. 目標への合意と共感を得る
  3. 情報の公開し、権限を委譲する
  4. 目標達成のための行動の自由を認める
  5. 失敗を許容する

1. エンパワーメント推進を宣言する

組織のリーダーがメンバーの前で、エンパワーメント推進を図ることを宣言することが大切です。エンパワーメント推進の宣言では、リーダーとしての力強いメッセージを届けましょう。

宣言後には、エンパワーメントの必要性や実際に導入するまでの流れなどを説明し、共通認識を持つことが重要です。

2. 目標への合意と共感を得る

エンパワーメント推進の宣言によって周知できても、目標に対してメンバーの気持ちが一致していなければ意味がありません。宣言後、早々にエンパワーメント導入に関する対話の時間や勉強会を開くとよいでしょう。

メンバーには率直な意見を述べられる場にすることが大切です。心配していること、疑問に思うことなど、エンパワーメント推進にあたっての想いを吐き出してもらうことを意識します。

3. 情報の公開し、権限を委譲する

意思決定に必要なものは、情報と権限です。各現場で適切な判断を行うために必要な情報は公開しましょう。

企業の方針や経営戦略、人事や経理状況など、これまで企業内の一部の人しか知らなかった情報も含まれているでしょう。重要情報をシェアすることにより、今後自らが下す決定に対しての責任意識も芽生え、企業がメンバーを信頼しているという姿勢を見せることもできます。

権限を委譲する前には、該当するメンバーに対して裁量権を与える仕事の範囲を定め、実際に任せましょう。個人で判断できるラインを明確化しておくことは、致命的な判断ミスやサービスレベルのばらつき等をふせぐためにも非常に重要です。

4. 目標達成のための行動の自由を認める

権限委譲後は、メンバーに与えられた自由を認めましょう。

目標達成のための戦略や手法を自ら考えて選択することや、目標達成のための提案や意見を自由に発信できることを意味します。

5.失敗を許容する

誰でも最初は失敗をするものです。エンパワーメントの導入前には想定できなかった判断ミスなども起こる可能性が高いでしょう。そうなった場合にこそ、上司や組織のフォローが必要です。失敗した部下に対してしっかりと向き合い、一緒に改善の方法を考えたり、同じ失敗を繰り返さないためにどうすれば良いかを話し合うことが大切です。

失敗に対して介入してしまいそうになっても、メンバーを信じて成長する過程を見守っていくことが重要です。致命的な失敗が起こらないように、部下がいつでも助言やフォローを求めて来れるような体制や雰囲気作りも同時に行なってください。

労働力不足だからこそのエンパワーメント活用価値

エンパワーメントとは、権限を持たせること、自信を与えること、力を付けてやることで、「意思決定の迅速化」「自ら考え、判断し、行動できる人材の育成」「本来持つ能力の発揮」などのメリットがあります。

日本は少子高齢化の先進国として、今後の労働力不足が大きな課題となっています。テクノロジーの発達によるロボット・人工知能が様々な業務に取り入れられている一方で、人材一人ひとりの労働価値も必然的に向上させる必要があります。どのようにロボット・人工知能を活用するのか、自分で考えて判断できる人材を育成・活用することが企業に求められています。

企業組織を成長させるためには、従業員1人ひとりが能力を最大限発揮できる環境づくりや生産性の向上が必要不可欠です。知的生産の主体は「人」です。エンパワーメントを活用し、自律的で強い組織を作っていく方法を検討してみてはいかがでしょうか?

資料ダウンロードフォーム

    「ミツカリ - 導入事例集」が無料でダウンロードできます


    ミツカリは採用活動における利用だけでなく、入社後のマネジメントにも利用できる適性検査として3,800社以上の企業に導入されています。サービスも5年以上の運用実績があり、効果検証に時間のかかる離職率改善等においても、多くの企業で成果を出しています。

    今回はミツカリを導入した企業における活用方法や導入後の効果について、代表的な7つの事例をまとめました。是非ダウンロードしてご参照ください。

    ダウンロードにはプライバシーポリシーの同意が必要です。

    プライバシーポリシー

    関連するタグ