似ているけど違う「組織風土」「組織文化」「社風」とは?
会社内部や従業員の人間関係を表す言葉として「組織風土」や「組織文化」、「社風」などという言葉が使われます。これらの言葉を全て同じような意味で捉えている方も多いのですが、実はそれぞれニュアンスが異なります。
人事や経営戦略において「組織風土」や「組織文化」、「社風」と言った言葉を用いる際には注意が必要です。「組織風土を変革する」ことを目的とした施策であっても、「組織風土」そのものが抽象的なため、具体的な目的が分からずに従業員の統率が取れなくなる可能性もあります。
「組織風土を変革する」ことだけでなく、具体的に「社内の情報共有はこのようにしてください」など、全員が共通認識でき、齟齬が起きないような工夫をするのが良いでしょう。
それぞれの言葉の違いを理解しよう
経団連では「市場の変化に対応するためには組織風土の変革が必要である」と説明しています。戦略コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーでは「企業文化は戦略と同じぐらい重要であり、文化なき企業は並みの業績しかあげられない」と説明しています。
参考URL『日本経団連』主体的なキャリア形成の必要性と支援のあり方
参考URL『PRESIDENT Online』なぜ、優秀な会社は、企業文化を大切にするのか
事業を成長させるために重要とされる「組織風土」や「組織文化」や「社風」。一般的に用いられている言葉の定義や違いについて知ることで、「組織風土の改革」施策が何を指し示しているのか、具体的なイメージを持って頂けるように説明していきます。
「組織風土」「組織文化」「社風」の意味や定義を知ろう
「組織風土」や「組織文化」、「社風」の違いを知る前に、それぞれの言葉の意味や定義、どのような要素が影響を与えるのかを明確にしておきましょう。
組織風土の定義とは
組織風土とは、「従業員間で共通の認識とされる、独自の規則や価値観など」のことです。
「風土」の意味は「その土地に根付いているもの、独自的・固定的な価値観や精神」です。日本の風土は四季の明確な違いがある、日本は世界有数の豪雪地帯であると使われることもあります。
人間に例えると「性格や気質、癖」に当てはまります。良くも悪くも自然発生し、遺伝的に引き継がれながら、外部の影響を受けにくいため、変化させるのは容易ではありません。
組織風土は、特に従業員の動機付け(モチベーション)に影響を及ぼしています。成果を上げれば上げただけ社員に還元する、顧客至上主義などが組織風土に含まれます。
組織風土に影響を与える要素としては、以下のものが当てはまります。
- 経営理念
- 就業規則
- 人事制度
- 社内のローカルルール
- 判断基準
「組織文化」の定義とは
組織文化とは、「従業員間で共有されている信念や前提条件、ルール」のことです。
「文化」の意味は「土地よりも時代を反映する、創造的で自由な価値観」のことです。日本の文化は和(協調)を重んじて本音と建前を使い分ける、天然資源が少ないために物を加工し輸出する「ものづくり」文化が発展したなどと使われることがあります。
人間で例えると「行動原理となる価値観」に当てはまります。経験・習得・伝達などによって、徐々に形成されながら変化・成長していくものです。組織風土と比べ、外部からの影響を受けるものであると言われています。
組織文化に影響を与える要素としては、「仕事に対する価値観」が当てはまります。企業文化の例としては、以下のものが挙げられます。
- 個人主義なのか、それともチームワークを重視するのか
- 成長志向なのか、それとも安定志向なのか
- 年功序列なのか、成果主義なのか
- トップダウンなのか、ボトムアップなのか
- 褒めて育てるのか、厳しく叱るのか
「社風」の定義とは
社風とは、「従業員が感じるその会社の雰囲気や特徴」のことです。
企業内・組織内での人間関係を基本とした労働環境のことを意味します。空気感など、感覚的な要素も大きいものです。
人間に例えると「人柄」に当てはまります。勤勉である、人見知りをしないといった「性格」と仕事よりプライベートを重視したいなどの「価値観」などから成り立つ、その人の雰囲気のようなものです。
社風は「組織風土」や「組織文化」から影響を受けています。社風の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 穏やかでのんびりしている
- 新入社員でも社長に意見できる
- 体育会系
- 社員全員が仲良し
- 雰囲気が暗い
組織風土と似た言葉で「企業風土」、組織文化と似た言葉で「企業文化」という「組織」と「企業」が置き換わった言葉も使われます。
「企業風土」や「企業文化」は企業全体(全従業員)における風土や文化のことを指します。「組織風土」や「組織文化」は企業全体も含む、部署やチーム単位などの細分化された組織における風土や文化のことを指します。
会社としての「企業風土」と営業部の「組織風土」は一致する場合もあれば、一致しない場合もあります。
「組織風土」「組織文化」「社風」の違いを知ろう
それぞれの言葉が具体的にどのように違うのかについて、説明します。
組織風土と組織文化の違い
組織風土は「性格」、組織文化は「価値観」のようなものです。
他人と積極的に関わりたくないのは「性格」ですが、プライベートよりも仕事を重視したいのは「価値観」です。結婚して家族ができたことで「家族を養わなければならない、将来を見据えて貯金をしたい」などの変化から、プライベート重視が仕事重視に変わるなど、外部の影響によって価値観は変わります。
経営理念などの「組織風土」を変更したとしても、すぐに定着することは難しいです。一方で、市場で生き残るために、仕事の仕方である「組織文化」を変えた場合、すぐにではないでものの、徐々に変化して適応していく可能性が「組織風土」よりは高いです。
組織風土と社風の違い
組織風土は「性格」、社風は「人柄」のようなものです。
話しかけやすい雰囲気は「人柄」ですが、人見知りをしないのは「性格」です。人見知りをしない「性格」と人と積極的に関わりたい「価値観」などが影響して「人柄」を構成しています。
経営理念などや何が正しいのかを判断する基準となる「組織風土」に加え、仕事の仕方からプロダクトや事業方針などに影響を与える「組織文化」が組み合わさることで、「社風」が作られます。
組織文化と社風の違い
組織文化は「価値観」、社風は「人柄」のようなものです。
組織風土と社風との違いにも挙げたように、社風は、人間に例えると性格のような「組織風土」と価値観のような「組織文化」が組み合わさることによって作られます。
「うちの会社は、経営層や上司部下関係なく、従業員全体が仲が良い雰囲気で勤務できる」など感じるのは社風です。このような社風を作るため、作為的に「チームワークを大切にする」や「従業員全員は仲間である」ような理念や目標を掲げて、従業員全体に共通した認識を持ってもらえるようにしていることは組織文化であると言えます。
「組織風土」「組織文化」「社風」を事業の発展に役立てるために
組織風土は性格、組織文化は価値観、社風は人柄のようなものです。
「組織風土」「組織文化」「社風」は抽象的で似たような概念ですが、正確には全て意味合いが異なります。全ての違いを知ったうえで言葉を使い分けている人は多くないとは思いますが、人事業務や経営戦略に「組織風土」「組織文化」「社風」の言葉を使う場合は、従業員同士で誤解を招かないように注意が必要です。
「組織風土」「組織文化」「社風」は言葉の定義が違うのはもちろんのこと、性質も異なります。組織風土は従業員のモチベーションに関わるもので外部からの影響を受けにくく変化しにくい、組織文化は仕事のやり方に関わるもので外部からの影響を受けながら徐々に形成・変化していく、社風は組織風土と組織文化を併せたものとなります。
「組織風土を改革」するのはあくまで課題解決の手段であり、目的ではありません。解決したい課題が「組織風土」に基づくものなのか、「組織文化」に基づくものなのかから、どちらに手を加えるべきかを考える必要があります。
「組織風土」「組織文化」「社風」を人事業務・経営戦略に活用する前に、言葉や性質を正しく理解しておきましょう。