転職・キャリアアップに「傾聴力」が活かせる?
社会経験が浅く、専門性も低い若手人材ほど、採用面接ではコミュニケーション能力の高さを見られます。その理由は、若い人材は即戦力としてでなく、中長期的に自社で活躍することを想定した採用がメインであるためです。
経験や専門性は入社後の教育で集中的に育成できる一方で、コミュニケーション能力はその汎用性ゆえにあらかじめ持ち合わせてもらいたい……というのが採用側の本音です。
HR Proの調査に寄れば、コミュニケーション/コーチング研修を実施している企業は全体の40%です。同調査では研修対象者が抱えている課題のアンケートも行っており、「部下との関係構築」と「傾聴力(聴く力)」が共に56%にのぼったと報告されています。コミュニケーションスキルにおいて傾聴力に課題を感じている人材が多いということを示しています。
出典元『HR Pro』「HR総研 人事白書2016」人材育成に関する調査結果【6】 コミュニケーション/コーチング研修
出典元『HR Pro』「HR総研 人事白書2016」人材育成に関する調査結果【6】 コミュニケーション/コーチング研修
マイナビでは「自分に『傾聴力』があると思うか」というアンケートを行った結果、「いいえ」という回答が過半数を超える58.6%であったことなどから、「傾聴力」は重要性が一般に認知されつつも習得されていないスキルと解釈することもできます。
参考URL『マイナビニュース』自分に「聞く力」あると思う人は41.4% -「仕事の基本」「要点を聞き返す」
転職、とりわけキャリアアップを想定したものであれば、教育も含めたマネジメント能力が評価対象にのぼります。メンバーとの信頼関係構築だけでなく、相手から言葉を引き出す力、牽引力など、総合的なコミュニケーション能力が必要となり、傾聴力はその基盤と位置付けられます。
そこで今回は傾聴力が活かされているビジネスシーンや、アピールすべきエピソード例を紹介します。
仕事で求められる「傾聴力」とは?
傾聴とは、字のごとく「耳を傾けて聴く」ことです。
「聴く」は「聞く」よりもさらに注意深く捉えようとする意味が込められているのです。「聴」という漢字は「十四の心」に「耳」をすませて成り立つ漢字ですので、このことを思い出すとどういう行為かを理解しやすいのではないでしょうか?
「聴く」ことによりもたらされるのは「相手の意見の理解」だけではありません。相手の意見だけでなく、相手の性格や思考をも理解でき、あなたへの信頼にも繋がります。
ビジネスシーンでは、クレーム対応など相手の言い分をしっかりと受け止めることが大切な場面で重要になるスキルです。ただ理解するだけでなく、相手に対しての真摯さを伝える意味でも「傾聴力」は重要なのです。
傾聴力が高い人はなぜ「頼れる」のか?
傾聴力は習熟度別に以下の3つの段階があると言われています。
- 内的傾聴
相手の話を聴きながらも、意識は自分の方向へ向かっている状態。 - 集中的傾聴
相手の話にしっかりと意識を向けられている状態。 - 全方位傾聴
相手の話にしっかりと意識を向けられているだけでなく、周囲や場の雰囲気までも的確に読み取れている状態。
「傾聴力がある人」は、特にレベル2とレベル3を状況によって使い分けることができるのが大きな特徴だといえます。
相手の話を好奇心を持って聞くので、相手からどんどん言葉を引き出せます。同時に空気を読んで周囲と調和することもできるため、組織内でも人望が厚い「頼れる存在」となります。
傾聴力が低い人はなぜ「空気が読めない」のか?
「傾聴力が低い人」とは、上述の3つの傾聴の段階でレベル1に止まっている人のことを言います。
相手に共感を示すよりも「自分はこう思う!」という感情を捨てきれず、話す側に「視野が狭い人」という印象を持たれがちです。我が強い、といえば「自分の信念に素直な人」とも解釈できるのですが、周囲との調和がうまく行えず「空気が読めない人」と思われることもあります。
傾聴力が低いと相手の言葉を引き出すのとは逆に、「相手の言葉を遮ってしまう」ために、「空気が読めない」という振る舞いに陥ってしまうのです。
傾聴力が活かされるビジネスシーン
傾聴力は「相手に信頼感を与えることができる」「相手から言葉を引き出すことができる」「相手が周囲と馴染むような調整が行える」ことが行えるスキルだと考えられます。具体的なビジネスシーンでどのように活かせるでしょうか?
最も直接的に活きてくるのが、リーダーとして組織を牽引する立場になったときです。現代のリーダーシップのありかたは「状況により取るべきスタンスを変化させる」ことが重要だと考えられていますが、傾聴力は「現在どのようなリーダーシップを発揮すべきか」を判断するための情報を集めるために不可欠なスキルです。
誰がどのようなどのようなことを考え、どうしたいと思っているのか、何に不満があるのか……ということをメンバーの一人ひとりから引き出し、承認や調整を通して信頼関係を築いていく様子は、面接でも重要な傾聴力のアピールポイントとなります。
傾聴力が信頼獲得に繋がるのは、相手に「自分の話を真摯に聞いてもらえている」という印象を与えることができるからです。傾聴では「相手に話を聞いている」という態度を伝えることも大切です。
具体的には「適切に相槌を打つ」「内容に即した質問をする」ことが効果的に傾聴をアピールすることに繋がります。ちょっとしたテクニックですが、採用面接の場でも使えますので、ぜひ身につけておきましょう。
まずは自分の「傾聴力」を振り返りましょう!
「傾聴力」は多くの企業が人材にもとめているスキルの1つです。
重要性が広く認知されている一方で、過半数の人材が「身についていない」と実感していることから、転職活動や人事評価の場面でアピールするスキルとしても優先的に身につけておきたいものだと考えられます。アピールする際には具体的なエピソードを交えることが重要です。
傾聴は普段のコミュニケーションで無意識的に行っているものでもあります。そこでまずは自分自身の行動を振り返ることで、傾聴力があるのかないのかのチェックが不可欠です。
自分は傾聴力をアピールできる!と思ったなら、どのように発揮できたのかを客観的に分析し、具体的かつ手短に説明できるようにしておきましょう。