キャリアチェンジやキャリアアップが柔軟にできる時代に
近年では終身雇用や年功序列制度が過去のものとなっていると言われることが多く、実際にそれを肌で感じているという人も珍しくないでしょう。厚生労働省の労働市場分析レポート第 85 号によれば、フルタイム勤務の転職者は、景気によって増減する傾向は見られるものの、1991年から全体として増えたという傾向は実はありません。
フルタイム勤務からフルタイム勤務での転職の場合、「大企業→大企業」というケースに止まらず、「中企業→大企業」や「小企業→大企業」の転職が 2010 年以降、大きく増加しています。「大企業→小企業」や「小企業→小企業」の転職が大きく減少している 傾向にあるそうです。
転職が柔軟できると言っても、転職をしたことがない人にとっては何をきっかけに行えば良いのかが判断しにくいものです。今回は、実際のデータから転職に踏み切った理由をご紹介していきます。
離職タイミングによって異なる転職理由
労働政策研究所の開示する「早期離職とその後の就業状況」より「初職が正社員であった離職者の初職を辞めた理由」を見てみましょう。
継続期間の分類に関わらず最も多い理由が労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」というものです。この内容は自分の力では条件を変えることが難しく、他の要素と相まって転職理由となることが多いことが予測されます。
次に「人間関係がよくなかった」「仕事が自分に合わない」といった理由は初職退職まで1年未満、1〜3年未満という人に多い傾向がうかがえます。3年以上勤務した人はこの割合が大きく減少しているところを見ると、環境や仕事内容への相性や適応力によって早期に退職を決断する傾向があると言えそうです。
3年以上勤務したのちに転職する人に多い理由としては「賃金の条件が良くなかった」「結婚、子育てのため」という2点が上位のものであることがうかがえます。一定期間勤めることで、先々のキャリアアップについて考えたり、生活とのバランスを考え転職を目指す傾向があると言えそうです。
その他上位の理由としてあげられるものには「ノルマや責任が重すぎた」「会社に将来性がない」「健康上の理由」「自分の技能・能力が活かせられなかった」などがあります。いずれも後ろ向き理由であり、仕事や職場への不満や自分自身の状況と折り合いがつかずに転職に至るケースが多い実態がうかがえます。
離職者と初職継続者の会社・仕事の選び方の違いから見えること
同調査の「初職離職経験別 正社員としての初職の勤務先選択で重視したこと(性別、MA)」を参照すると、離職者と初職を継続している人との違いが見てとれます。
離職者と継続者で大きく乖離があるのが「会社の規模・知名度」そして「労働時間・休日・休暇の条件」です。
「会社の規模・知名度」については初職離職者で重視していた人が1年未満での離職者19.1%、1年〜3年未満の離職者22.6%、3年以上の離職者が28.7%であるのに対し、初職継続者は41.3%と高いことがうかがえます。考えられるのは「そもそも長く働きたいと思ってその企業を選択している」という可能性が高いという点です。
会社の規模・知名度だけに囚われた就職活動はおすすめできませんが、長く働きやすい教育制度や福利厚生などがそうした企業で整っているという側面は確かにあります。初職継続者がそういう企業に入社した場合、就職活動の結果への納得感もあることが推察され、それによって離職率が低い傾向にあることも考えられます。
次に「労働時間・休日・休暇の条件」については、初職離職者で重視していた人が1年未満での離職者22.0%、1年〜3年未満の離職者24.8%、3年以上の離職者が28.8%であるのに対し、初職継続者は35.8%と高いことがうかがえます。この傾向からは、初職継続者の方が入社前よりこうした条件を重視し、よく調べた上で就職している可能性がうかがえます。
この点については事前によく調べれば防げることでもある一方で、実際に働いてみてわかることがあるのも事実です。既にそういった状況に直面し、転職を考えている方も珍しくないと思いますので、転職時には良くリサーチをした上で転職先を選定することをおすすめします。
会社・仕事選びを振り返り、転職活動に活かす
転職理由は現在の仕事や職場環境に対して後ろ向きな理由が多いのが実態です。入社してみて気がつくことや、考え方が変わることは多く、こうした理由で転職することが悪いというわけではありません。
大切なのは後ろ向きな理由での転職活動だとしても、どうしたらより自分に合う仕事や条件の会社を選ぶことができるのか具体的に考えることです。「この会社・仕事を選んだのは失敗だった」と思う人は特に、なぜ会社・仕事選びに失敗してしまったのか?を振り返る必要があります。
条件面の確認などに不安がある場合には、具体的な情報を提供してくれる転職エージェントなどの活用もおすすめです。具体的な分析と情報収集で、慎重に転職先を選びましょう。