エンプロイアビリティ(雇用されうる能力)とは?
ひとつの会社を新卒から定年まで勤めあげたり、あるいは様々な業界・職種をわたり歩いてスキルを高めていくなど、キャリアのありかたは十人十色です。様々な働き方があるなかで、社会で生き残っていくのに必要な能力が「エンプロイアビリティ」と呼ばれるものです。
エンプロイアビリティとは、厚生労働省によると「労働市場価値を含んだ職業能力、即ち、労働市場における能力評価、能力開発目標の基準となる実践的な職業能力」と定義されています。資格や実務能力、個人の性格など多くの要素を含む複雑なものであり、解釈次第でいくらかの分類が存在します。
市場の変化に伴って一部のエンプロイアビリティは相対的に変化します。特に近年では「人材の流動化」が進んでいますので、時代の流れにうまく適応できる能力が重要視されている傾向にあります。
終身雇用が当たり前でなくなりつつある現代で、社会で活躍し続けるために必要な「エンプロイアビリティ」の具体例を紹介します。
職務遂行に必要となる特定の知識・技能など顕在的なもの
エンプロイアビリティには、「客観的にすぐにわかるもの」と「資格や数値などでは計れない見えないもの」があります。特にここであげる能力は「客観的にすぐわかるもの」で、「弁護士」や「会計士」といった国家資格を有する士業がその最たるものです。
それ以外にも業界・職種で培った能力もこれに当たるものがあります。例えば、特定の領域で働いたという経験は、その業界全体の動きを直感的に捉えるために必要な以下の能力にもつながります。
商品知識
商品のコンセプトやターゲットの熟知、さらには他社の競合商品についてまで分析的視点を兼ね揃えた商品知識があると、市場理解やマーケティングなどのさらに高度なテクニカルスキルと有機的にリンクできます。
基礎的な専門性をチェックする意味でも重要な能力です。
市場理解
製品の開発・販売においての戦略的思考を支える能力であり、製造業や販売業だけでなく、サービス業、コンサルティング業などあらゆる業種・職種で重要な能力です。
協調性、積極的等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの
「他人と関わりながら業務を遂行する能力」に該当します。
会社内での気配りや、顧客とのグリップ、商談での決定力などにもつながるものです。
コミュニケーション力
人間関係をストレスなく構築・維持する能力です。
出社して同僚や上司にあいさつをしたり、何気ない会話を振ったりすることで場を和やかにできるというのも「コミュニケーション力」が発揮されているワンシーンといえます。
注意していただきたいのは、なにも「他人と積極的に関わる」ことだけがコミュニケーションではないということです。なかには無駄なおしゃべりをしたくないという人もいますので、「一人ひとりの性格を把握したうえで適切な接しかたができる」ということが、本当のコミュニケーション力なのです。
ヒアリング力
自分から積極的に発言し、他人に関わるだけでは良い関係性は生まれません。自分だけでなく相手のことをしっかりと理解すること、そして「理解しようとしている」という意志を表明するためにも相手の言葉に耳を傾けることは大切です。この力が「ヒアリング力」です。
会議ではそれぞれ個性の異なるチームメンバーがさまざまな意見を出し、ときには複雑な議論に及ぶこともあります。良い考えを持っているのに「考えていることを言語化するのが苦手」というメンバーに対して、「わかりやすく言え!」というのでなく、丁寧に耳を傾けて一緒に頭のなかにあるものを紐解いていくことができるというのも、重要なスキルです。
交渉力
人と人、組織と組織のあいだに立ち、両者の意見交換をスムーズに行える能力が「交渉力」です。
交渉力は、商談や社内で部署間の意思疎通を図るときに重要で、議論する両者にとって「win-win」の関係性をつくるために必要な能力となります。
動機、人柄、性格、信念、価値観等の潜在的な個人的属性に関するもの
エンプロイアビリティのなかでも「資格や数値などでは計れない見えないもの」に該当するものです。特に精神面や仕事に対するスタンスに関するものといえます。
個人の精神的特徴は同僚たちの士気にも大なり小なりの影響を与えます。組織のリーダーになるほど「背中で語る」というかたちで影響力が大きくなり、若手教育などで重宝されることもあります。
向上心
目標達成意欲や意志の強さです。
自分の市場価値を客観的に把握し、定量的・定性的な目標をきちんと立てることができるという自己管理能力という側面もあります。そのようなスタンスを確立することで、前述したような「背中で見せる」といったように周囲に良い刺激を与えることができます。
リーダーシップ
組織を引っ張る力です。上記の能力を総合したものであり、また決断力と責任感の強さも求められます。
プロジェクトの成功のため、メンバーの業務や精神的な面にも細かく気配りができることも重要です。
エンプロイアビリティを通じて「自分と仕事の距離」を知ろう!
エンプロイアビリティの詳しい能力を知ることで「自分の強みや弱みは何か」、また「何を伸ばしていくべきか」が明確になります。また自己分析にも繋がりますので、今後の成長のための大きなヒントになるでしょう。
前述のように、エンプロイアビリティは大きく分けて3つに分けられるので、どれに強く、どれに弱いのかを客観的に把握することが大切です。特に弱点を日常的に意識することでバランスのとれた人材を目指すことができます。